ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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元記者。出版社での経験を活かし、音楽ブログ「ミュージック バンク」の運営をスタート。音楽やゲームなど、自分の“好き”と向き合った記事を執筆している。他媒体での実績は以下。

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【第12回アイドル楽曲大賞2023】この曲がアツかった!マイベストアイドルソング

今年も開催された、全国のアイドル好きが密かに楽しみにしている“冬の風物詩”アイドル楽曲大賞

1年間にリリースされたさまざまな女性アイドルの曲の中から、メジャーアイドル楽曲部門、インディーズ/地方アイドル楽曲部門、アルバム部門、推し箱部門の4つの部門にそれぞれ自分が好きな曲やアーティストを投票して順位が決まるという同企画。

順位付けをあまり好まない筆者でも、これまで出逢ったことのなかった曲やその魅力を知る良いきっかけとなっているため、関心度が非常に高いのである。

そんな筆者は今年も参加。各部門にピックアップした作品、それからそれぞれの感想を綴ってみたので、愉しんでいってもらえたらうれしい。

独断と偏見で選んだ、ちゃんさき的ベストセレクション。それでは、行ってみよう。

メジャーアイドル楽曲部門

乃木坂46「Never say never」

あのスポーツがテーマ!世界に響け、最高のエール

Never say never

Never say never

今年はスポーツの話題が絶えない1年だったと言っても過言ではない。全日本卓球選手権大会では早田ひな選手が女子史上4人目となる三冠を達成したり、世界陸上女子やり投げでは北口榛花選手が金メダルを獲得したりと、各メディアでそれらのニュースは引っ張りだこ。ほか、世界水泳選手権ラグビーワールドカップなども開催され、各地で賑わいを見せていたことはまだ記憶に新しい。そんな中、とりわけ筆者が熱くなった大会が、ワールド・ベースボール・クラシックである。その頃は定期的に新聞を購読していたのだが、スポーツ面は卓球以外サラッと読み流していた私がWBCをきっかけに一変。野球にも少しだが関心を持てるようになり、自分の興味の幅を広げられたきっかけを与えてくれたのだった。乃木坂46の「Never say never」を聴いていると、オオタニサンのバントや、覚醒した村神様の逆転サヨナラ勝ちなど、WBCの名場面がフラッシュバックされるのである。侍ジャパンの仲間を信じるチカラをテーマにしているようなこの曲を、ぜひあなたにも聴いてもらいたい。妙な変化球ではなく、直球ど真ん中どストレートで刺さる最高の応援歌だ。

私立恵比寿中学「kyo-do?」

ウィットに富んだ言葉遊びが炸裂した、愉快な言葉のキャッチボール

新型コロナウイルスもインフルエンザ等と同じ5類へと移行した今、リモートワークを取り入れていた企業も原則出社となったり、久しぶりに地元に帰省したりと、公私ともに人とやりとりする機会が増えた人が多いのではないだろうか。私立恵比寿中学は「kyo-do?」で「今日どうする?」などと話す私たちの日常会話を切り取ったような、コミュニケーションをテーマにしたストーリーを展開している。曲中には「また手も繋げない現代を一緒に生きていく」とコロナ禍での日々を“共闘”してきた表現も見られるが、直接は繋げなかった手も、言葉がしっかり繋げてくれるのである。「君は今日どうする?」『こっちは予定あいてるよ』などのテンポのよい会話が広がっていく様子からはそうしたイメージが浮かんだのだ。またこの曲は、対面、電話、LINEやTwitter(X)等のツールを問わず、人とやりとりすることで“強度”に繋がれる楽しさや喜びをユーモアのある言葉遊びとともに描いている曲のように感じ、気に入っている。活気づく街中で、今日もどこかの誰かが「今日どうする?」と話す声が聞こえてきそうだ。

ukka「コズミック・フロート」

一聴すれば弾け出す青春!“絶品フロート”を飲んでひと休み♡

EDM調のサウンドも取り入れた、洒落たセンスがキラリと光るukkaの「コズミック・フロート」。宇宙に浮かんでいるかのような浮遊感の漂うゆったりとしたサウンドに、氷が“カラン”と音を立てながらコップの底に落ちていくような効果音も合わさることで、英語で浮くや浮かぶを意味する“フロート(float)”と、メロンフロートやオレンジフロートなどのあのドリンクを彷彿とさせる“フロート(ice cream float)”を混ぜ合わせたような独自の世界観が浮かんだ。脳内に展開されたのは、夢心地気分でドリンクの上に浮かんでいるかのようなイメージである。そしてサビでは、ポップなエレクトロダンスチューンが鳴り響くのだが、まるで口の中でパチパチと弾ける炭酸飲料のあの楽しさを表現しているかのようだ。そんな青春の味わいがするこの“フロート”を、あなたもひとくち飲んでみては?

