【天晴れ!原宿「エンドレスサマー」】どこまでも広がる、天晴れの“夏”
最近、やたらと暑い日が続いている。ギラギラと照りつける太陽、エアコンが手放せない日々――。夏はもう、すぐそこの曲がり角までやってきている感覚だ。
何気ない日常を過ごしているとつい忘れてしまいがちなのだが、今年はいつもとはひと味違う夏がやってくる。新型コロナウイルスの影響で、毎年夏に開催されている多くのフェスが中止となった。その他、花火大会や海水浴場の開設も、相次いで中止が発表される事態となっている。
こんなときこそ、アイドルの楽曲を聴いてほしい。世の中を明るく照らしてくれるような不思議な力が、アイドルにはあると思うのだ。
そこで今回は、天晴れ!原宿の「エンドレスサマー」について自由に書いていきたいと思う。この曲をきっかけに、“忘れていた夏”を取り戻すのもいかがだろうか。
“Yunomi楽曲”の魅力
夏にぴったりな、天晴れ!原宿の「エンドレスサマー」。ライブでは、メンバーの振り付けに合わせてタオルを振る竹の子(※ファンの呼称)が続出し、毎回凄まじい盛り上がりを見せている。そんな同曲の魅力は、メンバーが魅せるパフォーマンスだけでなく、Yunomiさんが作詞・作曲を手掛けていることにもあると思う。
トロピカルなEDMサウンドに仕立てられた楽曲ながら、部分部分に和の要素も感じられる「エンドレスサマー」は、和テイストのEDMサウンドを生み出すのが抜群に上手いように感じているYunomiさんの特長を存分に発揮している曲のように思うのだ。
序盤で聴こえる風鈴のような音は、どことなく日本の夏を感じさせるだろう。そこから一気にポップなサマーチューンへと持ち込んでいくものの、“洋”の中に溶け込む“和”の音色にも注目してほしい。ところどころに祭囃子を彷彿とさせる篠笛のような音色や、蝉の鳴き声のようなサウンドなどの和の要素が散りばめられているのだ。
隅々までこだわり抜かれた音や、“和”と“洋”が織りなす絶妙なハーモニーは、楽曲の質にこだわる“楽曲派”アイドルファンも思わず唸るに違いない。そして、これこそがYunomiさんが持つ武器のうちのひとつだと思っている。
「エンドレスサマー」個人的解釈
“Yunomi楽曲”の魅力は、彼が作るメロディだけにとどまらない。彼が手掛ける歌詞にもあると思うのだ。例えば「エンドレスサマー」は「39度の熱に浮かされた都会は風邪」といったフレーズから始まるのだが、都会を擬人化させるという発想が斬新だと思っている。
そんな「エンドレスサマー」では、“僕”が夏に奔走する姿が描かれている。この“僕”の描かれ方にも惹かれるものがあったのだ。そこで、筆者なりの解釈も交えながら、同曲を掘り下げていきたい。
39度の熱に浮かされた都会は風邪
缶ジュースを片手に僕はまだ夢の中
ビルの隙間に懐かしい蜃気楼
寂しそうに手招きして
未だ繰り返す夏は知っているよ
遠くなった君の声――
この日は真夏日なのだろう。そんな中、過去の想い出を振り返っている“僕”。「僕はまだ夢の中」「懐かしい蜃気楼」「寂しそうに手招きして 未だ繰り返す夏は知っているよ」といった歌詞からは、忘れられない想い出に浸っている“僕”の姿が浮かんだ。
その記憶に浸っていたいと思うのは、そのときの自分が輝いていたからなのではないだろうか。過去の“僕”は、もしかしたらなりたい自分や叶えたい夢など、何か夢中になれることに向かって奔走していたのかもしれない。いずれにせよ、きっと何かに対して本気で熱くなっていたからこそ、過去の自分が輝いて見えると思うのだ。
しかし、そんな“君の声”が遠くなってしまっている。“君”は、ここでは過去の“僕”自身のことを指すと思うのだが、悲しいかな、“僕”はそのときの自分を少しずつ忘れていってしまっているのではないだろうか。どこか諦めてしまっているところもあるのかもしれない。
いつか大きくなってこの色を忘れても
タイムマシンの鍵はいつも君のポッケの中
無限大 青い空 見上げては手が届いた
炎天下の子は忘れていた僕らだった
そんな今の“僕”に向かって、自分の本心が語りかけているように感じた。“タイムマシンの鍵はいつも君のポッケの中”にある。過去の“僕”が大切にしていた、情熱やハートを思い出してほしい。そんな想いが込められているように思った。
