ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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Fear, and Loathing in Las Vegasに2度泣いた、CDJ19/20でのお話

“なんちゃらラスベガス”の愛称でも親しまれる、Fear, and Loathing in Las Vegas(以下、ベガス)。

彼らは今からおよそ2週間前となる12月31日、COUNTDOWN JAPAN 19/20(通称:CDJ19/20)のGALAXY STAGEに出演していた。

そして、この日がきっかけとなり、筆者は2度涙を流すこととなる。

2019年、“最後の師走の日”に起きた出来事

あの日、私は急いでいた。

PASMOのチャージ金額が不足していたことによる突然の足止め。そして、それが原因で電車を逃し、乗り換え先の電車は遅延していた。

この時点で、予定していたスケジュールより30分オーバーだ。ベガスの前に観る予定だったアーティストのライブは既に始まってしまっている。ただ、ベガスはまだ観ることができるという希望があった。何度もタイムテーブルを確認しながら、そう自分を信じていたのだ。

そうこうしているうちに、「舞浜」のアナウンスが流れてきた。ガラリと空く客席。それに伴い、張りつめた緊張感が不思議と和らいでいく感じがした。

 

その後、「海浜幕張」というアナウンスはしばらく経っても聞こえてこなかった。代わりに「次は船橋法典」という声が飛び込んでくる。なんだか嫌な予感がした。

慌てて検索をかけたときには、もう遅かった。海浜幕張駅を4駅ほど通過していたことに気づいたのだ。

初めて降り立つ駅、そして乗り過ごしていたことに戸惑いながらも、私は再び海浜幕張駅を目指した。「海浜幕張に到着する頃には、ベガスのライブは始まっている」。そう思うと、なぜだか涙があふれてきたのだった。

 

さらに遅れること50分。ようやく駅に到着した私は、会場目掛けてひたすら走った。ぐちゃぐちゃな視界の中、ただただ走った。「少しでも観たい」。その情熱だけが、私を突き動かしたのだ。

しかし、現実は甘くなかった。GALAXY STAGEの前に着いたときには「入場規制中」の文字が飛び込んできたのだった。

全8曲の個人的解釈! CDJ19/20のセトリから感じたこと

そんなわけで、ベガスのライブは観ることができなかった。

代わりに、この日のセットリストを確認しながら順番通りに曲を流す“お家ライブ”を後日開催していたのだが、そこで再び涙を流すこととなった。

そのとき思った感想を、独断と偏見で、1曲ずつ書いていきたい。

※以下、この記事で扱う曲の歌詞を、一部、英語から日本語へ意訳しているところがあります。長さの都合上、意訳した部分の英詞は省いています。正確な歌詞を知りたい方は、歌詞サイト等でご確認ください。

「Acceleration」

この日は、“加速”の意味を持つ「Acceleration」からスタートしている。

  Acceleration - Fear, and Loathing in Las Vegas

同曲で「本能に正直であれ」「あなたはあなたのままでいい」などと歌っているベガスは、観客一人ひとりに“自分らしさ”を解放させるきっかけを与えていただけでなく、彼ら自身の想いをこの曲に込めながら歌っていたのではないかと思った。

「スピードを落とす必要はない」「突き進め」といった歌詞は、彼ら自身に対してそっくりそのまま言っているように感じたのだ。

本来ならば、同曲の主役はリスナーだと思っている。運転席にリスナーを乗せ、助手席や後部座席にはメンバーが座り、運転しているリスナーにベガスが懸命にエールを送っているような曲だと思うのだ。

ただ、この日はベガスも主役だと思った。2019年にベガスが新体制となったこともあり、大みそかに新たな年への決意や意気込みをこの1曲目で見せていたのではないかと思う。

アクセル全開で、このまま進み続ける。そんな強い想いが感じられた始まり方だったのではないだろうか。

「Just Awake」

続いて披露されたのは「Just Awake」だそうだ。私はこの曲を聴きながら、どうしてもKeiさんのことを想起せずにはいられなかった。というのも、曲名は“目を覚ませよ”といった捉え方ができるからだ。