Devil ANTHEM.「モンブラン TO GO」

リピ確定♡ 思わず持ち帰りたい“モンブラン”、ここにあり!

Devil ANTHEM.の「モンブラン TO GO」は、カントリー調のEDMが特徴的な“らしさ”が炸裂したダンスチューンだ。歌詞では、栗を使ったケーキの“モンブラン”、それからヨーロッパのアルプス山脈にそびえる最高峰“モンブラン”のWモンブランからイメージを膨らませ、ドッキングさせたような世界観を描写。そんなユーモアあり、奥深さありの、まるで人生を感じさせる魅惑的な世界を巧みなワードセンスを用いて表現しているところに心をくすぐられるものがあった。例えば“世知辛いしょっぱい日々”を生きる主人公が、“甘さ”を求めて“荒れ果てた荒野の先へ”とひたすら前進していく姿には、どこか上手く行っていないもどかしさを抱えながらも叶えたい目標に向かって努力している私たちに勇気を与えてくれるだろう。また曲中に登場する、ハーモニカは吹けないものの“口笛だけは誰にも負けない”特技を持つカウボーイは、彼の“らしさ”だけでなく私たち一人ひとりの長所や個性を全肯定し、引き立ててくれるのである。いま生きづらさを抱えている人たちに“ふとした少しのキッカケ”を与えつつ、見える景色を変えてくれるような、デビアンの“モンブラン”。あなたも味わってみてはいかがだろうか。きっとその味は格別だ。

PassCode「GROUNDSWELL」

うねり狂う社会の海に堂々と「NO」を突きつける、“頼れる姉御肌”

疾走感にあふれたアグレッシブなポストハードコアを基調としながらも、シャウトやスクリームをたんまり取り入れたサウンドで聴くものを虜にしているPassCode。そんな彼女たちの「GROUNDSWELL」は、海割りで知られるモーセのようなたくましさを感じたのだった。試されているような思い通りに行かない日々について嘆きながらも、うねり狂う社会の海を真っ二つに切り拓き、道を創造してくれるような勇ましさがひしひしと伝わってきたのである。そしてそれは、思い出などの過去に捉われているのではなく、常に暴れていくような瞬発力をもって時代に抗えることを説いてくれているようだ。そうして前へと突き進むことのできる勇気を与えてくれるPassCodeは、私にとっては頼れる姉御肌的存在である。

インディーズ/地方アイドル楽曲部門

ばってん少女隊「あんたがたどこさ~甘口しょうゆ仕立て~」

今回も九州を魅力的にPR!あの童歌が恋愛ソングに

手鞠歌「あんたがたどこさ」に恋愛要素を絡め、甘じょっぱいストーリーを展開している、ばってん少女隊の「あんたがたどこさ~甘口しょうゆ仕立て」。サウンドはポップなものへと練り上げられ、韻を踏んだ言葉遊びにあふれたクセになる歌詞との相性は抜群だ。例えば最初は「あんたがたどこさ」『肥後さ』「肥後どこさ」というフレーズや「あ・あ・逢えてラッキー」『こ・こ・恋してハッピー』といった歌詞がそれぞれのセリフとして歌われているのだが、最後のほうではこれらのフレーズがぴったりと重なり合い、ひとつになっているところが気に入っている。まるでお互いの気持ちがわからず、探り探りの状態だったところから両想いになったことを示唆しているかのようだ。はじめは“人たらし”に見えていたのかもしれないが、“醬油をかけてみる(醬油一垂らしする)”ことで見える世界は変わってくるのかもしれない。おかわりが止まらない恋愛ポップスである。

