ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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【YOASOBI】自分の中に眠る“怪物”を飼いならせ

無関係ではない怪物

怪物は、人間に害を与えたり、襲ったりする恐ろしい生き物として、はるか昔から描かれてきた。

例えば、ギリシア神話に登場するメドゥーサ。蛇でできた髪を持ち、見るものを石化してしまう魔力を持つ怪物として描かれていることは有名だろう。また、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』などで描かれている巨大なタコのような姿をしたクラーケンも、船乗りや漁師たちを襲う怪物として北欧に伝えられている。

そうした怪物は、人間とは異なる見た目の生き物として描写されていることが多い。しかし、人間の心の中にだって、怪物は潜んでいると思うのだ。YOASOBIの「怪物」を聴きながら、改めてそう感じたのだった。

アニメ『BEASTARS』を凝縮した、その世界観に迫る

YOASOBIの「怪物」は、アニメ『BEASTARS』第2期のオープニングテーマとして起用されている。

肉食獣と草食獣が共存する世界が展開されている同アニメ。男子高生のハイイロオオカミ・レゴシが肉食獣としての自分の本能と葛藤しながらも、愛するドワーフウサギの女子生徒・ハル、そして草食獣を守るために奔走していく姿が描かれている。

食肉がタブーとされる中、学園内で起こる食殺事件。さらには草食獣の肉などを手に入れることができる、肉食獣のための街・裏市の問題などのさまざまな出来事に巻き込まれながら、成長していくレゴシ。その姿は、どこか私たち自身と重なるところがある。

YOASOBIの「怪物」を聴きながら感じたこと

緊急事態宣言下における現在は、よる20時以降、不要不急の外出は避けるよう言われている。しかし、悲しいことに、“それまでの時間ならいい”と感染防止策の意味を取り違えて、大人数での飲み会を開催している人もいることが現実だ。そして、そんな現実からそっと目を背けて、見て見ぬフリをしている人も多い。気が触れそうだ。

素晴らしき世界に今日も乾杯

街に飛び交う笑い声も

見て見ぬフリしてるだけの作りもんさ

気が触れそうだ

YOASOBIの「怪物」では、こんな歌詞が登場する。『BEASTARS』で描かれている裏市のことが想像される一方で、筆者は緊急事態宣言下における“今”とどこか重なるところがあるように感じたのだ。

この世界で何が出来るのか

僕には何が出来るのか

ただその真っ黒な目から

涙溢れ落ちないように

 

願う未来に何度でもずっと

喰らいつく

この間違いだらけの世界の中

君には笑ってほしいから

もう誰も傷付けない

強く強くなりたいんだよ

僕が僕でいられるように

続く歌詞では、このように描かれている。さまざまな制限があるとはいえ、ルールをきちんと守った上で自分なりに楽しみ方を見つけている人が多いのは、家族や恋人など、自分にとって大切な人たちを守りたいからこそなのではないだろうか。

心に潜む“怪物”を飼いならせ

本能の赴くままに動けば、時には加害者にだってなり得る人間の弱さをも動物に例えて描いたような箇所が見られる『BEASTARS』。そして、その弱さも詰め込んだYOASOBIの「怪物」は、こんな“今”だからこそ、きっと響くものがあるのだと思っている。

社会現象を巻き起こしている『鬼滅の刃』に登場するさまざまな鬼たちもかつては人間だったように、“怪物”は一人ひとりの心にそっと潜んでいるように感じるのだ。

本当の“素晴らしき世界”にするためにも、弱い心に負けず、一人ひとりの中に眠る“怪物”をいま飼いならしてほしい、と心から願っている。

すべては、自分にとって“大切なもの”を守るため。自分の中の自分を超えてほしい。そう思うのだ。

怪物

怪物

  • 発売日: 2021/01/06
  • メディア: MP3 ダウンロード