ミュージック バンク

ミュージック バンク

感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

MENU

岡崎体育の“胸の BASIN TECHNO の文字は消えることはない”! SSAで魅せたロックスピリット

最高にロックな時間だった。

かねてからさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブを目標に掲げてきた、シンガーソングライター・岡崎体育

7年前から見続けたその夢を、6月9日、ついに現実にする日がやってきた。

この日、岡崎体育は18,000人もの観客を集客することに成功し、一人ひとりを彼のユニークな世界観へと引き込んでいった。

ライブのタイトルは「BASIN TECHNO」。自らの音楽スタイルとおんなじ名前だ。岡崎さん自身を表すのにぴったりのタイトルだと思った。

ついにやってきた“その日”

オープニングでは、岡崎体育のシルエットが大きく映し出され、胸のあたりに「BASIN TECHNO」の文字が一文字ずつレーザーでくっきりと描かれていく。

岡崎さんが、何度「いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対」と公言してきたかわからない。少なくとも私は岡崎さんのライブに行くたんびに、何度もその夢を岡崎さんに“説明”されてきた。“説明”されるたんびに、応援してきた。私も夢を追いかけているからこそ、絶対に岡崎さんに叶えてほしかった。

そして、“その日”が来るのがどれだけ待ち遠しかったかわからない。それは、もちろん岡崎さんもそうだろう。岡崎さんがいちばんそう思っているのに違いない。

映し出された影法師がなんとなくそれを物語っていた。岡崎さんが片手に持っていたマイクに相当な力が込められているように感じた。

そして、岡崎さんが登場すると、彼は力強く叫んだ。

「夢を叶えに来ました!」

自然と笑みがこぼれる。気づけば、拍手にも一段と力が入っていた。

“この日”だけのスペシャルパフォーマンス

岡崎さんはこの日、サイレントパフォーマンスを繰り広げたり、宙を舞ったり、原付バイクでステージを走り回ったり、ディズニーのエレクトリカルパレードを彷彿とさせるトロッコで会場を1周したりと、この日だけのスペシャルなパフォーマンスも多々見せてくれた。

他にも、スタッフに扮していた藤木直人さんがステージに登場したり、エノキで周囲を飾り付けられた中央ステージでお友だち・てっくんがメジャーデビュー曲「フェイクファー」を披露したり、だいぶ早いバースデーケーキが突然出現して引っ込んだりと、さまざまなサプライズがあった。

岡崎さんが好きなことをとことん、笑顔で、楽しそうにやっていた姿は、私にはとても輝いて見えた。夢を叶える人は、周りの人に夢を見させてくれる人なんだと思った。

岡崎体育から学んだこと

だが、岡崎さんはいつも通りのことをいつも通りやっているだけだと言っていたことが忘れられなかった。いつも通りのことをいつも通りやることというのは、そう簡単なことではないように感じる。

MCで、岡崎さんは会場を指差しながら、ひと区画を集めるにも5年かかったと言っていた。5年前は1人か2人のお客さんしか集まらなかったそうだ。

また、チケットの予約数が100人という目標を到達してよろこんでいたものの、当日台風が直撃してしまった日のことも明かしてくれた。最終的には90人近くのお客さんが来てくれたことがうれしかったと話し、感謝していた。

悲しそうな表情もいっさい見せずに、淡々と語っていた。岡崎さんに凛とした強さを感じた瞬間だった。当時から自分なりのパフォーマンススタイルを貫いてきたというのも尊敬する。

私にも出版社に勤めたいという目標があった。まずは記者という形で入り、ゆくゆくは編集者として働きたかった。そのために自分の得意なことを伸ばそうと、好きなアーティストのライブへ行ってライブレポートを書いたり、企画案を誰よりも考えたりした。

ただ、頑張りすぎて空回りし、徐々に自分を見失ってしまい、病気が再発。さらには周りの一部の人に理解されず、冷たくされるといった日々を経験した。自分のペースが崩れてしまった結果、夢を手放すこととなってしまった。

今となってはものすごく後悔している。だからこそ、この日披露された“大事なものをなくして 大事なものを見つけた”という「The Abyss」の歌詞が沁みた。そして、ヤバイTシャツ屋さんら多数のアーティスト、芸能関係者の他、小さな子どもから大人まで、たくさんの人に愛されながら、自分のペースを見失わずに好きなことを貫き通す岡崎さんのライブにものすごく感動した。

さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブは、さまざまな人に夢や希望、そして笑顔を与えてくれたに違いない。好きなことを貫きながら、自分らしい方法でずっと継続していける人、それが夢を叶えるための方法なのだと思った。

ここで終わらない岡崎体育

最後に岡崎さんは「Explain」を披露してくれた。“さいたまスーパーアリーナで口パクやってやる”と、何度も岡崎さんに“説明”されてきた夢をついに叶えたのだ。「この場をもって最後」という言葉とともに披露された同曲のイントロで、私は感極まって涙した。

でも、岡崎さんは違った。彼は決して泣かなかった。それどころか、ずっと笑顔だった。終始笑顔で気持ちよさそうに楽しんでいた。

岡崎さんはここで終わらない。夢が叶って、そこで終わりじゃない。岡崎さんは大阪の体育館で来年の2月にワンマンライブを開催することが決定している。これからも次から次へと目標に向かって歩み続けるに違いない。

彼の“胸の BASIN TECHNO の文字は消えることはない”のだ。オープニングで映し出されたシルエットの意味は、そんなメッセージを伝えてくれているように感じた。

f:id:k_cat51alom:20190610130841j:plain

岡崎体育の“胸の BASIN TECHNO の文字は消えることはない”だろう

MASQUERADE HOTEL、“フューチャーR&Bの新貴公子たち”がサウンドで魅せるエモさ

最近、何かと使われている「エモい」という言葉。

古語の「あはれ」と同じような意味で、感動した、切ない、寂しい、懐かしい、などの複数の感情がごちゃ混ぜとなった、漠然とした感情を表すのに用いられている。

私はこれまで「エモい」という表現を使ったことは一度もなかった。代わりに、自分の中に沸き起こるさまざまな感情を、なるべく具体的に、一つひとつ説明しようと思い、そう努めてきたつもりだ。

これから先も使う予定はない、と思っていた。 …バンド・MASQUERADE HOTELの曲を聴くまでは。

彼らの楽曲は、エモかった。いろんな感情が渦巻くあまり、「エモい」しか出てこなかった。

そして、気づいたときにはすでに遅かった。“私の初めて”は、何気なくMASQUERADE HOTELに奪われたのだった。

ちょっぴり悔しかったが、彼らの音楽はやっぱり“エモい”。

今回の記事は、そんなMASQUERADE HOTELの“エモさ”を筆者なりに追究したものとなっている。

MASQUERADE HOTELの“エモさ”

R&Bやジャズ、トラップなどのアーバン・ミュージックに、少しだけエレクトロな要素が加えられた、セクシーかつお洒落な曲調。

そこにボーカル・syunのやさしくも甘い歌声が重なることで、さらなる艶やかさが醸し出される。

MASQUERADE HOTELの魅力は、その大人なサウンド面にあるのではないか。

「LOST ALONE」

まずは、彼らのファーストシングル「LOST ALONE」を聴いてほしい。

溢れ出してもう 感情消えなくてずっと 大人しくなれない 君には戻れない

願ってた「もう一度」 Sadness 繰り返すだけなら もう二度と触れないように 大人しく 仕舞い込む

“溢れ出して”というフレーズとともに一段と大きくなるサウンドは、失恋した主人公の感情が一気にこみ上げてくる様子を表現しているかのようだ。

さらに、“溢れ出してもう 感情消えなくてずっと”、“願ってた「もう一度」 Sadness 繰り返すだけなら”という歌詞の部分で、エレクトロサウンドが“リフレイン”されている。

サウンドを歌詞に重ね合わせながら強調することで、一気に楽曲に浸りやすくしているのだろうか。小さなこだわりが丁寧に積み重ねられているのが魅力的だ。

通り過ぎる 君との日々 「くだらない」の繰り返しでも なんか 愛おしい

その冷たい指解いて 優しさなんかで埋めないで 塗りつぶして はじめから 何事もなかったかのように

このあと流れるサックスの音色も絶妙だ。途中、短いクラクションのような音が流れる瞬間もあり、物事が“ストップ”して思うように進まない気持ちに拍車をかけているように感じた。

