【岡崎体育『SAITAMA』】16,000人集客! “夢のたまアリ”の登竜門に挑む
夢に向かって頑張っている人はかっこいい。それでいて応援したくなる。
岡崎体育もそんな一人である。
“いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対”
2016年にアルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビューを果たした、シンガーソングライター・岡崎体育。
京都出身の彼は、自らの音楽スタイルを「盆地テクノ (英訳:BASIN TECHNO)」と名付け、自身のブログで「同じ曲でも、何回見ても楽しんでもらえるように少し変えたり足したりするのが盆地テクノ流。そこを怠れば盆地テクノじゃない」と説明している。
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そんな彼は、同アルバム1曲目に収録された「Explain」で、“いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対”と自身の目標をしっかり曲に入れ込んでいる。
それだけでなく、ライブを開催するたびに、彼はMCで何度もその夢を力強く叫んできた。
夢に向かって着々と努力してきた岡崎体育
そんな彼は、自身の夢を叶えるために着々と努力してきた。
楽曲「潮風」がアニメ「舟を編む」のオープニング主題歌に抜擢される他、「ポーズ」「キミの冒険」「ジャリボーイ・ジャリガール」の3曲がアニメ「ポケットモンスター サン&ムーン」の主題歌に次々と起用された。
また、「MUSIC VIDEO」のMVが第20回文化庁メディア芸術祭で「エンターテインメント部門 新人賞」を受賞した他、子ども向け教育番組「天才てれびくんYOU」へのレギュラー出演や、自身がMCを務めるバラエティ番組「テンゴちゃん~土曜深夜の辺境レボリューション~」の放送もスタート。
そうして夢に向けて頑張ってきた岡崎体育は、昨年の“体育の日”にずっと公言してきた長年の夢が叶うときがやってきたことを発表したのだった。
岡崎体育の夢が叶う瞬間をともに見たい
今年の6月に岡崎体育がさいたまスーパーアリーナでワンマンライブを開催するというニュースを見たとき、これまでMCで何度もめげずに発言している姿を目にしてきただけに、私は自分のことのように、うれしくてたまらなかった。
絶対に彼の夢が叶う瞬間を一緒に見たい。そう思った。
さまざまな強い想いが感じられたアルバム『SAITAMA』
そんな中、アルバム『SAITAMA』が1月9日にリリースされた。
今回は前作のアルバム『XXL』とは異なり、事前に新曲のMVをいっさい公開せずにアルバムの発売を行った岡崎体育。
自身のTwitterでも何度か力強く発言しているように、CDを売って、オリコンランキングで1位を取るという、決してブレることのない強い意志が感じられた。
俺とヤバTはCDを売る。時代錯誤なことくらいわかってるよ。でも俺らはCDを売る。 https://t.co/8dwiZFSJo8
— 岡崎体育 (@okazaki_taiiku) 2019年1月8日
また、岡崎体育といえば、“面白い”というイメージが脳裏をちらつく人が多いと思うが、そのイメージを覆したかったのではないだろうか。
単なる“笑い要素”だけでは終わりにしてほしくない。メロディへのこだわりや、独特な歌詞の表現方法などの魅力をふんだんに詰め込んだ、彼の“音楽家としてのプライド”を受け止めてほしい。
そんな想いが感じられたとともに、そこにアルバムリリース前にMVを出さなかった理由がある気がした。
どの曲も違ったテイストに仕上がっており、それぞれ異なる色が際立つ、聴きごたえがあるように感じたアルバム『SAITAMA』。
今回は、全アルバム収録曲について、独断と偏見で書いていきたいと思う。
アルバム『SAITAMA』全12曲レビュー!
1.「No Touch Service Ace」
宇宙から舞い降りてきたかのようなサウンドが特徴の同曲。和訳すると、“触ってはいけないサービスエース”だろうか。相手が返すことのできないほどの良いサーブを打たれたときの動きを、敢えてスローカメラで再生したもののようにも聞こえる。そこからの次曲「からだ」へのバトンタッチがスムーズ。
2.「からだ」
岡崎体育が自身の公式Twitterで「MV公開した『からだ』って曲、ドラムビートとベースの音をとても時間かけて音作りしました。自分が納得いくまで何回も試行錯誤して音を作った。結果、俺が大好きなゴッリゴリのブリンブリンの超気持ち良い低音ができた。と俺は思ってる」と説明しているように、ラップと重ためなビートが特徴的。
今MV公開した『からだ』って曲、ドラムビートとベースの音をとても時間かけて音作りしました。自分が納得いくまで何回も試行錯誤して音を作った。結果、俺が大好きなゴッリゴリのブリンブリンの超気持ち良い低音ができた。と俺は思ってる。ゴッリゴリ。ブリンブリン。
— 岡崎体育 (@okazaki_taiiku) 2019年1月10日
もはやゴブリン。
聴いてみて。
“クリティカルヒットオンザヘッド”というラップから始まるが、前曲の「No Touch Service Ace」で相手がサーブした球が頭に当たり、呆然とした状態を1曲目で表現したのち、2曲目となる「からだ」でこみ上げてくる想いを表現しているのではないかとも考えた。
また、“岡崎体育ってバンド”と歌っているのがおもしろい。楽曲「FRIENDS」では“バンドざまぁみろ”と歌ってきただけに、自身を“バンド”と呼んでいるのが意外に見えた。
