ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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CY8ER、ゆるめるモ!…“ネズミ”で表す、アイドルたちのロック魂【子年記念】

はじめに

“アイドルたちのロック魂”というタイトルに、どこか違和感を感じる人がいるかもしれない。「畑違いだ」とか、「何言ってんだ」なんて声すら聞こえてきそうだ。

ただ、私の思う“ロック魂”は音楽のことではない。彼女たちの“生き方”や“ハート”のことを指している。そして、そのことを表すために、このような表現をしたのだ。

どういうことなのか。今年は子年ということもあり、“ドブネズミ”について歌っている曲に絞って、説明していきたい。

有名な“ドブネズミの曲”

“ドブネズミの曲”と聞いて真っ先に浮かび上がるのが、THE BLUE HEARTSの「リンダ リンダ」という人が多いのではないだろうか。

アイドルたちが歌う楽曲について掘り下げる前に、まずは“ロック魂”が感じられる同曲について深掘りしていきたい。

リンダ リンダ

リンダ リンダ

  • provided courtesy of iTunes

「ドブネズミみたいに美しくなりたい 写真には写らない美しさがあるから」というフレーズから始まる同曲。

ドブネズミは家の壁や柱、通信ケーブルなどをかじり、人に被害を与える害虫として捉えられがちだ。そんな忌み嫌われがちのドブネズミのことを“美しい”と、ボーカル・甲本ヒロト(以下、甲本さん)は言っている。

「写真には写らない美しさがある」というフレーズからは、人や物事を見かけで判断するな、という甲本さんからのメッセージとも捉えることができるだろう。

少数派の意見が尊重されないことも多い中、甲本さんはマイノリティ側、あるいは弱者側の意見に寄り添いながら、“目に見えないもの”が大切なんだ、とリスナーに熱く語りかけているようにも聴こえるのではないだろうか。

 

世の中は、見た目や数値などの“目に見えるもの”だけで結論づける傾向にあると思う。仕事では業績や収入などの数字で、恋愛でも好みのルックスかどうかで判断されがちだ。

そんな世間に対し甲本さんは、大切なのは心の目で見ること、と懸命に伝えているように思った。

ドブネズミはどれだけ人から疎んじられようとも、自分の世界を確立し、その中で生きる不屈の精神を持った動物だと思っている。そんなドブネズミの生き様が“ロック”だから“美しい”のではないだろうか。

つまり“ロック魂”とは、自分で思う正しさを貫き通す姿勢を持ちながら、自分の道を一心に突き進んでいく生き方、あるいはそのハートを持つもののことを指す言葉だと思う。

ゆるめるモ!の「ガチャガキ」

ガールズニューウェーブグループ・ゆるめるモ!も、そんな“ロック魂”を「ガチャガキ」で表現しているように感じた。

ガチャガキ

ガチャガキ

  • ゆるめるモ!
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

同曲で「どこでだって生きてきた」と歌う、ゆるめるモ!。彼女たち自身をドブネズミに例え、マイノリティ側に手を差し伸べてくれているような歌詞が印象的だ。

曲中では、彼女たちなりの世界観があることを強調し、周りを気にせずに自分たちの道を生きることを歌っているような箇所が登場する。

あっそ うるさいんだ人の居る場所 関係ないよね

だって どぶねずみ どぶねずみ 私たち

へえ 街もペラペラの言葉の雑音も 関係ないか

かけずり回って 汚れて 生きるだけ

また、他人に流されることなく、自分の信念を貫き通している様子からは、ゆるめるモ!の“ロック魂”を感じた。

そう 信じ合う事とかさ 約束のあかしとか

別に いらないや いらないや なんもいんない 

そう信じ合う事とかさ 約束のあかしとかは

別に 探さない 探さない 本能なんだ

そう信じ合う事とかさ 約束のあかしとかが

そんな 綺麗な手 綺麗な手 嘘みたい

「窮屈な世の中をゆるめる」そして「あなたをもっととろけさせたい」という2つのコンセプトを掲げている、ゆるめるモ!。彼女たちのこの“絶妙なゆるさ”は、マイノリティ側に生きる多くの人々をきっと救ってくれるに違いない。

CY8ERの「東京ラットシティ」

アイドルユニット・CY8ERも、“ロック魂”が感じられる曲を歌っている。

1月22日(水)にリリースされたアルバム『東京』内の収録曲「東京ラットシティ」を聴いてみてほしい。

東京ラットシティ

東京ラットシティ

  • CY8ER
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

曲名に“ラット”とあるが、これはおそらく研究や実験用として改良されたドブネズミのことを指しているのだろう。というのも曲中には、やや中毒性があり、多用しすぎると依存する傾向のある「ブロン」という市販鎮咳剤が登場する他、「パパはいつまでも休暇」「数年前に出て行ったママを思い出して泣いた」とまるでネズミの両親は既にいないような表現が出てくるからだ。

そのような周りから尊重されていないドブネズミの様子が描かれているが、ネズミたちは自身の立ち位置を分かっている。「先輩、いつから主人公じゃないと気付いたんです? ほら、ねえ、僕らは脇役だってことを」と“後輩”ネズミが“先輩”ネズミに尋ねるような歌詞からは、同曲でもドブネズミがマイノリティ側として描かれているのが分かるだろう。そして「実験の果てに死ぬ運命を」、彼らは理解しているのだ。

だからこそ、ドブネズミたちは自分を信じて、危険を顧みずに突き進むのだろう。実験室から逃げ出し、自らの人生を切り拓いていく彼らの生き様は「東京、泥だらけのヒーロー」そのものだと思う。

そんなドブネズミたちに寄り添いながら歌うCY8ERからも、“ロック魂”が感じられるのではないだろうか。

感想

“ロック”な生き方は、決して楽ではないと思う。

ドブネズミが描かれた曲からも分かるように、“ロック”に生きるためには幾度となく立ちはだかる問題を払いのけながら生きる必要がある。そして、その強さがなければ、“ロック”には生きられないとも思っている。

しかし、“アイドル戦国時代”を懸命に生きている、ゆるめるモ!CY8ERなどのアイドルは、その“ロック魂”を心に宿しているように思う。そして、“ロック”に生きているからこそ、彼女たちの歌声やパフォーマンス、楽曲は、人々の心を惹きつけてやまないのだと思った。

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