そして、その願いはきっと届いたのだろう。ようやく“僕”は、忘れていた自分自身の心に気づいたように思う。
ビルの隙間に君を探しているよ
いつの間にか見失った
未だ繰り返す夏は知っているよ
遠くなった君の歌
伸ばした手のひら まだ君に届くなら
永遠と思ってた夏の日に飛び込むんだ
過去の自分が持っていた情熱やハートを取り戻した今、再び“いつの間にか見失った”忘れられないものを探しに行く様子が浮かんだ。それが何であれ、輝かしかった頃の自分の想い出が未だに繰り返されるからには、“僕”にとってかなり大切なもののように感じる。
いつか大きくなってこの色を忘れても
タイムマシンの鍵はいつも君のポッケの中
無限大 青い空
炎天下の子は忘れていた僕らだった
伸ばした手のひら まだ君に届くなら
永遠と思ってた夏の日に飛び込むんだ
そして、大事なことをもう一度繰り返して、このように終わるのだ。
それにしても、歌詞中で描かれている“夏”は、天晴れにとって何を指すのだろうか。
筆者にとってそれは、天晴れがアイドル界のトップを狙いに行きたいという想いを指しているのではないかと思っている。また、独自のKAWAIIカルチャーを創造し、世界に発信していくというコンセプトをもとに結成された天晴れの“ムーブメント”を、より世の中に広げていきたいという想いもあるのではないだろうか。
デビュー4周年記念日となる7月5日には、第二章の幕開けとなる生配信ライブが行われる天晴れ。充電期間を経て、新体制になってから初お披露目となるこの日のライブで、より一層パワーアップした天晴れの姿を見てみたい。
CY8ERの「ごーしゅー!」から感じた、苺りなはむの想い
「ごーしゅー!」と初めて出逢った日
ヒーリングミュージックとEDMが掛け合わさったようなサウンドが轟く――。
今年の2月11日、イベント・東京ぴこぴこフェスに出演していたCY8ER。間のMCを挟んですぐ披露してくれたのは、「ごーしゅー!」だった。
イントロから凄まじく湧き上がるフロア。そして、満面の笑みを浮かべるサバイ族(※ファンの呼称)の期待に応えるかのように、一人ひとりのメンバーはそれぞれの個性が際立つパフォーマンスで魅了していく。
歌声もダンスもキュートに魅せる苺りなはむ(以下、りなはむ)。そんな彼女だが、その眼差しには熱い魂を感じずにはいられない。小犬丸ぽちは、元気いっぱいに楽しさを全力で表現。ふわふわした雰囲気が魅力のましろは、とびっきりのスマイルを見せたかと思いきや、今度は真剣な顔つきで歌うなど、ギャップで観客の心を掴んでいく。
さらに、切れ味の良いダンスで観るものをクールに魅了する病夢やみい。そして、美しく伸びやかな歌声を持ち、一つひとつのポージングが抜群に決まっている藤城アンナの“世間を騒がすガチマジアイドル”5人による全力パフォーマンスには、どこか突き動かされるものがあった。
筆者は「マイライフ」や「コクハクワープ」、「サマー」などの楽曲を好んで聴いていたものの、恥ずかしながら「ごーしゅー!」は知らなかった。しかし、なぜだろう。この日初めて聴くはずの「ごーしゅー!」に、なぜだか心が揺さぶられた。同時に、不思議と懐かしさを覚えたことが未だに忘れられずにいる。
今回はそんな「ごーしゅー!」について、自由に語っていきたい。
終わり始まり
「ごーしゅー!」との出逢いからおよそ4ヶ月が経った5月31日、ついに同曲がデジタルリリースされた。
知らなかったのだが、この曲。どうやらCY8ERの前身ユニット・BPM15Qのときからの楽曲らしい。そして、5年前の今日がそのBPM15Qの結成日。さらには、本日。BPM15Qが当時よく使っていたライブハウス・渋谷Glad閉店当日のイベントに出演し、一夜限りの復活を遂げていた。
「ごーしゅー!」で描かれているのは、始まりを感じさせる歌詞だ。「GO shoot! 1!2!3!で行くぜ 準備OK?」「それじゃ行きますぜ もっと気張って アツく燃え上がってGO」「豪快 START DASH をキメて 叫びまくって 全部吹き飛ばせ」「せーのみんなで ガンギマってこーぜ」などと初っ端から飛ばしている。