そして、この頃には、すっかり主人公に同情してしまっている私がいた。

Let me cry 涙流れた あの日からずっと 君を抱きしめたい 温もりは冷めない

行く宛も わからない 愛情が絡まって乱れたままなら

微睡みが醒めない間に 大人しく 落ちて行こう

“涙流れた あの日からずっと”、“行く宛も わからない 愛情が絡まって乱れたままなら” の箇所でもエレクトロサウンドのリフレインがある。ここでも、歌詞とサウンドがぴったり合わさり、ますます主人公の世界観にじりじりと引き込まれて行ってしまう。

その後はエレクトロサウンドがひたすら繰り返されることからも、主人公がしばらく失恋から立ち直れない様子が伝わってくる。

本能に訴えかけているような、奥深くて複雑なリズムパターンに思わず胸を打たれたのだった。

「Up to U」

続いて、セカンドシングル「Up to U」を聴いてほしい。

アッパーチューンなエレクトロR&Bとなっており、その奥深いリズムからグルーヴに酔いしれることができる。

お洒落なサウンドを彩るピアノの音色も鳴り響き、美しさがひとしお。

本能を刺激してくるような“エモさ”を感じた一曲だ。

「secret」

最後に、サードシングル「secret」を聴いてほしい。

美しさと愛らしさが欲しいという、大人な女性のロマンスを描いたような世界観が堪能できる。

そんな“秘密”を少しだけ、覗いてみてはいかがだろうか。

 

…それにしても、やっぱりエモい。

Devil ANTHEM.が私のハートを征服中! “沸ける正統派アイドル”に首ったけ

“沸ける正統派アイドル”をコンセプトに掲げている、Devil ANTHEM.(通称、デビアン)。

今回は、5月19日に開催された、デビアンの5月定期公演「Leap~KURUMI.プロデュース公演~」の模様をレポートする。

デビアンの魅力とは?

私の中でデビアンが沸騰している。

筆者はこれまで邦ロックを中心に、ポップスやEDMなども好んで聴いてきた。好きなアイドルは“メタルアイドル”BABYMETALや、“テクノポップアイドル”Perfumeぐらいだった。彼女たちを観るためライブやフェスに行くこともあるが、年に1回程度。しかし、そんな私が何度もライブに足を運びたくなるくらい夢中になっているアイドルは、デビアンが初めてだ。

デビアンの曲は歌声はかわいらしいが、いわゆる“アイドルらしさ”を感じさせない。ポップスやロックテイストの楽曲もあるものの、ゴリッゴリのハードスタイルも取り入れた“本格派”なEDMに合わせて歌って踊るアイドルは初めて観た。思わず、衝撃が走る。すごいアイドルを見つけてしまったと思った。私は動画から目を離せずにはいられなかった。

彼女たちの魅力はサウンド面にとどまらない。ライブではメンバーと一緒になって踊ることができる他、デビアンオリジナルコールもいくつか存在する。ロックバンドのライブやフェスにはよく行くが、バンドとは異なるパフォーマンススタイルが私にとっては新鮮に感じられ、目を見張るものがあった。

また、メンバーそれぞれの魅力を自分たちで分かっていることもデビアンの強みなのではないかと思う。今回開催された公演は、メンバーのKURUMI.(以下、くるみちゃん)がライブのセトリから特典会のコンセプトまで考えて行われたものだった。メンバー自身でも魅力を引き出せるからこそ、観るものをたちまち虜にしてしまうのだろう。

くるみちゃんプロデュース公演

暗転すると、デビアンは早速「Flashover」でスタートを切った。スウィングの効いたビートがエレクトロサウンドと調和している同曲のメロディに合わせて、爽やかにダンスを披露していくメンバー。星を描くような振付も交えながら、“光”に向かうため困難を乗り越えて突き進んでいくようなダンスが印象的だ。

続いて披露されたのは「LINK」。愛らしく踊る爽やかポップな曲調から一転し、キレッキレなシャッフルダンスを踊るハードスタイルに突入していく。このギャップと、心にダイレクトに鳴り響く重低音がたまらない。

その後はどこか切なさが漂う爽やかチューン「Replay」へと紡いだかと思いきや、打って変わって4つ打ちハードスタイルの「Like a 熱帯夜」にバトンタッチ。迫力のあるサウンドとダンスで会場をヒートアップさせたまま、エレクトロポップなハードコア「Fever」の人気曲へと持ち込んでいく。