MIGMA SHELTER「A land switched by a witch」

“ミシェルの魔法使い”が“あの名作”に掛けるマジック

A land switched by a witch

A land switched by a witch

  • MIGMA SHELTER
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

あの不朽の児童文学作品『オズの魔法使い』をテーマに、独自の解釈をもってオリジナルの世界観を楽曲で展開させているMIGMA SHELTER。全3部作で構成される中、第2部シングル『OZ two』の「A land switched by a witch」で描かれているのは、エメラルドの都を目指す旅の途中でドロシーが最初に出逢う仲間のうちのひとり、“かかし”についてだ。ミシェルはそんなかかしの視点に立ち、ストーリーを展開。脳みそがないことを嘆くかかしのどこか仄暗い感情を本作でも全体的に散りばめつつ、かかしの持つ勇敢さを“ボス戦”を彷彿とさせるサウンドと後半の歌詞で描写しているように感じた。例えばそれは“野烏”というワードを冒頭部分で登場させ、最後は野烏が鳴きながら飛び立っていくようなサウンドを入れるというサンドウィッチ構文になっているところからも感じることができるだろう。野烏にも相手にされず、ただ見ていただけだったものの、最後はしっかり“かかし(Scarecrow)”として、“野烏(crow)”をも“脅かす(scare)”存在へと成長しているのである。また、何度か登場する「透ける黒」といった歌詞が“Scarecrow(かかし)”の掛け言葉になっているという、抜群の遊び心を利かせている点もおもしろい。第3部シングル『OZ three』ではどのような展開が描かれるのか、今から楽しみだ。

INUWASI「Strange Core」

隠していた“爪”をむき出しに――“鷹の目”で見つめる、そのまなざしを見た

Strange Core

Strange Core

  • INUWASI
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

噛めない犬と飛べない鷹の融合生物“ハイブリッドラプター”をコンセプトとしているINUWASI。EP『Revive Your Faith』では、確かに“鷹の目”で上を見つめる彼女たちの姿が見えたのだ。今の彼女たちには「Hades」や「Lapse」で歌われているような暗さはない。噛めなくとも、飛べなくとも、今の“ハイブリッドラプター”は靄をも切り裂く熱いまなざしを向けているように見受けられたのである。「Strange Core」ではそうしたINUWASIの変化した核の部分が感じられたとともに、まっすぐと高みを目指しながらどんな過程をも受け入れ、信念と覚悟をもって突き進んでいくような姿勢が描かれている点が気に入っている。

zanka「アスター

今春開花、真っ赤に染まるその花の名は……

2023年4月に生まれたzanka。記念すべきファーストシングルの表題曲は「アスター」だった。ダンスチューンでありながら、花言葉は“変化”を意味する赤色のアスターが盛大に咲き誇っているようなロックスピリットを感じる同曲は、私の心を焼き尽くすまでにそう時間は掛からなかった。“夢の景色”を夢のままで終わらせずに掴み続けると叫んでいるかのような彼女たちの歌声には、力強い意志を感じる。これまでの自分や世界をぶん殴って“朱の花”を開かせたり、囚われたまま終わりを迎えてしまうことに「ふザけんな」「全部喰らって踊る」と噛みついたりするzankaの“反骨精神”からも、びしびしと伝わってくるロック魂。いろいろとあった今春、私は静かに燃ゆるその灯火に温められた人のひとりである。

TELLMIT「Days」

“ありのまま”に描いた“僕たちの日々”

「少しだけ目が覚めた朝」というフレーズから始まる、TELLMITの「Days」。夢を見ていた“僕たち”が、苦悩しつつも、理想を現実に近づけるために行動していくストーリーが描かれている同曲。夢に向かって追いかける人を元気に励ましてくれるような楽曲も好みではあるのだが、目の前の現実と向き合いながら“なりたい自分”になるために葛藤しているようなTELLMITの「Days」をはじめとする楽曲に最近の私はなんだかよく惹かれるのである。また、歌詞でそうした複雑な想いを時折描きつつも、音圧強めなサウンドはまるで心の奥底から鳴り止まない希望や願望を表しているようで気に入っている。

アルバム部門

INUWASI『Tranxend』

覚醒した“音”と“魂”で切り拓く未来――“新鋭的ダークホース”のごとく、風を切る

INUWASIの音楽の方向性はいつからか大きく変わったように感じている。やや暗めのエレクトロやポップスにバンドサウンドが入り混じった楽曲を中心に歌っていたイメージがあったのだが、久しぶりにじっくり聴くINUWASIはそんな姿を微塵も感じさせない。それどころか明るくなっており、音楽の方向性も劇的に変化を遂げていた。そこで改めて彼女たちの“きっかけ”を振り返ってみると、2022年にリリースされたEP『天秤』あたりから楽曲に笑顔が咲き始めただけでなく、多彩なサウンドに手を伸ばし始めたように感じている。そして今ではポストハードコアやエレクトロをはじめとするサウンドに、シンセサイザーを効かせたトランスやサイケデリックの要素も交え、時にはオートチューンボーカルも取り入れるスタイルへと華麗に転進。中には変調していく遊び心のあふれた新しい楽曲もふんだんに詰め込まれているのだ。そこから感じるのはINUWASIの“超越”した姿。まるで新章に突入したかのような彼女たちの生き生きとした在り様が伝わってくるアルバム『Tranxend』をぜひ耳に、心に焼き付けてもらいたい。