BPM15Qの始まり。BPM15Qとして刻んだ新たな1ページ。そんな意味が5月31日という日にあるからこそ、始まりを感じさせる歌詞が印象的な「ごーしゅー!」をこの日にデジタル配信したかったのだと思うのだ。それほどまでにりなはむにとって5月31日という日は、きっと思い入れの深い1日なのだと思う。
苺りなはむの想い
また、今回のジャケット写真にも注目してほしい。ここにはりなはむの強い想いが込められているように感じた。
「ごーしゅー!」では、メンバーが縦一列に並ぶフォーメーションを作るところから曲がスタートする。このジャケ写はそんな様子を表現したように感じるのだが、腕の本数をよく見てほしいのだ。
腕は12本。現メンバーは5人のため、本来なら10本のはずだ。
しかし、CY8ERには6人だった時代がある。りなはむがBPM15Q時代のことも大切に想っていることを考えると、これは元メンバー・なぁたんコロ虫の腕の本数も含み、その頃のCY8ERのことも大切に想っていることを表現しているようにも感じるのではないだろうか。また、この2本ぶんはサバイ族の腕という考え方もできるだろう。
そして、太極が描かれていることにも注目してほしい。宇宙の根源や物事の始まりを意味するこの模様が描かれているからには、やはり何か特別な想いを感じさせるものがあるように思う。
CY8ERはきっと、これまでの歴史を受け入れ、大切に想っているからこそ、“最強”なのではないだろうか。彼女たちはこれからも良い意味で世間を騒がせていくに違いない。
【Devil ANTHEM.『Hang Out With Sound』】デビアンが奏でる“2020楽曲”の音色
新型コロナウイルスの影響で、世の中はいま転換期を迎えていると思っている。
これまでのやり方を見直している人もいれば、新たなものに挑戦する人も出てきた。そんな今の世の中を見ていると、やはり“無常”という言葉が刺さるのではないだろうか。
そして、そんな“無常”なもののひとつに音楽も挙げられるだろう。
例えば、ASIAN KUNG-FU GENERATION(通称:アジカン)の「Re:Re: (2016)」。2004年にリリースされた「Re:Re:」から12年後に再度レコーディングされた楽曲のうちのひとつだ。12年前のものよりイントロが伸び、何度も繰り返されるギターリフはクセになるだろう。このように、中には数年の時を経て、アップデートされる楽曲もある。
また、中には岡崎体育の「Explain」のように、目標を達成して封印される楽曲もある。かねてから同曲で「いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ絶対」と歌っていた岡崎体育は、その夢を叶えた2019年6月9日、その日の公演で同曲を封印すると語っていた。
おんなじように、Devil ANTHEM.(通称:デビアン)の楽曲もまた“無常”だと感じた。ミニアルバム『Hang Out With Sound』の配信盤、A盤、B盤、それぞれのボーナストラックには現在のメンバーにより再度レコーディングされた「Fever(2020 ver.)」、「EMOTIONAL(2020 ver.)」、「あなたにANTHEM(2020 ver.)」の3曲が収録されている。
今回は、そんな“今”のデビアンに迫りながら、3曲の魅力をそれぞれ紹介していきたい。
「Fever(2020 ver.)」
2017年にもリリースされている人気曲「Fever」の“2020楽曲”は、“音”に注目してほしい。
3年前にリリースされたものとおんなじエレクトロポップなハードコア楽曲であることに変わりはないが、音はシャープになり、メリハリのあるドンシャリサウンドとなっているように感じる。また、以前のものより広がりのあるサウンドとなっているのがハッキリと分かるだろう。
今回のアルバムでは、『Hang Out With Sound』というタイトルを打ち出しているように、この曲を通じて“音と一緒に遊んでほしい”という想いが強く感じられた。毎回、最高、そして最響の音質を追求しているデビアンならではのこだわりが詰まった1曲と言っても過言ではないだろう。
