ミュージック バンク

ミュージック バンク

感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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夜と私――部屋で踊る不器用な踊り

周りを見渡せば、エンタメを現場で楽しんでいる人がいる。ライブやフェスに参加したり、映画を観に行ったり。とにかく、みんな楽しそうだ。

それもそのはず。今ではだいぶ新型コロナウイルス感染対策の緩和が進んできているため、公共の場でのマスク着用などのルールを守ってさえいれば、何も問題ないのである。少し前の、社会が向ける厳しい目が嘘だったかのように、一人ひとりが想い想いの時間を楽しんでいるのだ。

しかしながら。何らかの理由でそれが叶わない人も、少なからずいると思うのだ。そして、実は筆者もその一人。原因はいろいろとあるのだが、長引く体調不良により容易に外に出られないという状況が続いているのである。

今回は筆者とおんなじような立場に立っている人に向けて、その時々の時代背景や自己の内面と向き合いつつも、「世界中の毎日をおどらせる」というテーマが決してブレることのないバンド・Lucky Kilimanjaro(以下、ラッキリ)の楽曲を紹介していきたい。どんなに暗い気分でいても、彼らの音楽はきっと君の心を躍らせてくれるはずだ。

“お家”時間も楽しく――ラッキリが掛ける魔法

現場でエンタメを味わう良さを知ってしまっている筆者にとって、腹痛などの理由からお家時間を過ごしているのは、嫌々であったり、渋々であったり。どうしても“負の要素”が強かった。そんな考えを改めさせてくれたのが、ラッキリの「HOUSE」である。

HOUSE

HOUSE

  • Lucky Kilimanjaro
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲を聴いていると、お家時間も不思議と悪くないと思えてくるのである。「HOUSE」はもともとコロナ禍に入る前の2019年にリリースされた曲でありながら、インドア派を肯定しているかのような楽曲となっているため、今、何らかの理由でお家時間を過ごす必要がある人たちにも刺さるような内容となっているのだ。

インドア派の主人公は、“部屋のプロフェッショナル”だ。旅行に行かなくとも、WEBから世界へと片手一つで旅をできる術を知っている。そして、彼は“ジャンボジェットもいらないし、高速道路も混まない”と楽観的なのである。

さらには、溜めていた漫画に浸ったり、Spotifyからラッキリを聴いたり。はたまたNETFLIXを楽しんだりと、自由自在。彼は夜の12時を回っても“まだまだ終わらないぜ”と、気が済むまで彼の世界にどっぷりと浸って自分の時間を楽しんでいるのだ。

その時間の使い方と彼のポジティブ思考は、まさにプロそのもの。嫌々お家時間を極めているわけではなく、“ここから出ない”と決めてお家で好きなことをして楽しんでいる姿には、衝撃を受けずにはいられなかった。今の私に必要なのは、その“楽しむ精神”なのではないだろうかと思ったのだ。

魔法はいつか解ける――そんな気分、あっていい気がして

どんな逆境にいようと、それも楽しめる人になりたい。そう、「HOUSE」は思わせてくれたのだが、時々、自分の弱さに飲まれてしまいそうになることもあるだろう。ラッキリは時にそんな気分も肯定してくれるのだ。それが、この曲。「地獄の踊り場」である。

地獄の踊り場

地獄の踊り場

  • Lucky Kilimanjaro
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ボーカル・熊木幸丸が“いつだって強くない、いつだってギャルじゃない、誰だって地獄があって、抜け出せない闇があるでしょう”とやさしく語りかけるように歌うその声には思わず頷きたくもなってしまう。その上で“そんな気分、あっていい気がして”と何度も肯定してくれるのだ。

そんなにタフじゃない――そんなあなたに掛ける、信じるという魔法

寂しさや悩みに襲われてしまうことだってあるだろう。また、現場で楽しんでいたあの頃の自分を思い浮かべると、なんだか悲しくなってしまうことだってある。そんなときには、ラッキリはこの歌を贈ってくれる。「夜とシンセサイザー」だ。

夜とシンセサイザー

夜とシンセサイザー

  • Lucky Kilimanjaro
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

“寂しい夜、続くね、描いてた地図、覆されちまって”という歌いだしは、まるで現状に満足していない私たちの心そのものだ。ラッキリは弱者の心にもちゃんと寄り添ってくれるのである。

