【DISH//「ルーザー」】“夢”とともに咲き誇れ、“華”の四重奏
2月24日にリリースされたばかりの、DISH//のニューアルバム『X』(読み:クロス)。このアルバムのスタートを切るのは、リード曲の「ルーザー」だ。
この曲は、さまざまな“試練(クロス)”を“渡って(クロス)”きたからこそ、生まれたような1曲となっている。そこには、一見、“不可能(X)”なことを“可能(○)”にするような、力強い意志すら感じられた。
今回は、そんな「ルーザー」について、独断と偏見で語っていきたい。
負け犬の遠吠えなんかじゃあない
“ルーザー”と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
多くの人は、きっと“負け犬”をイメージするだろう。そして、“負け犬”は弱いだとか、可哀想だとか、やたらネガティブに捉えられがちだ。
しかし、DISH//が描いた“負け犬”は強かった。
どういうことか。詳しくは歌詞を見ていこう。
負けても折れない心
大敗ばかりも悪くない
されど宣戦布告はやめれない
手と手合わせて幸せだけ
願いたけりゃ
目瞑りな
最初に負けの描写が描かれているのは、この箇所である。夢や目標などの、“僕”が“信じるもの”を実現させるために、“爆弾発言”を掲げるも、負けてしまうのが1番だ。
「幸せだけ 願いたけりゃ 目瞑りな」といった歌詞は、“傷つく覚悟はあるのか? それくらい本気なのか?”とでも言っているようだ。まだ夢や目標が叶えられなくとも、諦めたくない、諦めないといった“僕”の真摯な想いがひしひしと伝わってくる。
信じるというチカラ
惨敗続きも悪くない
されど宣戦布告はやめれない
挑む我々の尊さよ
鳴り響けよ
歌になれ
続く2番では、“甘い言葉”や“甘い誘惑”に騙されてしまい、またしても負けてしまう“僕”の姿が描写されている。しかし、そんな中でも負けじと挑み続けるのである。
「挑む我々の尊さよ」といった歌詞は、自分たちを鼓舞しながら、これからも“宣戦布告”を続けていくといったチャレンジ精神にあふれているように感じられた。
凛としたその姿には、どこか惹かれるものがある
大敗ばかりも悪くない
それと惨敗続きも悪くない
されど散々情けをかけられる
違うな
欲しいのはそれじゃない
宣戦布告を致します。
僕と戦う人居ますか?
それじゃ、正しさを糺しに行こう
何度倒れようとも
最後は、このように描かれている。
負けても悪くないのは、“本気”だからこそだろう。
“負け”は決して悪いことなんかじゃあない。逃げずに立ち向かった勇気は格好いい。それに、人が何かに本気になっている姿は美しいとも思う。さらには、自分の全力を出し尽くしたことは素晴らしいことだとも思っている。
しかし、世間的に負けることは、“可哀想なこと”として捉えられがちだ。「ルーザー」では、そんな世の中を見返したい、とでも言っているように聞こえる。
だからこそ、彼らは“勝つ”まで諦めないのだろう。
感想
そしてそれは、アルバム『X』からも感じることができる。
負けん気が強い「ルーザー」から始まり、続く「QQ」や「ニューノーマル」で葛藤する心を描いたかと思いきや、「Seagull」「rock'n'roller」「NOT FLUNKY」などのナンバーと「君の家しか知らない街で」「未完成なドラマ」などの曲との温度差で山あり谷ありの人生を描き、最後の「バースデー」では夢に向かって再び前進していくような姿が描かれているのだ。
そんな中でも「ルーザー」に心を動かされたのは、DISH//にもいろいろあったからだと思っている。DISH//については、詳しくない。それでも、ボーカル・北村匠海が歌う言葉一つひとつに、重みや説得力が感じられたのだ。筆者もなかなか波乱万丈な人生を歩んでいるからこそ、そこには分かち合えるものがあった。
夢は、叶えられるものだと思っている。そこに強い意志がある限り、その夢は決して“うたかたの夢”で終わらない。“勇気を出して踏み出した小さな一歩が 大いなる旅立ちの始まり”なのだ。実際、私も叶えられた夢がある。
そこには、多くの壁が立ち塞がることもある。それでも、DISH//はたくさん乗り越えてきたのだろう。
今いる場所から夢までの距離は、あとどれくらいあるのだろうか。
もしかしたらそれは、想像しているものよりも意外と、近いのかもしれない。