Devil ANTHEM.『ADVANCE』

止まらない躍進――夢に向かって“前進”し続ける姿は美しい

今年5月に晴れてビクターエンタテインメントよりメジャーデビューを果たした、Devil ANTHEM.。その後も彼女たちの勢いは止まらず、今年は“でび夏”と謳ったさまざまな企画を展開してきた。中でも、デビアンが毎年夏に主催している対バンイベント「でびぱっぱ」は恒例の福島三崎公園のほか、大阪城野外音楽堂、さらには日本最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」にも進出。そうして着実にファンを増やしてきたデビアンは、TOKYO DOME CITY HALLにてワンマンを、日比谷公園野外大音楽堂にて対バンイベントを、この冬予定している。破竹の勢いで大幅にパワーアップしてきたデビアンだが、彼女たちの“強さ”をとりわけ感じられたのが、今年1月にリリースされたアルバム『ADVANCE』である。人気曲「LOVE~極~」などの沸ける楽曲も交えながら、待ち遠しい未来に向けてひた走っていく様子が描写されている「ソノサキ (2023ver.)」、ひたむきに挑戦していく決意表れる表題曲「ADVANCE」、前へと駆け抜けていく様子が浮かぶ「ONE DAY」、夢の続きを見ていたいと願う「不確かな未来」などの“夢”について前向きに歌われた楽曲がたっぷりこのアルバムに閉じ込められているのだ。“日々、最高を更新する”をモットーに、実際にこれまでアップデートしてきた彼女たちだからこそ、“らしさ”が感じられる渾身の1枚のように思う。ビクターに所属する前からひしひしと伝わってきた彼女たちの“強み”はもちろん、今もなお健在だ。

Axelight『Hydrogen』

心を照らす、強くもやさしい“光”

日本語で“水素”を意味する『Hydrogen』をテーマに打ち出し、ここぞとばかりに極彩色なサウンドを轟かすAxelight。ファンク要素も取り入れたダンスミュージックやサマーポップアイドルチューンなどの楽曲も含めたエレクトロポップ要素強めの作品がずらりと並ぶ同アルバム。その音色は容赦なく、聴いたものをたちまち軽やかに宙に浮かしてしまう威力があるように感じる。まるで私たちが踊りながら飛び跳ねる様子を、そのまま“水素”としてなぞらえたようにすら思えてくるのだ。それでいて、歌詞も私たちを明るく照らしてくれる灯火となっているようなものが多いのである。音楽という名の方舟に乗せて、どこまでも運んでくれているような、そんな温かなエネルギーを与えてくれている気がした。

推し箱部門

Devil ANTHEM.

私がアイドルソングに興味を持ち始めた原点。

終わりに

最後に目次にてピックアップした作品一覧を記しておくので、この機会に気になった楽曲をチェックしてみてはいかがだろうか。

よかったら、あなたの感想やコメントなども聞かせてもらえたらうれしい。

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YUNGBLUDとBMTH・Oli「Happier」の“主人公”を“反面教師”とした――そこから考える“幸福への道標”

あなたは誰かを本気で好きになったことがあるだろうか。

あまりにも突然な問いに驚いてしまった人も少なからずいると思うが、本気で誰かを好きになった人になら、穏やかで温かい想いとは裏腹に芽生える恐怖心に悩まされてしまう気持ちも分かるのではないだろうか。

それは例えば、過去のトラウマが原因でまた傷つきたくないという不安だったり、本当の自分をさらけ出して避けられてしまうのが怖いという感情だったりと、人によってその要因もさまざまだ。

この記事を書いている筆者もまた、いろいろとあってなかなか自分から行動を起こすことに怖気づいてしまっているひとりである。もうすぐ三十路を迎えることもあって、だいぶ自分の言動が落ち着いた気もしているが、決してそうではないことは私の心が一番理解している。しかしながら、この想いは至って本気なのだ。そしてその感情を人は“恋”と呼ぶのだろう。