「EMOTIONAL(2020 ver.)」
続く「EMOTIONAL」は、2017年と2019年にもリリースされている。この曲のポイントは、“不変的な変化”にあると思うのだ。
2017年のものと“2020楽曲”で比較してみても、歌声や音質に明確な変化が感じられないように思った。また、2017年は異なるものの、2018年に水野瞳(以下、あきらちゃん)が加入してから、デビアンは現体制で活動している。そんなデビアンだからこそ、その変化していない“核”となるものに注目してほしかったのではないだろうか。
例えば、それは“想い”の部分にあると思う。メンバーたちは以前、よく「日々、最高を更新する」といった言葉を口にしていた。これは、メンバーだけでなくスタッフにも共通している想いとのことだが、デビアンチームが一人ひとりおんなじ方向性を向いているからこそ、いま彼女たちが活動を通して放っている“力”には目が離せないものがあるのだろう。
「あなたにANTHEM(2020 ver.)」
2015年、2017年にもリリースされている「あなたにANTHEM」の“2020楽曲”は、歌詞と歌声に耳を傾けてほしい。
2017年のものでは、最初のほうでメンバーが口々に「あーもう朝だー」「ねーまだ眠いよねー」などと話す模様が収録されているが、“2020楽曲”ではそこの歌詞の部分が綺麗さっぱり消え去っている。そんな様子からは、現実を受け入れ、進んでいくような、一歩大人になったデビアンが感じられるだろう。
また、メンバーの成長っぷりは、声量にも表れている。2017年のものと比較してみると、確実にバックミュージックの音量が大きくなっているものの、メンバーの声量はそれに負けていない。
歌声も、これまでの可愛らしいものとは一変。ハキハキとした抑揚のある歌い方に変わっており、より気持ちが伝わってきやすい楽曲へと変貌を遂げていた。
感想
『Hang Out With Sound』は、デビアンの“2020年”の魅力を最大限に引き出したミニアルバムのように感じた。
ライブではメンバーのパフォーマンスや表情にフォーカスしがちだが、たまには音源だけをじっくり聴き入ることで、見えてくるものもあるように思う。
今回は再レコーディングされた楽曲のみをピックアップしたが、ぜひリード曲「絆という羽」を筆頭とするナンバーも聴いてみてほしい。
【RPG好きな君へ】“ゲーム愛”がほとばしっている、“ゲーマー魂”あふれる楽曲はコレだ
外出自粛期間中の今、おうち時間をどう過ごしているだろうか。
自宅ライブやオンライン飲み会を愉しんでいる人、お菓子作りに挑戦している人、ひたすら本や漫画を読んでいる人など、さまざまな過ごし方をしている人がいるだろう。
そして中には「僕おうちに篭もってゲーム」と、水曜日のカンパネラの「桃太郎」のように、ゲームに明け暮れている日々を送っている人もいると思う。ゲーム三昧の生活に少し飽きてきた人もいるかもしれない。この記事は、そんな君にうってつけだ。ゲームをこよなく愛している君にこそ読んでもらいたいのだ。
今回は音楽好きだけでなく、ゲーマーな君にも興味を持ってもらえそうな“ゲーマー魂”がひしひしと伝わってくる楽曲をピックアップしてみた。ゲームと言ってもさまざまなものがあると思うが、RPGが好きな君には特に関心を持ってもらえるのではないだろうか。
曲はボカロやバンドなど、バラエティに富んだ楽曲陣を揃えたつもりでいる。ジャンルがバラバラだからこそ、その中から気に入ってもらえる曲もあるのではないだろうかと思っている。
鏡音リン・鏡音レン「リモコン」
ゲームを遊ぶ上で、まずは基本操作を身につけておく必要がある。
この記事はゲーマーな君に向けて書いているものの、もしかしたらゲームをあまり遊んだことのない人も興味本位で読んでくれているかもしれないと思うのだ。そんな君にも理解してもらえるよう、最初に鏡音リン・レンの「リモコン」でウォームアップしていこう。
ゲーマーな君は操作方法を復習する感覚で、ゲーム初心者な君は気軽に学んでいく感覚でこの曲を聴いてみてほしい。
