ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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【年間ベストソング2022】ちゃんさきが選ぶ、マイベスト10選

明けましておめでとうございます。

早いもので、時は2023年の1月。2022年もさまざまな楽曲がリリースされ、多くの媒体やジャーナリスト、ライターからブロガーまで、音楽を愛する人たちが既に年間ベストを発表している中、遅ればせながら、今、昨年の年間ベストを上げようとしている。

アイドルソングについてはこちらにて記事化しているため、この記事では割愛するが、今回もよかったと感じたものを10曲ピックアップした。

独断と偏見で選んだ、マイベスト10選。愉しんでいってもらえたらうれしい。

サカナクション「フレンドリー」
フレンドリー

フレンドリー

新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るうようになり、社会全体が自粛ムードに包まれてしまうこともあった。そんなときからだろう。日本に定着している“空気を読む”といった独自の文化が時に“同調圧力”へと変貌を遂げてしまう様子を、主にSNSで見かけるようになった。気晴らしのつもりで呟いた内容でも、批判や否定をする声がしばしば見受けられる。また、そのような投稿者に対する、不満や怒りの声も後を絶たない。そんな日常になってしまった今を反映しているように思ったのが、サカナクションの「フレンドリー」である。「正しい 正しくないと 決めた虚しさ そう 真っ暗になる」や「左右 行ったり来たりの 水と泥の淀」といったフレーズは、そうしたSNSで行われるやりとりを表現しているかのように感じ、一郎さんは互いの相違点をも認め、尊重する大切さをやんわりとこの曲で“主張”しているように思ったのだ。この曲を「フレンドリー」と名づけた背景には、そういった一郎さんの優しさが反映されているのではないだろうかと思っている。

4s4ki「Punish」

ハイパーポップアーティストとして取り上げられることも多い4s4kiだが、そうカンタンに紹介してしまうのは野暮のように思う。というのも、“ハイパー”も“ポップ”もポジティブなニュアンスを持つワードであり、4s4kiが内に抱える“負の感情”の部分を無視してしまっているように感じるからだ。4s4kiはそうした“陰”、それからエレクトロやトラップ、ポップスなどの“陽”を感じさせる明るめのサウンドも混ぜ込んだ楽曲をリリースしているからこそ、国境を越えて、さまざまな人の心を掴んで離さないのだろう。だからこそ、いまのところ4s4kiにしっくりくるワードが無いように思うのだ。

今回マイベストに選んだ「Punish」は一見、ネガティブな“顔”が全面に押し出されているように感じるが、間奏パートでは思わず踊りたくなってしまうような、ドラムンベースダブステップなどの“陽”を感じるサウンドも混ぜ込んでいるところがおもしろい。体調不良になって響くものが多かった、4s4kiの歌。とりわけ“地獄”の中でも“篝火”を求めるという、まさにいま抱えるネガティブな感情に共鳴した「Punish」をセレクトしたが、4s4kiの創る音楽にはいつだって弱りきった心に寄り添ってくれるやさしさがあるように感じる。

Lucky Kilimanjaro「地獄の踊り場」
地獄の踊り場

地獄の踊り場

  • Lucky Kilimanjaro
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

コロナ禍や戦争など、ここ最近の世の中はどんよりとした空気に包まれているように感じるのだが、その時々の時代背景や自己の内面と向き合いつつも、「世界中の毎日をおどらせる」というテーマが決してブレることのないバンド・Lucky Kilimanjaroは、どんなに暗い気分でいても心を躍らせてくれる。そう感じたのが「地獄の踊り場」である。ボーカル・熊木幸丸が「いつだって強くない いつだってギャルじゃない 誰だって地獄があって 抜け出せない闇があるでしょう」と弱った心にやさしく語りかけるように歌うその声には思わず頷きたくもなってしまうが、その上で「そんな気分 あっていい気がして」と何度も肯定してくれるのだ。本能のままに“踊る”ためには、自分の弱さを認めないのではなく、受け入れてはじめて自分の心の赴くままに“踊る”ことができるのではないだろうか。最初は“不器用な踊り”になってしまうかもしれないが、自分の本心に向き合いながらも“踊る”ことで、やがて本来の“自分らしい踊り”を取り戻すことができる気がした。