ただ、同曲では“さいたまが俺を呼んでいるんだ”や、“つまんねぇシーンは捨てろ GET AWAY”とロックスピリットにあふれているだけに、自身のことを“バンド”と呼んでいるのはわからなくもない。そんな肩書きにとらわれない点も岡崎体育の魅力のように感じた。
3.「PTA」
“PTAの会長”の「俺」と“PTAの会員”である「君」との不倫を描きつつも、そんな自分が「妻」に監視されているというシュールさも取り入れた楽曲。R&Bやファンクの要素も混じったニュージャックスウィングのリズムが印象的。
4.「弱者」
はみ出ることが怖いあまり、本当の自分に鍵をかけ、みんなと合わせながら生きている“偽りの自分”へのもどかしさや、自分に対する弱さを描いている曲のように感じた。それでも、諦めずに一歩踏み出す勇気を持ってほしい。そんな想いが込められているように感じた。前曲「PTA」の延長線のようなリズムも印象に残りやすい。
5.「なにをやってもあかんわ」
アップテンポなサウンドとは裏腹な投げやりな歌詞が印象的な楽曲。“もうなにをやってもあかんわ”と開き直っているのが逆に潔さを感じさせる。“もう一体全体 なんなんだ もういっそ一生 寝たろかな”と歌ったあとに次曲「確実に2分で眠れる睡眠音楽 (Interlude)」へと持ち込んでいるのが抵抗なく受け入れられる。
6.「確実に2分で眠れる睡眠音楽 (Interlude)」
波のようなサウンドも含まれ、疲れたときに癒しを与えてくれそうな1曲。ただ、睡眠にいざなう楽曲というよりも、瞑想や何か集中したいときに適した曲という印象。何かアイディアをひねり出したいときにも効果が期待できそう。
7.「Calculated」
前曲が“睡眠音楽”だとしたら、今回は“目覚めの1曲”。次々と変調していくサウンドの中に突然パンチの効いた叫び声が響いたかと思いきや、今度はゆったりとした口調で語るそのギャップに驚かされる。
そして、タイトルを和訳すると“計算済み”になるのだろう。“30歳になるまでにさいたまスーパーアリーナでワンマンライブを開催する”というかねてからの目標を掲げていた岡崎体育は、その期限を全て“計算”したのだろう。そのストーリーをフィクションにし、曲にしたものなのだろうか。
また、“全部問題ない 何も問題ない”と自分自身を鼓舞しているようにも聴こえる同曲は、5曲目の「なにをやってもあかんわ」と対照的になっているのもおもしろい。
8.「Okazaki Unreal Hypothesis」
どこか謎めいた音色でスタートする楽曲。曲名を和訳するならば、“岡崎(体育)の信じがたい仮説”になるのだろうか。“それらが汝を構築するファクターぞな”と最後のほうで歌っていることから、これは実際に岡崎自身を指している曲のように感じた。
9.「Jack Frost」
イングランドに古くからまつわる伝承・フォークロアに登場する霜の精霊“ジャックフロスト”をそのまま題材にしたのだろう。雪がこんこんと降っているようなメロディーの中描かれる、情景描写が美しい。
10.「私生活」
大学卒業後、音楽への夢をあきらめきれずに、地元のスーパーでアルバイトをしながら自主制作などを行っていた岡崎体育。彼が店員として働いていたからこそ描ける人間模様もあるのだろう。日常生活の中で見つかる小さな幸せを繊細に感じ取り、描写したような1曲。
いつかのワンマンで岡崎体育さんが同曲を披露してくれたのを覚えている。初めてながらものすごく感動したこともあり、私はアルバムの中で一番気に入っている。
11.「龍」
作った本人も大好きだという同曲。
龍という曲は、作った僕も大好きな曲です。
— 岡崎体育 (@okazaki_taiiku) 2019年1月8日
風呂入ってる時とかよく歌う。
皆さんぜひ聴いてみてください! https://t.co/a3KoIUFOSt
賢明に音楽と向き合う岡崎自身の姿を、時に“龍”になぞらえ、巧みな想像力を用いて描いたようなバラード作品となっている。ピアノのロマンチックな音色が美しく、音楽への“愛”が感じられた。
12.「The Abyss」
和訳すると“奈落の底”になるだろうか。“誰かの記憶の奈落に潜むように ここに立つ 僕はここに居た”という歌詞から、岡崎体育はいつでもリスナーの心の支えになっていたいという気持ちで同楽曲を作ったのだろうか。
徐々に光が灯されていくような、明るさが染み渡る曲調が特徴的な同曲には、どこか感動させられた。
「まだ夢は叶っていません。ここからが本当の勝負です」
岡崎体育は、自身のブログで「僕にとってさいたまスーパーアリーナは夢の場所です。開催まであと半年くらい。全身全霊をかけて準備をして、チケットを完売させるために泥臭く告知をします」
「まだ夢は叶っていません。ここからが本当の勝負です。絶対に16,000人のお客さんを集めます。今涙が止まらない。くそう。ダサいし別に書かなくていいよそういうの。でも涙が流すほどの夢が僕にはある。応援してくれる皆が見せてくれる夢がある。チケット完売させるために、ライブ開催日前日までがむしゃらに宣伝するし告知します。絶対に、絶対に成功させます。16,000人を集めます」
「さいたまスーパーアリーナワンマン。タイトルは『BASIN TECHNO』にしました。がんばれ岡崎体育。きみならできるよ」と綴っている。
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16,000人集めて初めて岡崎体育の夢が叶う。絶対に集めてほしいと思ったとともに、さいたまスーパーアリーナのチケットが当選できたことをうれしく思います。