コールが連発する同曲では、家虎、スタンダードMIX、ジャパニーズMIXなどのアイドル定番コールだけで終わらせない。

(竹越)くるみちゃんに向かって「タケコシファイヤー!」、YUME.(以下、ゆめちゃん)とKAEDE.(以下、かえでちゃん)には「萌え萌えキュン」などのコールが飛び交うパートがある他、「あるよー!」「オレモー!」などのデビアンオリジナルコールも存在する。

とにかく楽しいだけでなく、コール発動後のメンバーたちによるとびっきりの笑顔や、かえでちゃんが「ありがとうー!」と感謝の気持ちを叫ぶパートが見どころとなっている。

毎回ラストのサビでは、フロアはマサイをする人であふれかえっているが、この日の熱狂ぶりも負けていなかった。ファンは一瞬、一瞬を大切に、みんなで盛り上がっていた。「Fever」でラストを飾らずに中盤に持ってきているのも、余韻に浸るよりも今この瞬間を楽しんでほしいというメッセージが込められているのではないかと思った。

自己紹介などのMCを挟み、後半戦はファンクナンバー「Only Your Angel」でキックオフ。手を振ったり、指を上に左右にとさしたり。会場は振りコピをする観客であふれていた。

続く「EMOTIONAL」では、疾走感あふれるロックテイストなサウンドとともにデビアンなりの“応援ソング”を届け、遊び心あふれるナンバー「OMONPAKARU」へと繋げた。

その後は「Darkside」「Fake Factor」の2曲を続けざまに披露し、ライブは終了。彼シャツ姿のメンバーが登場する特典会へと移っていき、くるみちゃんプロデュース公演は大盛況に終わった。

感想

くるみちゃんは一人ひとりのメンバーの良さを引き出しつつ、彼シャツというファンが喜びそうな特典会の衣装を、高校生なりの視点で考え抜いてくれたことに驚いた。

堂々たるパフォーマンスを元気いっぱいに魅せてくれるくるみちゃん、見るものを幸せにするような笑顔が特徴的なかえでちゃん、どこか不思議なトークが魅力の美少女・ゆめちゃん。

それから、ぱっちり目でにこやかに微笑み返してくれる、みんなのアイドル・あいりちゃん(メンバー・AIRI.)、そして目を細めて楽しそうに笑う姿が印象的な、ちょっぴりセクシーなあきらちゃん(メンバー・AKIRA.)。

デビアンに首ったけ。ライブだけでなく、メンバーが成長していく姿にもますます目が離せなくなりそうだ。

f:id:k_cat51alom:20190523172718j:plain

彼シャツ姿のかえでちゃんとの2ショット

今週のお題「アイドルをつづる」

マキシマム ザ ホルモン2号店が出した、唯一無二の味

音楽業界初のフランチャイズ制を導入したマキシマム ザ ホルモン

これまでYouTube上のドキュメンタリー番組「ガチンコ ザ ホルモン~コッテリの継承者たち~」でオーディションの模様が配信されてきたが、本店の選考で採用された5名の“店員(メンバー)”からなる2号店がついに“開店”し、5月5日に行われた埼玉史上最大のロックフェス「VIVA LA ROCK 2019」に初上陸した。

今回は、そんな2号店の初ライブの模様を筆者の感想を交えながらレポートする。

f:id:k_cat51alom:20190520230420j:plain

マキシマム ザ ホルモン2号店が出してくれた、“あの味”が忘れられない

はじめに

忘れられない味は、あるだろうか。

残業で疲れていたときに上司が買ってきてくれたアイスの味、好きな人と一緒に食べたごはんの味。みんなひとつやふたつはあるのではないかな、と思う。

私にとっての一番忘れられない味は、マキシマム ザ ホルモン2号店が提供してくれたものとなった。

 

ホルモン2号店が提供してくれた味は、美味しかった。

心まで染み渡るような熱いスープ(ロックスピリット)、スープによく絡む麺(サウンド)、それからこだわりのトッピング(個性)。いろんな旨味がにじみ出ていたが、全てが喧嘩せずに仲良く溶け込んでいた。

そして、そんなラーメン(音楽)を湯気(熱気)が出る中、美味しそうにすする客(腹ペコ ※ファンの総称)と、気前よく提供してくれた店員(メンバー)。

全てが忘れられないものとなった。

ライブレポート

コッテリーナイス! 2号店ならではの旨味を加味しつつ、本店の味を“ぶっ生き返す!!”