しかし、そこで立ち止まらずに進みたいのが本音だろう。“過去の宝は棄てて、砂漠の先、まだ見ぬ未来”と何度もリフレインされているところからは、私たちが頑張って前を向こうと努める姿も表現しているのだ。

“砂漠”なので、まだそこには希望が見えないかもしれない。そんな寂しさや不安に襲われながらも、その先の“まだ見ぬ未来”を見たい。その想いは誰もが持っているのではないだろうか。

 

ラッキリは“負の感情”も原動力に変えられることを知っているからこそ、「地獄の踊り場」や「夜とシンセサイザー」などの楽曲で、心の闇を描きつつも、それらの感情も肯定しているように感じる。こうして体調不良をネタにこの記事を書いて昇華しているように、ネガティブな感情は必ずしも悪でないのだ。

時には「地獄の踊り場」や「夜とシンセサイザー」のようにネガティブな感情に浸ったり、時には「HOUSE」のようにお家時間を楽しんだりしながら、感情の波を乗りこなし、夜が明けるまでしばらく不器用な踊りを繰り広げていたい。

【On the treat Super Season】“おすしとスサシ”から見る、無限の可能性

いま推している“おすし”こと、アイドル・On the treat Super Season。

メンバーそれぞれが異なる個性を放ちながらも、一人ひとりの“旨味”が美味しく溶け合うパフォーマンス。それから病みつきになるメロディやサウンドは、聴くものをたちまち笑顔にしてしまう、まさに素敵な“ご馳走”だと思っている。

そんなおすしが8月18日。「宗教法人いぇいいぇい教」という楽曲を配信リリースした。この曲は“スサシ”こと、SPARK!!SOUND!!SHOW!!のたくま、タナカユーキが提供した楽曲なのだが、“おすしとスサシ”もこの曲で3回目。1回目の「ばきゅーん。」、2回目の「超超超」に続くこの曲は、もはやすっかり人気曲だ。

違和感を覚えた、ちゃんさき氏

いまとなっては“おすしとスサシ”も受け入れられるようになった自分がいるのだが、第1弾の「ばきゅーん。」を聴いたときの率直な感想は、あまりよろしくないのではないだろうか、というものだった。

「我々は銃刀法に抵触します」。そんな衝撃的な宣言から始まり、さらには「脱法アイドル」を名乗る。曲名から想像を広げたような歌詞となっている「ばきゅーん。」のやや過激な歌に面食らってしまったのだ。

第2弾の「超超超」は自分と重なるところも多々あり、共感できる部分が多かったからか、リリース当初からすんなり受け入れることができ、気に入ってもいる。

現在、あまり調子のよくない状況が続いている筆者にとって、まさに“調子の賞味は生物”であり、“調子って続かない”と思うことが多い。そんな不調が続く自分の影を、「踏み付ける」と歌うところでメンバーと一緒に飛び、踏み付けていくのだ。

まるで体調不良の原因を根本から消滅させたかのごとく、爽快な気分になれるこの曲を繰り返し聴くうちに、第1弾の「ばきゅーん。」で示してしまった拒否反応もだいぶ和らげることができた。

しかしながら、今回。第3弾となる「宗教法人いぇいいぇい教」ではガッツリ時事ネタを取り入れているあまり、またもや胃もたれすることとなってしまった。歌詞の衝撃が大きかったあまり、果たして大丈夫なのか、という不安が再び膨らんでしまったのである。

あまりに攻めているように感じたため、なんとなく炎上しそうで怖かったのだ。推しているからには、やはり正しい注目のされ方で売れてほしいと思っている。そんな愛ゆえの心配をしていたのである。

考え方を変えた、ホルモンの存在

そして、ここ最近の話だ。新聞を読んでいると、宗教関連の記事で“ポア”という言葉が登場。思わず、マキシマム ザ ホルモンの「「F」」が脳内再生されることとなった。

※公式も公認(?)しているMAD動画

 

この曲は『ドラゴンボール』に登場するキャラクター・「フリーザ」を表すアルファベットの頭文字を取っただけでなく、フリーザに弾圧されているナメック星人、それから“ウイグル問題”こと、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧など、実際に世界各地で巻き起こっている民族弾圧に対しての“「フリーダム」(彼らに自由を!)”を訴えている曲である。

