パノパナが2月13日、ついに初となるフルアルバム『情熱とユーモア』をリリースした。
彼らは、本当に“2010年後期、ロックシーン最終兵器”なのかもしれない。
楽しい裏切りにあったのだ。
多様性に富んだサウンドと挑発的なリリックが魅力だった、パノラマパナマタウン
神戸で結成された、4ピースオルタナティブロックバンド・パノラマパナマタウン。
NUMBER GIRLやASIAN KUNG-FU GENERATION、NICO Touches the Wallsなどのアーティストから影響を受けたメンバーは、自身のバンド名にも“パノラマ”とあるように、ロックやヒップホップ、ファンクなど、それぞれが好きな音楽を詰め込んだバラエティー豊かなサウンドが特徴となっている。
そんな彼らが作る音楽は、曲ごとに方向性が異なるのも魅力のひとつ。しかし、それ以上に、自身の中に溜まった鬱憤や苛立ちなどをさらけ出し、社会に牙をむけたような、攻撃的で刺激的な歌詞が彼らの最大の特徴だったのではないだろうか。
強烈なロックスピリットあふれる「フカンショウ」に注目!
メジャーデビューを記念し、2018年1月にリリースしたミニアルバム『PANORAMADDICTION』に収録されたリード曲「フカンショウ」を聴いてほしい。
“ほっといてくれ!”で始まり、“ほっといてくれ!”で終わるこの楽曲。
曲中にはなんと25回も同フレーズが登場し、自分が優位に立っていないと認めない人や他人の揚げ足を取る人、批判してくる人などに対する怒りを吐き出した、思わず共感してしまう“あるある”がふんだんに詰め込まれたロックスピリットあふれるナンバーとなっている。
楽曲からは、“他人の意見なんて聞かない。人に何を言われようと、自分は自分だけを信じていく”という強い意志も感じられ、自分の夢や目標がある人、自分の道を進みたい人を鼓舞してくれることに違いない。
また、“俯瞰し俯瞰し不感症 真に受けない俺たち不干渉”というラップからは、“パノラマ”と入った自身のバンドについて触れつつ、彼らの挑発的なメッセージを映し出したように感じた。
さらには、変則的な曲展開も見られ、彼らのこれまでの魅力をリリック、サウンド面ともにこの1曲にたんまり詰め込んだといっても過言ではないだろう。
“数字”の価値観に体当たり! 「$UJI」にも目が離せない
2018年6月にリリースされたシングル「$UJI」も負けていない。
受験の合格点や仕事の業績などの順位にまつわる物事から年齢や収入まで、あらゆる“数字”に対する怒りを爆発させた同曲も、パノパナは自分らしく生きることのメッセージ性を訴えている。
魅力的なサウンドはそのまま! 変化したのは“リリック”!?
「フカンショウ」や「$UJI」などからも見られるように、これまでの楽曲からは鬱憤や苛立ちを軸に、“自分らしく生きる”というテーマを彼らが奏でる音にのせて、アグレッシブにさらけ出してきた。
しかし、メジャーファーストフルアルバムは違った。
例えば、『情熱とユーモア』収録曲の「Top of the Head」を聴いてみてほしい。
“自分らしく生きる”というテーマは変わっていないものの、怒りをあまり感じさせない、前向きな歌詞に変わっているのがわかるだろうか。
“思いもよらぬほど 素晴らしい明日が 俺らには待ってるはずだろう”や、“この単調な毎日を変えて 最高潮イメージを積み重ねて それを人生と呼ぶだけさ”など、これまでの彼らがあまり伝えてこなかった人生に対する肯定的なメッセージが楽曲のところどころに散りばめられている。
また、収録曲「めちゃめちゃ生きてる」も、“何だってできるなんて 強がりも虚勢も 味方に変えて 楽に生きてこうぜ”や、“あなたが作った晩飯は どんなエナジードリンクより元気が出る”など、ポジティブなメッセージ性があふれている。
その一方で、彼らのこれまでの歩みを感じさせる「$UJI」や「くだらnation」など怒りを爆発させた過去の楽曲も収録されている。
それだけでなく、初の全国流通版となるファーストミニアルバム『SHINKAICHI』に収録され、自問自答してきた様子を描く「世界最後になる歌は」や、その当時を振り返ったような「Who am I ???」「からの」「俺ism」などの楽曲も見られるのが、このアルバムのよさをより引き立てているように感じた。
今後のパノパナにも期待!
エネルギッシュな魅力あふれるパノラマパナマタウン。
昨日行われた、彼ら主催のサーキットフェス・パナフェスもきっと盛り上がったに違いない。
これからも楽しい裏切りをたくさん見せてほしいと思った。