腹ペコの歓声が沸き起こる中、本店でお馴染みのSEをDANGERxDEERが掛けていく。そして「2号店の味を召し上がれー!」というセキはんのシャウトとともに披露されたのは、「ぶっ生き返す!!」。

2号店だからといって、決して本店の味を“殺す”ことはしていない。むしろ、本店の味を“生き返す”どころか、自分たちの旨味を引き出し、それをところどころに散りばめた2号店なりの良さがあった。

七色ボイスを持ち、MCパートでも盛り上げるセキはん(キャーキャーうるさい方と女声)、ダイエット企画に挑戦しながら人間嫌いである自分と真摯に向き合い、内面、外見ともに一皮むけたタクマ(歌と6弦)。

それから、キュートな笑顔を弾けさせながらも、観客にも楽しんでもらえるようなパフォーマンスをアグレッシブに披露するわかざえもん(4弦)、真剣にドラムをたたく中、ときどき見せるニタニタ笑顔が印象的なオマキ(ドラムとニタニタ)、そしてところどころ楽曲にアレンジを利かせ観客を沸かす、世界をまたにかけて活躍中のDANGERxDEER(DJ)。

そんな5名によるパフォーマンスは、1曲目からコッテリとした旨味がしっかり凝縮されていた。

食後すぐの腹痛なんて気にしない! モッシュ、ヘドバンの嵐で大歓喜する腹ペコ

続く「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」では、サークルモッシュが発生し、腹ペコの心もますますヒートアップしていく。会場の温度が冷めやらぬうちに、今度はMCへ。

セキはんは「えー、ビバラロックにお集まりの皆さま。本日は大変厳しいタイムテーブルの中、この時間、この場所をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。マキシマム ザ ホルモン2号店でございます」と、合宿中にマナーの先生から教わった丁寧な口調で感謝の気持ちを述べていく。

そして、「あれ、タクマ? こんなところに“シミ”が」というセキはんのつぶやきとともに次曲「シミ」へと持ち込んだ。

ヘドバンの嵐が沸き起こった他、セキはんの大ジャンプも披露され、腹ペコを大いに沸かしていく2号店。そんな目を奪われるような光景は、落ちることのない“シミ”としてメンバーの他、腹ペコの魂にも深くくっきりと刻み込まれたに違いない。

その後の「「F」」では、タクマとわかざえもんの2人が互いに向かい合ってヘドバンを披露しながら演奏するなど、メンバーの仲の良さが垣間見えた。

「ただただコピーバンドやっているんじゃない」 セキはんが明かした感動のMC

次のMCで、セキはんは「我々、ただただ本店のコピーをしているバンドではございません。今ここに立っているのは5人。たった5人かもしれませんけれど、いろんな想いがここ、VIVA LA ROCK、GARDEN STAGEには渦巻いています」と心境を明かした。

マキシマム ザ ホルモン本店の想い、そして今、いろんな想いを抱えた方がここに集まってきてくれていると思う。目の前のあなた方、動画を見て自分を重ね合わせたりだとか、コイツ面白れぇなだとか、いろんな感情を抱えてここに来てくれている方がたくさんいると思います」と打ち明けていく。

また、「一番悔しい想いをしていると思うのは、きっと一緒に2号店を目指して、だけどここに立つことができなかったオーディションメンバーだと思うんですよ」と話すと、会場に駆けつけていたオーディションメンバーからは歓声が上がる。

「わしらはお前らの想いも背負ってやっているつもりだから、ただただコピーバンドやっているんじゃない。いろんな奴らの想いがここには渦巻いていて、いろんな奴の人生の希望、夢、ワクワク、不安、絶望、挫折… いろんなものがごっちゃ煮になって、そしてにじみ出たもの、それがマキシマム ザ ホルモン2号店の味だ!」と熱い胸の内を明かしてくれた。

そして本店のライブでお馴染みの“恋のおまじない”を「麺カタ~! コッテリ~! “ナイス~!”」とアレンジさせた“2号店の一味違ったおまじない”をかけたのち、披露されたのは「恋のメガラバ」。

“セキはん”こと赤飯が、歌い手のときに1人でホルモン全パートを披露していた動画が蘇り、思わず目頭が熱くなる。

さらに、MCで話していた“希望、夢、ワクワク、不安、絶望、挫折”は全て赤飯自身のことなのではないか、と思わずにはいられなくなってしまい、涙なしでは見られなかった。