ウイグル問題”は、昨年、世界のアパレル企業がウイグル族を強制労働させているとして問題になったことでも、記憶に新しいだろう。

そして「「F」」は「フリーダム」を訴えていながらも、歌詞だけではそのメッセージ性が伝わってこないのである。むしろ、歌詞だけではフリーザの残虐性と、凶悪事件を引き起こしてしまった某宗教の“ポア”という教えを掛け合わせた歌、という情報しか伝わらないと思うのだ。マキシマムザ亮君の言葉があって、はじめて正しく理解されるといっても過言ではないだろう。

このことを念頭に置いて、改めておすしの「宗教法人いぇいいぇい教」を聴いてみたところ、歌詞には書かれていないことが言いたいのではないかと思ったのだ。おすしもスサシもそれについては言及していないため、ハッキリとは分からない。そこは各自の想像力に任せているということなのだろう。歌詞重視だった筆者の考えが一気に覆された瞬間である。

固定観念を外して見えた、新しい思考

“脱法アイドル”になったり、“spa dupa woman”だったり。はたまた“女神”に例えたり。おすしには、何にでもなれる自由さや無敵感があることに気づいたのだ。いまとなっては“おすしとスサシ”には、まるで“なりたい自分になっている自分、最高”という肯定的でポジティブなエネルギーがあるようにも感じる。

勢いもありつつ、メッセージ性もひしひしと感じることのできる、デビューEP『OSS : first flash paranoia』から好きになった人は、筆者と同じように「宗教法人いぇいいぇい教」に面食らった人もいるかもしれない。しかしながら、今回。彼女たちが「宗教法人いぇいいぇい教」をリリースしたのも、“旬のご馳走”を掲げているからこそだろう。

どうやら私は、要らぬ心配をしていたようだ。

彼女たちの“コア”はきっと変わっていない。

宗教法人いぇいいぇい教

宗教法人いぇいいぇい教

  • On the treat Super Season
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

時空を超える「Super Ocean Man」から感じた、banvoxの固い意思

banvoxがダンスミュージック界を率いる日本人スターのひとりだという人がいたら、それは半分正解であり、半分違うと思う。彼はもっと自由なのではないか――。

“ジャンルや型に縛られたくないんですよ”。以前どこかで読んだインタビューでそう話していたbanvox。ダンスミュージックを中心にさまざまなアプローチを試みてきた彼は、ここ数年ではヒップホップに挑戦するなど新たな一面を魅せてきた。しかし、思えばそれは今に始まったことではない。2014年にリリースされたファーストアルバム『Don't Wanna Be』から、彼は自由自在にサウンドを操ってきた。

Don't Wanna Be feat. Jordan Morris

Don't Wanna Be feat. Jordan Morris

  • banvox
  • ダンス
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

例えば、ファーストアルバムの表題曲「Don't Wanna Be」では、ゆったりとしたR&Bテイストから曲が始まるといったジャンルを超えたアプローチを試みている。しかし、次第にダンスミュージックへと変貌を遂げるというトリックが仕掛けられており、そこがこの曲をおもしろくさせているように感じたのだ。まさに固定観念に縛られたくないといっているかのような曲である。

そして、その固い意思が揺らいでいないように感じたのが、今から2年前の2020年にリリースされたアルバム『DIFFERENCE』だ。ヒップホップコンセプトで制作された同アルバムは、これまでのテイストから大幅に方向性を変えたことで世間をざわつかせたものの、やはりその根底にあるのは自由に自分の想う世界観を表現したいということに尽きるのではないだろうか。アルバム収録曲の「Stay The Night」では、banvox本人がラップを披露している。

Stay The Night

Stay The Night

  • banvox
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

同アルバムはiTunes HIPHOPジャンルのアルバムチャートで1位を獲得するなどの快挙を成し遂げていたのだが、どうも筆者にはピンと来なかったのである。というのも、これまで人気を集めてきたダンスミュージック要素が無かったからだ。