THE ORAL CIGARETTES「BUG」

開始早々、クセになるリズムパターンを刻んだ電子音の“光線銃”をこれでもかと放ちまくる、オーラルの「BUG」。その間およそ50秒と非常に長く、パッと思い浮かんだイントロの長い曲の中でも、アジカンの「Re:Re:」以上、浜崎あゆみの「Mirrorcle World」以下を記録している。しかしながら、最初の電子音に次々と重なるようにして女性のボイスや楽器隊のサウンドが乗せられていくさまは、その長さを感じさせない。それどころか、大変ワクワクさせられるのだ。そんな印象的なイントロを持つ「BUG」だが、この曲から感じたのはおかしくなった世界にがむしゃらに抵抗しているようなロックスピリットである。これまでロックチューンで攻めることの多かった彼らが、電子音という新しいサウンドを取り入れながらも、やはり魂の部分ではロックをかき鳴らす。そんな姿勢がたまらなくカッコよいのである。また、コロナ禍以降のバグった世界でも、オーラルは新しい方法をもって理想的な未来や観たい景色が創れることを先導して証明してくれているように感じた。

chelmico「ISOGA♡PEACH

chelmicoがリリースしたアルバム『gokigen』の中で、とりわけ気に入っている曲が「ISOGA♡PEACH」である。可愛らしいサウンドとは裏腹にネガティブな感情が爆発している歌のちぐはぐさは、まさに忙しすぎて混乱している人の脳内そのもの。時折聴こえる木琴のような音も入ったそのピコピコとしたサウンドは一見“ゆめかわいい”ようにも感じるが、歌をじっくりと聴いた上で再生してみると、鳴り止まない携帯の着信音のようにも聴こえてくる。この曲で“私”が「スケジュールと格闘 いつ空いているの?って そりゃ会いたいよ 私も同じよ」「来週また来週毎度リスケです。」と言っているように、休日も返上して働いているのだろうかとすら思えてくるのだ。

そんな忙しさを曲にした「ISOGA♡PEACH」からは、“本当にご機嫌ですか?”というchelmicoからの“問い”が聴こえてきそうだ。働き方改革を実施している企業が多いとはいえ、サービス残業や休日出勤が“当たり前”だからとそれらを行ったり、周りが頑張っているからと自分も合わせたりと、働き方に対する意識が変わっていない人も決して少なくない。仕事を頑張ることはひとつの“正義”なのかもしれないが、自分を“gokigen”にすることも立派な“正義”であると堂々と胸を張って言える社会に世界全体がなっていってほしいと願っている。そしてそう考えているのは、chelmicoも同じのように思うのだ。

NEE「本日の正体」

「本日の正体」が流れ始めて、わずか5秒足らずでNEEだと分かる。そんな特徴的なサウンドこそがNEEの“強み”だと思っているのだが、この曲のもうひとつの魅力はその歌詞にあると思っている。曲中の“僕”が度々口にし、曲名にもなっている“本日の正体”の意味や解釈は婉曲的に書かれているため、リスナー一人ひとりの判断に委ねられているように感じるのだが、おそらく“僕の弱さ”のことを指しているのではないだろうか。人に嫌われるのが怖い自分、自分は間違っていないと疑わない自分、愛されたいだけの自分など、時に臆病になってしまうがゆえに出てきてしまう人もいる“さまざまな弱さ”を“僕”が代弁しているように感じるのである。だからこそ、“本日の正体”は“いつでも目の前で泣いている”上に、“誰よりもソッと静かに見守るの”であって、“確かに僕の内側でまだ 臆病に脆く弱く生きて居る”ものであるとも思うのだ。

[Alexandros]「Baby's Alright」

昨年放送されたドラマ『六本木クラス』の主題歌を担ったのが[Alexandros]で良かったと思うのである。炎上騒動や改名、元ドラマーの“サトヤス”こと庄村聡泰の“勇退”など、いろいろ経験してきた彼らだからこそ、『六本木クラス』で竹内涼真さん演じる宮部新がリベンジを果たすべく奮闘する姿と、どこか重なっているところがあるようにも感じたのだ。プロデューサーはドロスのファンなのだろうかと思ったほど、ドロスにこのドラマの主題歌をオファーしたのはあまりにも優秀なように感じただけでなく、そのプロデューサーの期待にちゃんと応えているドロスもまた流石だと言いたい。アーティスト側がドラマの世界にどっぷり染まった主題歌を提供していることも少なくない中、両者の世界観が合致したような「Baby's Alright」は、ドラマを観ていない人も、バンドをあまり聴かない人も楽しめる、“いいとこ取り”ができる楽曲のように感じた。そんなこの曲は、昨年リリースされたドラマ主題歌の中で、個人的ナンバーワンを誇っている。