ゲームによって使うキーは多少変わるものの、この曲ではRPGを遊ぶにあたり必要な操作がだいたい描かれている。
例えば、曲中には「L R L R stop & dash & up & talk」という歌詞が登場する。おそらくゲーマーな君にはピンとくる表現だと思うが、左右(L R)に移動して、立ち止まった(stop)かと思いきや、駆け足で進み(dash)、梯子か何かを登り(up)、村人や仲間と話す(talk)ことは、RPGで遊ぶ上では欠かせないだろう。
村人からはストーリーを進めるためのヒントが与えられる他、キャラクターを成長させることのできるクエストも貰えるため、意外にも無くてはならない存在だと思っている。また、中にはパーティーを編成することで進行できるグループクエストも存在するため、仲間とまめにコミュニケーションを図ることも大切だ。
さらに、敵を倒す上で自分なりの“最強コマンド”を身につけることも求められるだろう。それは技を繰り出すことだけでない。敵からの攻撃をかわすことも重要なのだ。そして、それは「Up side down A B A B B A B A 左 右」というフレーズで描かれているように感じた。
ひとまず、これらの基本操作だけ押さえておいてほしい。その上で続く“本編”に進んでもらえたら、きっとより愉しんでもらえると思うのだ。ゲームを遊んでいる感覚で読んでみてほしい。
鏡音リン・鏡音レン「しんでしまうとはなさけない!」
RPGの愉しさ――それは何といっても、自分のキャラクターを育てていくことにあるのではないだろうか。
敵を倒して得た“経験値”を、時間を掛けて積み上げていく。そしてやっとレベルを上げることができると、キャラクターのHP(体力)やMP(魔力)、スキル(技)などのステータス(能力値)を自分好みに強化することができる。また、一定レベルに到達するたびに、身に付けられる装備アイテムも増えてくるだろう。
そこにRPGの醍醐味があるように思っているのだが、鏡音リン・レンの「しんでしまうとはなさけない!」でも、そんなゲームのおもしろさを描いている。
王様に命じられて、さらわれてしまった姫を救出しに行く“勇者”の姿が描かれている同曲。“勇者”とはいえ、まだ駆け出しの身であるため、弱いのだ。そんな“勇者”なのだが、1曲を通じて少しずつ成長していく様子が感じられるだろう。
曲の最初のほうで描かれているのは、まだゲームを始めたばかりの“勇者”の姿だ。王様から「さぁ、その宝箱の中身とこのなけなしの金で旅立って 仲間を探して化けもん倒して・・」「とにかく困ったら町の人々に話しかけようぜ?」と命じられるのだが、このフレーズからは、まだ“勇者”が右も左もよく分かっていない、駆け出しの身であることが分かるだろう。
さらには途中、パーティーが全滅してしまう。しかし、王様から「経験値 経験値 経験値 積んで もっと屈強な仲間探したまえ!」「次のレベルになるには あと1000ポイントのけいけんが さらにはもっと自己主張が必要じゃな くじけるな OK?」と励まされることで、“勇者”が魔法使いや僧侶などの仲間とともに奮起する様子も描かれている。
パーティーは少しずつ強くなってきているものの、最終的に“勇者”は「僕は勇者じゃありません。むしろ王が勇者だと思いまーす!」と逃げてしまう。ある意味、“勇者”だと思うのだが、難易度の高いステージをクリアできたときのうれしさと言ったらない。
この“勇者”が浸ることのできなかった深い達成感を、ぜひ君には味わってほしいと思う。そして、“まことの勇者”になってほしい。
BABYMETAL「↑↓←→BBAB」
“真のゲーマー”を聞かれたら、君はどのように答えるだろうか。ゲームが大好きな人、または1日中ゲームに熱中している人を思い浮かべる人がいるかもしれない。あるいは、高橋名人のようなプロゲーマーの名前を挙げる人もいるだろう。
筆者は、何度負けようとも、めげずに挑戦し続けるゲーマーこそが“真のゲーマー”だと思っているのだが、それはBABYMETALの「↑↓←→BBAB」でも描かれているように感じた。