しかしながら、今回の「Super Ocean Man」は違った。6月3日にリリースされたばかりのTohjiの最新アルバム『t-mix』に収録されているこの曲は、ヒップホップとダンスミュージックの垣根を軽々と越えてくる。それも、どちらか一方に偏ることなどなく、ヒップホップとダンスミュージックが手を繋いで仲良く共存しているのである。

Super Ocean Man

Super Ocean Man

  • Tohji & banvox
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

喧嘩することなくやさしく溶け込むそのハーモニーは、季節を超えるチカラもあるから不思議である。時は既に夏なのだ。しかも、感染症対策が始まる前の、何も規制が無かったあの頃の自由な夏の訪れを感じさせてくれるチカラが宿っているように感じた。徐々に“あの頃”を取り戻しつつある今、この曲は希望を見出してくれるのである。

そして、今回。banvoxはラップを披露するプレイヤー側ではなく、サポーターのようなプロデューサーの立場に回っている。一度、「Stay The Night」でプレイヤー側を経験しているからこそ、活かせているものも多いのではないだろうか。

「Super Man」とTohjiが歌うところで、疾走感のあるドクドクと胸を打つビートが流れるパートでは、まるでTohjiが大空を飛んでいるかのように感じさせるなど、banvoxは“Super Ocean Man”であるTohjiの歌を、美しく彩っているのだ。

また、この曲のおもしろさはその歌詞にある。「世界中股にかけたい 世界中股にかけたい 大事なことは2回言うタイプ 大事なことは2回言うタイプ」と、Tohjiにとって“大事なこと”を2回繰り返しているだけでなく、「大事なことは2回言うタイプ」というセリフまで2回リフレインしている遊び心のあるパートには、思わずクスリと笑ってしまうだろう。

さらには「嵐みたい ニノ」と嵐の“ニノ”こと二宮和也をさりげなく歌詞中に登場させているところにも、ワードセンスを感じた。それでいて、曲全体を通して揺るがない自信や信念のようなものを感じさせるところには、思わず胸を打たれるものがあるのだ。

とにもかくにも、しばらく耳を離せずにいられなかった「Super Ocean Man」。今思えば、アルバム『DIFFERENCE』はこの曲を作るための伏線のようなものだったのではないかとさえ思えたのだった。banvoxが本当にやりたかったのは、これだったんじゃないのか――。

“ジャンルや型に縛られたくない”というファーストアルバムからの意思は、今も彼の中で生き続けているのだろう。これからも“自由形”のスタイルで、音楽業界の波を泳いでいってほしい。カタチにとらわれないスタイルで魅力するbanvoxには、終始、感心させられっぱなしである。

WurtSの「SPACESHIP」から見る、“慢心”との戦い

初めて聴いたときから深みがあるように感じた、WurtSの「SPACESHIP」。

そして何度も噛みしめるうちに、さまざまな“旨味”を味わうことなったのだ。

やはりこの曲には魅力がたんまり詰まっている。そう確信した瞬間だった。

そして、この曲がNHKのパラスポーツアニメ「スノーボードクロス編」のテーマ曲として書き下ろされたものだと知り、さらに感心することとなる。

今回は、そんなWurtSの「SPACESHIP」について、独断と偏見で綴っていきたい。

SPACESHIP

SPACESHIP

  • provided courtesy of iTunes

WurtS「SPACESHIP」自己解釈

歓声から始まるイントロはまるで波の音のようにも聴こえ、歌詞には旧約聖書の『創世記』で描かれている「バベルの塔」も登場する。そして、そうした“波の音”や「バベルの塔」からは、自然と「ノアの方舟」も連想されるのではないだろうか。

まずは、そんなふたつのストーリーを振り返ってみよう。人々の慢心に満ちた世界を終わらせるために、神が洪水を起こしたという「ノアの方舟」のストーリーは有名だろう。ノアは神のお告げにより作った方舟に人や動物などを乗せ、40日間もの漂流をしたのち、アララト山に漂着して助かったとされている。

そして、その後。世界各地に住み始めた人々が自分たちのために名を上げようと、新しい技術を用いながら、神よりも高い、天まで届く塔を築き上げようとするのである。怒った神は塔を崩し、さらには同じ言葉を使用しているがゆえにこのような事態を引き起こしたと判断したため、二度と同じような状況を招かないためにも、言語もバラバラに散らしてしまう。そんなよく知られた「バベルの塔」のストーリーが続くのだ。

