MASQUERADE HOTEL、“フューチャーR&Bの新貴公子たち”がサウンドで魅せるエモさ
最近、何かと使われている「エモい」という言葉。
古語の「あはれ」と同じような意味で、感動した、切ない、寂しい、懐かしい、などの複数の感情がごちゃ混ぜとなった、漠然とした感情を表すのに用いられている。
私はこれまで「エモい」という表現を使ったことは一度もなかった。代わりに、自分の中に沸き起こるさまざまな感情を、なるべく具体的に、一つひとつ説明しようと思い、そう努めてきたつもりだ。
これから先も使う予定はない、と思っていた。 …バンド・MASQUERADE HOTELの曲を聴くまでは。
彼らの楽曲は、エモかった。いろんな感情が渦巻くあまり、「エモい」しか出てこなかった。
そして、気づいたときにはすでに遅かった。“私の初めて”は、何気なくMASQUERADE HOTELに奪われたのだった。
ちょっぴり悔しかったが、彼らの音楽はやっぱり“エモい”。
今回の記事は、そんなMASQUERADE HOTELの“エモさ”を筆者なりに追究したものとなっている。
MASQUERADE HOTELの“エモさ”
R&Bやジャズ、トラップなどのアーバン・ミュージックに、少しだけエレクトロな要素が加えられた、セクシーかつお洒落な曲調。
そこにボーカル・syunのやさしくも甘い歌声が重なることで、さらなる艶やかさが醸し出される。
MASQUERADE HOTELの魅力は、その大人なサウンド面にあるのではないか。
「LOST ALONE」
まずは、彼らのファーストシングル「LOST ALONE」を聴いてほしい。
溢れ出してもう 感情消えなくてずっと 大人しくなれない 君には戻れない
願ってた「もう一度」 Sadness 繰り返すだけなら もう二度と触れないように 大人しく 仕舞い込む
“溢れ出して”というフレーズとともに一段と大きくなるサウンドは、失恋した主人公の感情が一気にこみ上げてくる様子を表現しているかのようだ。
さらに、“溢れ出してもう 感情消えなくてずっと”、“願ってた「もう一度」 Sadness 繰り返すだけなら”という歌詞の部分で、エレクトロサウンドが“リフレイン”されている。
サウンドを歌詞に重ね合わせながら強調することで、一気に楽曲に浸りやすくしているのだろうか。小さなこだわりが丁寧に積み重ねられているのが魅力的だ。
通り過ぎる 君との日々 「くだらない」の繰り返しでも なんか 愛おしい
その冷たい指解いて 優しさなんかで埋めないで 塗りつぶして はじめから 何事もなかったかのように
このあと流れるサックスの音色も絶妙だ。途中、短いクラクションのような音が流れる瞬間もあり、物事が“ストップ”して思うように進まない気持ちに拍車をかけているように感じた。
そして、この頃には、すっかり主人公に同情してしまっている私がいた。
Let me cry 涙流れた あの日からずっと 君を抱きしめたい 温もりは冷めない
行く宛も わからない 愛情が絡まって乱れたままなら
微睡みが醒めない間に 大人しく 落ちて行こう
“涙流れた あの日からずっと”、“行く宛も わからない 愛情が絡まって乱れたままなら” の箇所でもエレクトロサウンドのリフレインがある。ここでも、歌詞とサウンドがぴったり合わさり、ますます主人公の世界観にじりじりと引き込まれて行ってしまう。
その後はエレクトロサウンドがひたすら繰り返されることからも、主人公がしばらく失恋から立ち直れない様子が伝わってくる。
本能に訴えかけているような、奥深くて複雑なリズムパターンに思わず胸を打たれたのだった。
「Up to U」
続いて、セカンドシングル「Up to U」を聴いてほしい。
アッパーチューンなエレクトロR&Bとなっており、その奥深いリズムからグルーヴに酔いしれることができる。
お洒落なサウンドを彩るピアノの音色も鳴り響き、美しさがひとしお。
本能を刺激してくるような“エモさ”を感じた一曲だ。
「secret」
最後に、サードシングル「secret」を聴いてほしい。
美しさと愛らしさが欲しいという、大人な女性のロマンスを描いたような世界観が堪能できる。
そんな“秘密”を少しだけ、覗いてみてはいかがだろうか。
…それにしても、やっぱりエモい。