そんな自分が今回この記事で取り上げるのは、YUNGBLUDとBring Me The Horizonのフロントマン・Oliver Sykes(以下、Oli)がタッグを組んだ「Happier」という楽曲だ。恋に臆病になってしまっている人にこそ、この曲を聴いてみてほしい。

この曲には2人の主人公が登場する。1番ではYUNGBLUDが、2番ではOliがそれぞれ交互に主人公を演じているのだが、お互いに必要な存在としながらも、幸せの表裏一体となっている恐怖心に勝てずに絶望に打ちひしがれている姿が描写されている。

そんな2人の背景には、前述したような過去の恋愛で負った痛みや傷があるのだろうか。たくさん葛藤した末に出した結論だったということは伝わってくるのだが、ひとつ不可解な点がある。なぜその決断を下したゆえに、お互いがより深いダメージを心に負っているのだろうか。片方ならまだ分かるが、なぜ2人ともが悲しみに暮れているのだろうか。

そこにはコミュニケーション不足ということも考えられるが、私はそれだけではないと思っている。2人には“覚悟”が足りなかったのではないだろうか。

愛する覚悟と愛される覚悟。恋愛にはどちらも無くてはならない必要な心構えだと思っているのだが、曲中で「scared to be happier(幸せになるのが怖い)」と何度も言っていることからは、いま一歩、そうした覚悟が足りていないことが分かる。

また「I just need a rest(ちょっと休憩が必要)」と言っているところからは、自尊心がだいぶ低くなってしまっていることが分かるのではないだろうか。トラウマのほか、過去の失敗にこだわってしまうあまり低下してしまったことも考えられるが、まずは自尊心を回復させることが先決だろう。そうすることできっと、恋愛も仕事も人生も、上手くいくようになるのではないだろうか。

そんなこんなでYUNGBLUDとOliの共作「Happier」について自由に書いてきたが、これはある意味、2人からの“注意喚起”のようなものだと思っている。曲中で描かれている主人公のようにはなってくれるな、という強い想いを感じたのだ。

恋愛にはいくらかの“負の感情”は付きものである。n年前までの私は自己肯定感の低い男性に惹かれてしまい、自尊心が低下してしまった時期もあるのだが、私がいま恋をしている相手はそんなことを微塵も感じさせない。それどころか、なんだか不思議と安心できるのである。

時折考えすぎてしまうことが原因で心配ごとに襲われてしまう日もあるものの、心の持ちようによって人生を良くも悪くもできるものだと思っている。だからこそ、私が相手に対して抱く温かい気持ちを胸に、多少の不安も乗り越えていきたい。

“幸福への道標”――それはきっと“覚悟”を持ちつつ、前向きなマインドを忘れない人のもとに示されやすいものなのではないだろうか。少なくとも私は、そう信じてやまない。

Happier

Happier

  • Locomotion Recordings/ Geffen Records
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“甘辛MIX”で刺激的♡ 1つのプレートで2種の味わいが堪能できる【デビアン秋の豪華メニュー】がたまらない

今年5月にビクターエンタテインメントよりシングル『ar』をリリースし、メジャーデビューを果たしたDevil ANTHEM.(通称:デビアン)。

彼女たちの“加速していく(accelerate)”といった意志が存分に表れた同シングルに続き、既に先行配信がスタートしているメジャーセカンドシングル『GOD BLESS YOU!! / モンブラン TO GO』では、異なる味わいが堪能できる2曲が収録されているように感じた。

言わば、1つのプレートで2種類の味を楽しめる“デビアン秋の豪華メニュー”である。「GOD BLESS YOU!!」と「モンブラン TO GO」のそれぞれの“美味しさ”とは何なのか。この記事では、筆者が感じたその魅力を独断と偏見で紹介していきたい。

弾ける楽しさ♡ 血湧き肉躍る【デビアン渾身の一品】

「GOD BLESS YOU!!」は曲の大半がラップ部分で占めている楽曲。これまでもロックナンバーでありながらブレイクの部分でラップを取り入れている「ソラシド」や、チルでクールなラップが特徴的な「Bluesy Bless」でラップを披露してきたものの、今作は畳み掛けるようなラップ口調であるところが新しさを感じさせるポイントだろう。