これらのお話を踏まえた上で、この曲のタイトルを振り返ってみてほしい。曲名は“宇宙船(SPACESHIP)”である。「バベルの塔」で目指していた天を突き抜け、宇宙まで到達できる飛行船。「大胆に開幕だ 乗り込めよ SPACESHIP」という“開幕宣言”のあと、まるで「ノアの方舟」のようにみんなを乗せて、宇宙を浮遊しているような間奏に突入していくイメージが浮かぶのではないだろうか。そんな新たなストーリーが展開されているのだ。

さらに、最初の間奏に入る直前にどこからともなく聴こえてくる「damn」のような言葉、さらには間奏中にも聴こえてくる「human」のようなワードは、神の発言のようにも聴こえるのではないだろうか。

バベルの塔」では天と地を繋ごうとした塔を崩すことに成功した神だったが、まさか新技術を用いて天をさらに上回る高さまで到達できるロケットを開発するとは思いもしなかったのだろう。「damn」は英語のスラングで「クソ!」や「畜生!」といった嫌悪感を示す意味のほか、驚きや感心を表す意味でも用いられている。神はおそらく、両方の意味を兼ねて「damn」とポツリ、さらには「human(人間よ)」と呟いたのだろう。

“慢心”との戦い

ノアの方舟」も「バベルの塔」も、人々の“慢心”に対する戒めとして描かれたストーリーである。しかしながら、曲中で描かれている“僕”からはあまりそれを感じない。感じたのは、適度な自信だった。というのも、もし自信過剰で周囲を敵に回すようなことをやってきた、慢心している人であったならば、“YOU BREAK YOUR WAVE”といった人々の応援にも似た歓声は聞こえてこないと思うからである。

“僕”はどんなに腕が辛くても、自分の感覚を研ぎ澄ませながら、“大海を目指す”という目標を達成するために今まで漕ぎ続けてきたのだ。これまでの経験から来る自信。それを周りは知っているからこそ、“僕”は応援されているのだと感じた。

そして、それはスポーツの世界でも同じことが言えるのではないだろうか。例えば、世界中で人気を誇る大谷翔平選手。世界最高レベルの“二刀流”をこなす持ち主でありながら、決して慢心せず、いつも楽しそうに試合をしている。また、グラウンドに落ちたゴミ拾いをするなどの小さな心遣いも忘れない。そうした姿勢を持っているからこそ、彼は世界中の人々から愛されているのだろう。

WurtSは、NHKのパラスポーツアニメ「スノーボードクロス編」のために曲を書き下ろすことが決まった際、大谷選手のようなアスリートの理想像も思い浮かんだのかもしれない。一方で、スポーツの試合を観ていると、中には優勝確実とされていた選手やチームが格下の相手に負けてしまう光景も時々見られる。そして、試合後のインタビューでは“慢心したために負けてしまった”と答えているところを見たことがある人も少なからずいるだろう。そんな慢心に対する注意を促すためにも、「ノアの方舟」や「バベルの塔」のストーリーも取り入れたのではないだろうかと考えさせられた。

“慢心”との戦い――。それは何もスポーツ界だけの話ではない。中には上手くいくとやや自信過剰になり、失敗してしまうことが多々ある人もいるだろう。また、程よい自信ならよいとは思うが、中には自分が正しいと信じて疑わない人も見かける。それで、孤立してしまう人も見てきた。私たちの日常にも潜んでいる、慢心の影。なんとか上手く付き合っていきたいものだ。

【On the treat Super Season】“おすし”の旨味をご堪能あれ!