  Just Awake - Fear, and Loathing in Las Vegas

一方、この曲名には“目を覚ましたばかりだ”という意味もある。これは、新体制となったベガスのことを指しているようにも捉えることができると思う。

曲中には「つぎはぎの心は不安定」「あの日の鼓動 忘れないで」というフレーズ、さらには「もう一度やり直そう」「ひとつになるために、失ったものを立て直して混ぜ合わせよう」といった歌詞が登場する。ここから、ベガスは今の彼らの想いや状況を表現するために、この曲を披露したのではないかと思った。

Keiさんを失った悲しみを歌いながらも、Keiさんの想いも背負って前に進んでいく。そんな彼らの力強い意志を表現するために、この曲を披露したのではないかと感じたのだ。私は思わず涙がこぼれてしまった。

また、この日はリスタートすること(「Return to Zero」)を歌っていないことからも、彼らにとっての最善の選択は“前に進むこと”なのだと思った。

「The Stronger, The Further You'll Be」

「Acceleration」や「Just Awake」で描かれていた“前進する”といった強い想いは、次の「The Stronger, The Further You'll Be」でも引き継がれている。“強くなればなるほど、さらに先へ進むことができる”といった曲名から、既にその気持ちが伝わってくるのではないだろうか。

  The Stronger, The Further You'll Be - Fear, and Loathing in Las Vegas

もちろん、それは歌詞でも描写されている。「止まらずに進み続けろ」「人生は次々と浮上するさまざまな問題を乗り越えていくものだ」といったフレーズからは、前進したいという彼らの気持ちがはっきりと伝わってくるだろう。

また、ベガスの心境を表現しているように感じた歌詞がある。「今にも立ち止まりそうなとき、進み続けるためには何が必要だろう?」といった疑問が描写されている箇所だ。

その答えは、歌詞中には「進み続けるためには、情熱が必要」とあるが、それだけが彼らにとっての答えでないように思う。情熱だけでなく、これまでのメンバーも含め、メンバー一人ひとりのことを尊重していること、そして固い絆もあるからこそ、彼らは前へ進み続けることができるのだろう。

「Keep the Heat and Fire Yourself Up」

前曲「The Stronger, The Further You'll Be」で、前進するためには“情熱”が必要だと言っていたベガス。続く「Keep the Heat and Fire Yourself Up」では、彼らなりの情熱の引き出し方や、ファンを大切にする気持ちについて歌っているように感じた。

  Keep the Heat and Fire Yourself Up - Fear, and Loathing in Las Vegas

曲名は、“情熱を持ち続けろ、気合い入れろ”といった捉え方ができるだろう。歌詞では「動き出す時がきた」「思いのたけを情熱に変えて、目標を成し遂げるんだ」などとベガス自身を鼓舞するようなフレーズが登場する一方で、「このブタ野郎!」「もう終わりか?」と自ら鞭を打つ、ドSっぷりを発揮している。そんな“飴”と“鞭”のギャップが印象的だ。

さらに最後は、「大きな理想を叶えるためには、それだけの根性が必要なんだ。この時代に大きな足跡を残そうぜ。さあ、ともに足跡を刻ませてくれ!」とシャウトしている。この歌詞のポイントは“ともに”というところにあると思う。ベガスはメンバーだけでなく、ファンとも前進したいのだろうと思った。

「LLLD」

5曲目は、曲中の“Limited Life, Limited Days”という略称が曲名の「LLLD」。

  LLLD - Fear, and Loathing in Las Vegas

“限りある命、限りある日々”という意味の同曲だが、この日、この曲を歌ったのは、Keiさんのことを想ってだと思う。というのも、同曲にはKeiさんの名前が登場する箇所があるからだ。「Keiは夜中に出掛けに行った」とある。