また、今作の楽曲提供、およびサウンド・プロデュースを手掛けたのは、上田剛士(AA=)氏。全体的にアグレッシブに攻めたハードコアサウンドが印象的な1曲に仕上がっており、おそらく過去イチとも言える強靭なサウンドに心を鷲掴みにされる。そしてそこに“これまでの歩み”を感じさせる音色がところどころでキラリと光るのがたまらないのだ。

冒頭で流れる協会の鐘のような音色や、合間で溶け込むパイプオルガンのサウンドからは、パイプオルガンの音色がダイナミックに響き渡る「Archangel」や、「Amazing Grace」のメロディを大胆にアレンジした“デビアン流讃美歌”「覚醒WOW WOW」を彷彿とさせるのである。

“これまでの歩み”も表現しつつ、“日々、最高を更新していく”デビアンの姿勢を感じさせる「GOD BLESS YOU!!」は、間違いなく“大型作品”と言っても過言ではないだろう。

生成AIを映像とマッシュアップさせた“最先端MV”も見どころだ。

リピ確定♡ 思わず持ち帰りたい【デビアン特製モンブラン】の“美味しさ”に迫る

一方で「モンブラン TO GO」は、カントリー調のEDMが特徴的な“デビアンらしさ”が炸裂したダンスチューン。「Club City」や「Ai LIFE」、さらには「ミッドナイトドライブ」でも作曲・編曲に携わったRYO-P氏、作詞を手掛けたハシバタカナリ氏によるコラボが今作で再び実現しており、聴くものの心を躍らせる術は健在である。

その曲名から「そわそわチョコレート」に続くポップでキュートな楽曲を想像していたのだが、やはりデビアンは“沸ける正統派アイドル”と謳っているだけあり、気分を高揚させるEDMサウンドがよくお似合いのように思う。RYO-P氏はそうしたファンのニーズを把握し、今作でも“素敵な魔法”を掛けてくれているように感じるのだ。

ハシバタカナリ氏は、栗を使ったケーキの“モンブラン”、それからヨーロッパのアルプス山脈にそびえる最高峰“モンブラン”の“ふたつのモンブラン”からイメージを膨らませ、ドッキングさせたような歌詞を描写。ユーモアあり、奥深さありの、まるで人生を感じさせる魅惑的な世界を、巧みなワードセンスを用いて表現しているところに心をくすぐられるものがあった。

例えば“世知辛いしょっぱい日々”を生きている主人公が、“甘さ”を求めて“荒れ果てた荒野の先へ”とひたすら前進していく姿には、どこか上手く行っていないもどかしさを抱えながらも叶えたい目標に向かって努力しているリスナーに勇気を与えてくれるだろう。

また曲中には、ハーモニカは吹けないものの“口笛だけは誰にも負けない”特技を持つカウボーイも登場する。続く「人はそれぞれ味があって/混ざりあって美味しくなるの」の歌詞で、カウボーイの“らしさ”だけでなく、リスナー一人ひとりの長所や個性を全肯定し、引き立ててくれるのである。

曲中に“荒野”や“サボテン”、“カウボーイ”や“砂漠”、“オアシス”など、“カントリー”調のEDMサウンドとマッチしたワードを散りばめているところにも心惹かれるものがあったが、この曲はいま生きづらさを抱えている人たちに「ふとした少しのキッカケで/見える景色が変わった」と思ってもらえるような“キッカケ”を与えつつ、新しい息吹を吹き込んでくれるような力強さがあるように感じた。

何度でも“持ち帰り(TO GO)”たくなる“モンブラン”である。

あなたも“デビアン秋の豪華メニュー”を堪能してみては?

その“美味しさ”は舌鼓を打つほどだった、“デビアン秋の豪華メニュー(10月10日に発売されるメジャーセカンドシングル『GOD BLESS YOU!! / モンブラン TO GO』)”。

サブスクで一足先にいただいたが、新しさがありつつもこれまで歩んできた道のりを丁寧に描いているような「GOD BLESS YOU!!」と、“らしさ”が炸裂したサウンドと歌詞で描く「モンブラン TO GO」はそれぞれ異なる“味”でありながら、どちらも紛れもなくデビアンだと言える“テイスト”だった。