曲名の「↑↓←→BBAB」は一見、隠しコマンドの一種であるコナミコマンド「上上下下左右左右BA」のように見えるかもしれない。ただ、よく見てみると、そこからさらに派生したものとなっており、BABYMETALだけの“最強コマンド”となっているのが分かるだろう。
そんな曲名からは既にゲームに対する愛情が伝わってくるが、ライフポイントがゼロになったときにスクリーンに表示されるあのセリフ「Game Over or Continue?」で始まる歌詞からもまた、“ゲーム愛”が感じられるのではないだろうか。ここで彼女たちが選ぶのは「Continue」の一択だ。
その後、展開される彼女たちの“ゲーマー魂”は凄まじく、「Don't give up もうすぐさ Save Point」「High Score 決めるぜ My Turn」「弱い敵 強い敵 最強敵 すべて倒すぜ」「ピヨって潰されて それでもまた立ち上がるぜ ワンナップ!」などの歌詞から、彼女たちの熱いスピリットを感じることができた。
これらからは、彼女たちがゲームに白熱している様子が伝わってくるだけでなく、BABYMETALが決して諦めない不屈の精神を持っていることが分かるだろう。
またBABYMETALなら、先ほどのゲームの“まことの勇者”になれると思っている。彼女たちは、きっとゲームのおもしろさを理解していると思うのだ。そして、おそらくゲーマーな君は、この曲に共感してもらえるのではないだろうか。
AAA「GAME OVER?」
決して挫けずに挑み続ける。そんな“真のゲーマー”が描かれている、不撓不屈の精神を感じられるアーティストの楽曲は他にもある。
AAAの「GAME OVER?」もまた、そんな楽曲のうちのひとつだ。かつて「ぷよぷよ!! クエスト」のCMソングに起用されていたこともあり、聴いたことのある人も多いのではないだろうか。
「Game Over?」という問いかけからスタートするこの曲。ゲーマーな君にとってみれば、これは反語表現だろう。「ここで終わるわけないよね?」「もちろん、Continueするよね?」という表現に見えるに違いない。そして、AAAが選ぶのもまた「Continue」だ。
その後、「Loading...」や「Push the start」の文字がスクリーンに表示される様子が曲中に描かれており、「目の前モンスターがたくさん」「R U ready for the game?」「一丁やらかすか さぁ 今こそ君が闘う番」と彼らのファイティングスピリットに火がついたように感じられる。
また、AAAは「Never Over We'll never give up」「0になるthrill乗りこなせ」、「Never Over We'll never give up」「0になる快感を楽しめ」とも歌っており、HPが0になったときほど燃えているのが伝わってくるだろう。
一見、マイナスに感じられることをチャンスだと捉えて、前に進む原動力へと変えてしまうAAAの不屈の精神は、“真のゲーマー”そのもののように思う。あの“勇者”にこそ伝えたい考え方だ。
そして、AAAがそんな熱いスピリットを持っているからこそ、彼らは来年から入る活動休止期間をプラスな力に変えて、再び戻ってきてくれるのではないだろうかと思っている。AAAとしての活動で選ぶのもまた「Continue」であってほしい。
sumika「ふっかつのじゅもん」
そんな彼らの再開を願う意味も込めて、最後にsumikaの「ふっかつのじゅもん」を唱えたい。
曲名から、パスワードを入れて「Continue」できる「ドラゴンクエスト」の“復活の呪文”を想起した人もいると思うが、“ゲーム愛”が散りばめられた歌詞も、きっと君の心をくすぐるものがあると思っている。
曲中に描かれているのは、“まことの勇者”の姿だ。「毒喰らってしまっても 堪えて 光差す方 手の鳴る方へ」「矢が刺さってしまっても 堪えて 強引にだって進んでいく」という歌詞からは、どんなにダメージを受けても、逃げずに立ち向かっていく“まことの勇者”の様子が想像できるのではないだろうか。
そしてこの“まことの勇者”は、モンスターだらけの世界の中でひとりぼっちで戦っている。彼は、賢者や魔法使い、戦士や盗賊などの仲間と戦う日々を信じて、自分の信じる道を一心不乱に突き進んでいるのだ。