この曲がリリースされたときは、もちろんそんな意味は無かったのだろう。ただ、今となってはKeiさんを失った悲しみを表現しているような曲に感じてしまう。

曲中には「この先もこんな日常がずっと続くんだと思ってた」「全てが終わる日が来るなんて思いもしなかった」「人生は一度きり 進み続けるほかない」といった歌詞も登場する。

今生きているこの一瞬、一瞬を大切に生きようというメンバーの気持ちを伝えるため、そして観客一人ひとりにも日々を大切にしてほしいという願いを込めて、この曲を歌っていたのではないだろうかと思った。

「Let Me Hear」

その後、披露されたのは“聞かせてくれ”といった意味の「Let Me Hear」。

  Let Me Hear - Fear, and Loathing in Las Vegas

この曲でも“生きる”ことに焦点が当てられているように感じる。セトリの前半のテーマが“前進”だったのに対し、「LLLD」以降のセトリ後半戦のコンセプトが“生きる”に変わってきているように思う。

同曲の特徴は、心理学者・マズローの理論をベガスなりに色濃く反映した歌詞にあると思う。マズローは「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」という思考のもと、欲求階層説、あるいは自己実現理論とも呼ばれる理論を提唱している。

この曲では、この理論について「俺は以前、こんなことが書かれている本を読んだんだ。マズローによると、人間の欲望には5つの段階がある。めっちゃ長生きしたいと思う欲(生理的欲求)、無事でいたいと思う欲(安全欲求)、人から愛されたいと思う欲(社会的欲求)、人から認めてもらいたいという欲(承認欲求)、そして自分の理想に近づきたいという欲(自己実現欲求)があるらしい。本ではそう書かれてあった」と説明している。

せっかく人間に生まれたのだから、深く考えながら生きて、5段階目の自己実現欲求を満たしてほしい。そんな想いから、ベガスは観客に一人ひとりの“欲”や手に入れたいものを聞かせてほしいと叫んでいるのではないだろうか。

「Party Boys」

続いて披露されたのは、「Party Boys」。

  Party Boys - Fear, and Loathing in Las Vegas

パリピならぬ“パリボ”は、ベガス自身を表しているのだろう。というのも、曲中で「お前らを楽しませることには自信があるぜ」「俺たちのサウンドを一度聴いたら、自然と踊りだしたくなってしまうよ」「俺たちだけのビートを刻んでみせる」「刮目せよ! おい、お前、こんなんじゃまだまだ足りないよな?」「ダンスタイムだ」と“パリピ節”を炸裂させているからだ。

観客を踊らせることに自信満々の“パリボ”だが、この曲では実際にメンバーの動きに合わせて行進したり、にょきにょきダンスを踊ったりと、とにかく楽しい。この日もおそらくフロアが一体となって踊りを披露していたのではないだろうか。踊りは古くから生きる喜びを表現するためとされているように、同曲でも“生きる”がテーマなのだと思った。

「Massive Core」

ラストを飾ったのは、「Massive Core」。

  Massive Core - Fear, and Loathing in Las Vegas

曲名は、直訳すると“巨大な核”とでもなるだろうか。そしてそれは、“心”を指しているように思う。

同曲は「俺たちが本当に信じられるものはなんだろう?」という疑問からスタートする。そして、それは人が言ったことでも、したことでもなく、確かに自分の中にあると歌っている。また、頭を使ってしまうことの難しさについても触れながら、自分の心を信じろと語っているのだ。

それは容易いことではないかもしれない。しかし、信じる力はやがて武器になることも伝えてくれている。そして、最後にベガスは「お前ならできる」とリスナーに想いを託しているのだ。

前進するためにも、よく生きるためにも、自分のことを信じる必要がある。そんなことをベガスはこの日、セトリ全8曲を通して伝えてくれた気がしたのだ。

昨日、サブスクおよびダウンロード配信がスタートした、最新アルバム『HYPERTOUGHNESS』の最後の曲として収録されている「Massive Core」。これは、まさにトリにふさわしいナンバーだと言えるだろう。

12月31日。年の終わりに伝えてくれたメッセージを、引き継いでいきたいと思った。

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