リピーターの方はもちろん、これからはじめていただくという方も、よかったらあなたなりに感じたそれぞれの“美味しさ”を教えてもらえたらうれしい。

【ジェニーハイ】まさかの典子さんが欠席した“クラシックコンサート”の幸先

ファン待望のアルバム3作目『ジェニークラシック』をリリースしたばかりのジェニーハイ。

コアなファンが待ち望んでいたのは、何より“典子さん”の行方だろう。

愛すべき典子さんの魅力に迫る

パートナーを夢中にさせるべくダイエットに励むも、大好きなタピオカの誘惑に負ける典子さん。タピオカを食べることを幸せとする彼女は、自分のためにダイエットを諦めることを選択するという、どこか憎めない愛らしさがあるのだ。

一見、継続力が心配されてしまうかもしれないが、その不安はまったくもって要らなかった。というのも、彼女には3年掛けてバイトリーダーまで上り詰めるという努力家な一面を持っているからだ。

そうして、ファーストアルバム『ジェニーハイストーリー』収録曲の「ダイエッター典子」や、セカンドアルバム『ジェニースター』に収録されている「バイトリーダー典子」で語られてきた典子さんだが、今作『ジェニークラシック』ではいつまで経っても彼女の姿が見当たらないのである。

実は密かにスペシャルゲストとして登場するのだろうかという淡い期待もあったが、何度録音された“クラシックコンサート”の音源を聴こうとも、“典子”という彼女の名前すら登場しないのであった。

まるで参加すると期待させておきながら、結局最後まで来ない仲の良い友だちからの不意打ちを食らったような感覚だ。いつかのJ-WAVE主催のラジオ番組『THE KINGS PLACE』でジェニーハイが担当していた際、“ファッショニスタ典子”といった案も上がっていたが、気が変わってしまったのだろうか。

典子さんの行方が心配されるところだが、“クラシックコンサート”は実に素晴らしかった。

良曲揃いの『ジェニークラシック』

yamaとのコラボ曲「モンスター (feat. yama)」で開幕し、ガッキーこと新垣隆さん奏でるピアノの音色が無双する「クラシックハイ」へとなだれ込む。

続く「超最悪」で中嶋イッキュウさんがパンクな歌声を響かせると、エレクトロミュージックを取り入れるという新たな試みで“GJ”に魅せる「GDGD」にバトンタッチ。シャンパンやビールを開け、最幸にグダグダしていたかと思いきや、サントリーのジムビームとタッグを組んだ「PEAKY」へと紡いでいく。ジェニーハイが井桁弘恵さんと“ピキピキダンス”を踊っていたのもまだ記憶に新しい。

てっきりそんな陽気な気分になっているかと思ったが、酔いが回るにつれ、マンネリ化してしまった彼氏との関係が脳裏にチラつくのである。お酒が進むのは、そうした「ケンタイキー」になってしまったことも理由のひとつだろう。

そして、お酒のシメはラーメンという人も少なくないかもしれないが、どうやら気分はスイーツだったらしい。映画『ハケンアニメ!』主題歌で、吉岡里帆さんが演じていた斎藤瞳監督の好きな“エクレア”をモチーフにした「エクレール」を頬張ってゆくのだ。

その後は独自のユーモアが炸裂した「TAXI」、“リッター10 現在走行中”や“バイパスを避けるプレイ”などの車関連のワードも見られる爽やかなサマーソング「ジェニーガールクラッシュ」、しっとりとしたサウンドの中にイッキュウさんの美しい歌声が響く「声雫」、女性運転手と愉快な仲間たちの日常を描いたハートフルコメディドラマ『トラックガール』の主題歌「トラップガール」といった乗りものを中心とした楽曲が並び、最後は「贅沢」でしっぽりと締めくくられているのだ。

典子さん不在という状況はどこか寂しく感じてしまったものの、“クラシック”というアルバム名を掲げている通り、今作のアルバムもまた“傑作(※classic)”である。

お笑い要素を控えめに、“音楽”にまっすぐ向き合い、幅を利かせた作品に仕上げてきたジェニーハイ。典子さんが居ない背景には、おもしろさで楽しむというよりも、“音楽”で自由に遊ぶことを選択したからなのだろうか。思えば、まもなく始まるツアー『クラシックファイブ』でも、最初の2公演のみゲストなし、3公演はお笑いゲストあり、5公演は川谷絵音さん率いるアーティストがゲストに控えているという状況である。

『クラシックファイブ』ではどんなステージを魅せてくれるのか。公演ごとにセットリストを変えてくることはあるのか。“一流な5人(※クラシックファイブ)”によるパフォーマンスが、今からとても楽しみである。