そんな不屈の精神を持った“まことの勇者”は、最後に錆びていた剣が光り出すという不思議な現象を体験することとなる。きっと彼にとっての“最強コマンド”は自分を信じることだったのではないだろうか。
“まことの勇者”は、逆境を力に変えながら奮闘したり、明るい未来を信じることで、きっと見える世界が変わったのだと思っている。今こそ、彼のような熱いスピリットを現実でも発揮するときなのではないだろうか。
お題「#おうち時間」
BABYMETAL、RADWIMPS、KANA-BOON…アーティスト6組で表す、時間に追われている人の1日
時間厳守。それは日本にいる限り、つきまとう問題だと思っている。
“時間を守ることが美徳”とされている日本の文化
日本は時間に厳格な国だと思う。日本で暮らしている限り、日々、嫌でも時間を意識せざるを得ないだろう。
例えば、遅刻なんてしたものなら大変だ。学校では、教室の後ろに立たされることになってしまったり、そもそも講義が受けられなかったりするのではないだろうか。会社では、社内外の信頼を失うことになりかねない。日本では、時間を守れないことは“恥”なのだ。
そんな時間厳守が“当たり前”とされている日本では、常に時間に追われている人がいるのも珍しくない。彼らはとにかく間に合わせようと必死なのだ。
今回は、そんな時間に追われている人たちの1日を音楽で表現してみようと思う。せわしない日々を送っている人には、きっと共感してもらえるのではないだろうか。
- “時間を守ることが美徳”とされている日本の文化
- 【朝】BABYMETAL「ド・キ・ド・キ☆モーニング」
- 【日中】RADWIMPS「アメノヒニキク」
- 【夕方】KANA-BOON「1.2. step to you」
- 【夜】サカナクション「夜の踊り子」
- 【夜中】フレデリック「オワラセナイト」
- 【夜明け】パスピエ「REM」
- 感想
【朝】BABYMETAL「ド・キ・ド・キ☆モーニング」
「リンッリンッリンッ! おはようWake Up ド・キ・ド・キ☆モーニング」といったアラーム音が鳴り響いているようなフレーズからスタートする、BABYMETALの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」。この瞬間から、既に時間との戦いは始まっているのだ――。
何度も繰り返される「あっち?こっち?そっち?どっち?」「Which?ちょっち?ウォッチ 今何時?」といった歌詞からは、慌てふためいている様子が伝わってくるだろう。さらにサビでは「お・ね・が・い! チョ待って!チョ待って!」と繰り返し懇願しているが、時間は残酷にも待ってくれない。
その後、間に合ったのかは定かではないが、第一関門が朝にあるという人は少なからずいると思っている。
【日中】RADWIMPS「アメノヒニキク」
あいにく、この日は雨だったようだ。雨の日には電車が遅延しやすいこともあり、まだまだ油断は禁物だ。
RADWIMPSの「アメノヒニキク」は、そんな心が休まらない人の心境を表現しているような1曲だと思っている。
歌詞とサウンドで雨の降り始めを表現したような前半パートが終わると、後半の“どしゃぶり”パートへと突入するのだが、その後半での心理状況に注目してほしい。日中も焦燥感に苛まれている様子が伝わってくるのだ。
「次の哀しみは何時何分? それまでにそれまでに」「次の幸せは何時何分? それまではそれまでは(それまでは×3)」、「次の裏切りは何時何分? それまでにそれまでに」「次の箱舟は何時何分? それまではそれまでは(それまでは×7)」と歌詞からは、心に余裕がないことが分かるだろう。
そして、しまいには「ザンザカザンと さぁさほら降れ降れ」とやけくそだ。しかし、同時に「なんだからしくないな泪目だね」「ザンザカザンと さぁ なんだらかしくない」と、いつもの自分らしさが出せていないことに対して、悔しさを感じているようでもある。
このように、時間に追われて心にゆとりがなくなっている人は多いように思う。
【夕方】KANA-BOON「1.2. step to you」