病みつきになるハードコアなサウンド、クセになる歌詞、個性的なメンバー、魅せるパフォーマンス、それから多幸感に満ちたフロア――。

どこをどう切り取っても魅力にあふれている、アイドル・On the treat Super Season(通称:OSS。おすし)に、いま夢中である。

今回は、そんなおすしについて自由に語っていきたい。

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昨年のとある夏の日。“おすしハードコア”という謎めいたワードをコンセプトに掲げ、彗星のごとく現れたおすし。

グループ名を表す“おすし”、それから音楽ジャンルのひとつである“ハードコア”といったふたつのワードを掛け合わせることによって生み出されたその造語からは、まるで“おすしをはじめとする新たなムーブメントを作っていきたい”と言っているかのような、プロデューサーの熱い想いが感じられた。

そして、そんなプロデューサーの意気込みや期待に応えるかのように、クリエイターたちが思うそれぞれの“おすしハードコア”を表現しているように感じたのが、デビューEP『OSS : first flash paranoia』だった。

このデビューEPでは、1曲目に収録された「shake it now!!!!!!」から気合いの入った音の洪水が押し寄せてくる。そして、そのまま「SuperShow」「heartbeat」へとバトンタッチ。悪戯に微笑む重厚なサウンドで心を揺らしていく。

続く「brand new days」は、縦ノリビートから始まるイントロ、それからお経を彷彿とさせるキャッチーな早口言葉や、ギターソロからのスラップベースを華麗に響き渡らせるパートも挟む、筆者お気に入りの1曲だ。

その後は、おすしへの愛を遊び心たっぷりに告げる「SUSHILOVE」。そして、“これから”への決意みなぎる「RUN」で締めくくられるのだが、サウンドはもちろん、ワードセンスが炸裂したこだわりが詰まっているように感じる歌詞も、おすしの魅力のひとつだと思うのだ。

それぞれ異なる色を放つ、バラエティ豊かなハードコア作品が揃う同EP。未知のコンセプトでありながら、制作陣の妥協や迷いをいっさい感じさせない。それどころか、彼らの激しく燃え上がる創作魂がひしひしと伝わってくる。そんな想い想いの“おすしハードコア”が表現された、素敵な作品のように感じたのだった。

 

そんなおすしの魅力がいちばん輝いているのは、やはりステージの上だと思っている。

現場では、サウンドと歌詞が堪能できるだけでなく、パフォーマンスや表情といった、サブスクにはない魅力も感じられるからである。さらには、その日によって歌声やMCで伝えたいことなども変わってくる。それは、コンビニで買って食べるよりも、お寿司屋さんでいただいたほうが美味しく感じるのとどこか似ているだろう。

メンバーは、天ちゃん(海老原 天)、みらいちゃん(小熊みらい)、にいなちゃん(仁木 新菜)、まなみちゃん(まなみ)、麦ちゃん(麦)、せなちゃん(結凛せな ※読み:ゆいり)の6人。

一人ひとりの個性も魅せ方も異なる魅力的なメンバーが揃っているあまり、目が足りなくなるなんてことも少なくない。思わず何度も“おかわり”したくなる魅力が、そこにあるのだ。

 

そして、ファンも温かい人が多いように思っている。例えばそれは、同じプロデューサーが運営しているアイドルグループ・PRSMINとおすしがコラボしたライブ・プリズム寿司、それから生誕祭で感じることができるだろう。

振りコピをしながら、他の人に手が当たってしまったときはちゃんと謝罪する。MCでメンバーが何か語ってくれる際は、後ろをいったん振り返り、周りの人に配慮しながらしゃがむ人の姿も見られるなど、周囲への心遣いも忘れない。

“当たり前”に見えて、これができていない人は、フェスなどで散見されるだろう。しかし、そうしたファンの心配りもあって、アットホームな空間をより快適に楽しむことのできる遊び場が作られているように感じている。

また、楽しみ方もみんな自由だ。振りコピをしている人もいれば、楽しそうに身体を揺らしながら聴いている人、推しジャンしている人もいる。一人ひとりが自分なりの楽しみ方で一瞬一瞬を噛みしめている。そんなフロアの様子からは、幸せを感じることができるだろう。

 

デビューしてからもうすぐ7ヶ月が経とうとしているおすし。およそ7ヶ月という短さにも関わらず、彼女たちの成長は凄まじい。

それは、次々とリリースされていく「burst」や「stay glow」、「NeverNever」や「moving」、それから「signal」などの新たな曲を披露するたびに感じることができるだろう。歌い方が上達していたり、表情が豊かになっていたり、ダンスも上手くなっていたりと、そのパフォーマンスだけでも着実に磨きがかかっているのだ。

そんな魅力たっぷりなおすしを、これからも応援していきたい。

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