Fear, and Loathing in Las Vegas「Get Back the Hope」

友だちと気軽に逢えない、ライブもできないなどの、これまでの我慢だらけの日々に対するストレスや鬱憤を一気に爆発させ、加速していくようなアグレッシブさを持っているのが、この曲。アルバム『Cocoon for the Golden Future』の1曲目に収録された「Get Back the Hope」である。それもそのはず。ベガスはおよそ3年間、アルバムをリリースしてこなかったのである。血がたぎっているのも納得できるだろう。そして、この曲は内に溜め込んだ不満を解き放っているだけでなく、「Take back that was ours(意訳:私たちの日常を取り戻せ)」「Don't need to make a stop Just keep running(意訳:止まる必要などない、走り続けろ)」とリスナーを鼓舞してもくれるのである。この3年間でしぶしぶ抑えてしまった“衝動”や“想い”を着火させていくような力強さがあるこの曲は、きっと一人ひとりのリスナーの心も突き動かしてくれるのではないだろうか。

ジェニーハイ「超最悪」

ジェニーハイが“強い女性”をテーマにした曲は、これがはじめてなのではないだろうか。例えば「華奢なリップ (feat. ちゃんみな)」では、傷心中の“私”が赤いリップを塗ることで強くあろうとする女性らしい姿が描かれているが、最後に彼女が「強くなるから」と言っているように、強がっているだけで決して強くはないことが伝わってくる。また「ダイエッター典子」では、スタイルが良い女性を見ていたパートナーに対し、「すっとぼけてんじゃないわよ」「あんた他の女見てたでしょ」とお怒り気味のその口調は強いものの、ダイエットのやる気が出ずに、最後は「タピオカ摂取できないよりは できる幸せを掴みたい」とタピオカ大好きな“私”が自分に負け、ダイエットを諦めてしまう姿が描かれている。

そんな中、ジェニーハイが「超最悪」で放ってきたのは、どんな逆境に立たされようとも決して負けない、不屈の精神を持った強い女性だ。冒頭から「何で私だけ詰んでるの でも負けねえ負けねえふざけんな」と吠える、ボーカル・イッキュウさんのパンクな歌声からも既にひしひしと伝わってくるように、この曲に登場する“私”は“負の感情”を抱けば抱くほど、それをたちまち原動力へと昇華させてしまうようなロックンロールスピリットを持っている。この曲をもって新たな一面をさらけ出してきたジェニーハイから、ますます目が離せなくなりそうだ。

水曜日のカンパネラ一寸法師
一寸法師

一寸法師

水曜日のカンパネラの音楽担当・ケンモチヒデフミ。彼の魅力は何と言っても、昔話やおとぎ話に登場する人物から歴史上の偉人まで、ある特定の“人”についてさまざまな想像力を膨らませながら作詞しているところだと思うのだが、xiangyuやfemme fataleの他、これまで多くのアーティストのサウンドプロデュースを手掛けてきた中で、詩羽ちゃん率いる“新生”水曜日のカンパネラがスタートするまで、その彼の“得意分野”である人物をテーマにした楽曲は提供していないところが非常にポイントの高いところだと思っている。2021年にリリースされたシングル「アリス / バッキンガム」や「招き猫 / エジソン」で、改めてケンモチさんのその“強み”に気づかされたが、収録曲の半分以上が人物を占める昨年のアルバム『ネオン』でそれが確信へと変わった。

今回ピックアップした「一寸法師」では、およそ3.03cmの小さな主人公が5人おり、「一寸暴威(一寸ボーイ)」と名づけたアイドルグループをやっているという、『御伽草子』の作者もひっくり返るような、斬新なストーリーが描かれているのだ。題材となった人物を増やすといった新たな試みがおもしろいだけでなく、一寸暴威のメンバー一人ひとりが持つ熱い魂と、芯の強さを感じる詩羽ちゃんの歌声、それからグルーヴ感のあるサウンドが重なり、最高のハーモニーを生み出しているように思っている。アルバム『ネオン』の中でもひと際魅力が光り輝いているように感じた1曲だ。

終わりに

愉しんでもらえただろうか。

最後に目次を記しておくので、気になった曲はぜひ聴いてみてほしい。

今年もよろしくお願いします。