その後も、まだ時間に追われているようだ。KANA-BOONの「1.2. step to you」では、夕方になっても時間と戦っていることが分かるのではないだろうか。
冒頭の「坂を登ればあと何メートル」「君の家まであと何メートル」「見慣れた景色あと何メートル」というフレーズや、「夕日が沈み、あと何十分」といった歌詞からは、未だに焦燥感に駆られている様子が伝わってくるだろう。
同曲では、時間が経つにつれ、記憶が薄れていってしまうことについて嘆いており、忘却してしまうことを食い止めようと、時間と懸命に戦っている。
時間を戻したくて必死な気持ちが伝わってくる「戻れ、戻れ、1.2. step to you」のリフレインは、まるで締切に追われている人たちの心境を描いているようだ。
【夜】サカナクション「夜の踊り子」
夕日が出ていたとはいえ、まだ雨は上がったばかり。夜になっても、何らかの問題から逃げたくなっている姿が描写されている曲がある。サカナクションの「夜の踊り子」だ。
曲中には「忘れたふりして 夜に逃げただけ」「聞こえたふりして 夜に逃げただけ」という歌詞が登場するが、最終的には「今」と戦う姿が描かれている。ここで戦っているのは、おそらく“時間のない自分”だと思う。本当は時間からではなく、そんな余裕のない今の自分自身から逃げたいのではないだろうか。
そして、注目してほしいのが、時間の捉え方にやや変化が生じていることだ。これまでは時間に追われるあまり、心にゆとりがなく、ややネガティブに物事を捉えがちだったと思う。しかし、ここに来て、少し楽観的に考えることができるようになっている。
この曲では「行けるよ 行けるよ」「遠くへ行こうとしてる」「イメージしよう イメージしよう」「自分が思う方へ」、「今泣いて何年か後の自分」「笑っていたいだろう」などと歌っている。この箇所からは、未来で笑うために、今つらくても頑張りたいという熱い想いが伝わってくるのではないだろうか。
時間に追われている“今”ではなく、心にゆとりができている“未来”を想像しながら取り組むことで、見える世界は少しずつ変わってくるのかもしれない。
【夜中】フレデリック「オワラセナイト」
とはいえ、非情にも進んでいくのが時間だ。刻々と時は流れ、ついに夜中に突入してしまう。そんな時に聴きたいのが、フレデリックの「オワラセナイト」だ。この頃には再び余裕のない姿に戻っていることが分かるだろう。
「終わらせないと」と「間に合わないよ」のリフレインは、締切に追われて切羽詰まっている状況にいる人なら、きっと共感できるのではないだろうか。「後の祭り」になってしまう前に終わらせる必要があるのだ。
また、「終わらせないと 終電感情戦外回りに間に合わないよ」といった歌詞は、おそらく激務と言われている業界へ一度でも飛び込んだことのある人なら分かるだろう。終電を逃すとタクシー帰り、または始発を待って帰るという展開が待っているはずだ。だからこそ、さっさと終わらせたいのではないだろうか。
【夜明け】パスピエ「REM」
なんとか締切までに仕事を終わらせることができて家に帰れたとしても、頭が活性化してしまって眠れない。そんな日はないだろうか。
パスピエの「REM」では、気分が高揚するあまり、眠ることができていない姿が描かれている。
同曲では、新聞配達員のことが気になっているあまり眠ることができていない様子が描写されているのだが、「切羽詰まってる 午前三時 午前三時」や「まじ極まってる そろそろ四時 そろそろ四時」というフレーズからは、眠れないまま時間が過ぎ行くことに焦燥感を募っている姿が伝わってくる。そして、こういう人は意外にも多いのではないだろうか。
感想
時間の問題は、やはり日本にいる限りつきものだと思う。時間に追われるあまり、心に余裕がなくなってしまったり、時間に追われることがストレスとなって睡眠障害に悩んでいたりする人は少なくない。
筆者も時間に追われる日々を送っているのだが、まだ心にゆとりがないように感じている。作業のスピードを早めることはもちろん、無駄を省きながら、なんとか効率的に作業する仕事術を身につけたいものだ。
心に余裕ができているポジティブな未来をイメージしながら、これからも踏ん張っていきたい。