「2号店でした。ありがとう!」という爽やかなあいさつとともに去っていった赤飯ら2号店メンバー。その姿は凛としていて、とてもかっこよかった。

感想

2号店が与えてくれたものは“勇気”だと思う。

例えば、タクマ。

若い頃のマキシマムザ亮君の姿に似ているだけではなく、「亮君と一緒で電車3駅しか乗れない」という特徴まで一致していた。

しかし、“ホルモンが好き”というその一心で応募し、亮君から「可能性を感じる」と見込まれたタクマには「ホルモンに見た目や特徴が似ている人は応募NG」という条件が特別に免除され、別枠のダイエット企画でオーディションに参加することとなった。

本当に2号店のメンバーになりたいと望んでいる人ではないと、応募条件を見た段階であきらめてしまうのではないだろうか。

しかし、タクマは違った。人間嫌いでありながらも、原付で3時間かけてオーディションに駆けつけていた他、応募の段階からこの“勇気”を持っていたのだ。それがタクマの強さだと思う。

亮君はそんなタクマの強みをダイエット企画で伸ばしてあげていたような気がした。

「腹ペコ・ノンフィクション」の最初のほうでは希望に燃えているというよりも「怖いほうが勝っています」と言っていたタクマ。それでも決してあきらめることをしなかったのは、“本気”だったからだろう。

パニック障害を発症してから運動を避けていた」と日記に綴っていたタクマは、そんな自分の苦手意識と果敢に向き合いながら、自分と戦うことをやめず、新しい扉を徐々に解放していった。

好きなスイーツを我慢したり、苦手だったボーリング場へ行ったり。そして、最終的には「俺も人にやさしくロックに生きたい」と綴っており、内面がガラリと前向きに変わっていた。タクマには“勇気”があったのだ。

さらに、タクマは「俺は、この企画中に深夜にラーメンやアイス、お菓子などを食べた瞬間に自分からこの企画を辞退しようと思っている。そんな甘い気持ちで2号店が務まる訳が無い」とも日記に綴っていた。

ここまで強い意志があるタクマに感動させられただけでなく、自分の中にある闘争心が奮い立たされた気がした。ブレない芯を持っている人は、そうなかなかいないだろう。私だけでなく、タクマが必死に戦う姿は観るもの全てに“勇気”を与えてくれたのではないだろうか。

 

私は今、転職活動をしている。好きなことを仕事にするべく奮闘している真っ最中なのだが、最終面接で落ちることが多く、なかなか上手くいっていない。

しかし、そんなときにこそ、2号店が与えてくれた“勇気”を思い出したいと思う。

あきらめるも勇気、戦うも勇気。

選ぶのは、後者一択だろう。

水曜日のカンパネラ・ケンモチヒデフミが凄いのは、“人”がテーマの曲だけじゃない!

水曜日のカンパネラの音楽担当・Kenmochi Hidefumi。彼は独創的なサウンドを手掛けているだけでなく、オリジナリティあふれる歌詞も生み出している。“人”をテーマにした曲が多く見られるが、今回は人以外がテーマの個性的な楽曲も紹介していきたい。

はじめに

水曜日のカンパネラ(以下、水カン)は好きだろうか。

自分が思ったまま、感じたままに表現しているボーカル・パフォーマーコムアイ、独創的な歌詞やサウンドを生み出している音楽担当のKenmochi Hidefumi(ケンモチヒデフミ)、その他“何でも屋”のDir.Fからなる同ユニット。

私が彼らの音楽を聴いたのは、アルバム『ジパング』が最初だった。Apple Musicに大きく取り上げられていたため、気になって聴いてみたのだった。そして、1曲目に収録されている「シャクシャイン」でパンチを食らった。

ぶっ飛んでいる、というのが率直な感想だ。何といっても歌詞がおもしろい。

地名をひたすら羅列していると思ったら、突然、“食らえマルちゃん焼きそば弁当”と必殺技のように食べ物が飛び出す。さらに、“白い恋人”や“マルセイバターサンド”などのお菓子まで続々登場。北海道の魅力がたんまり詰め込まれたこの曲に、私は衝撃を受けずにはいられなかった。

まさかの一発ノックアウト。強烈なアッパーだった。

こうして水カンにすっかり虜になった私は、特に歌詞の部分に魅力を感じている。

今回は、ケンモチヒデフミさん(以下、ケンモチさん)が作詞を担当している曲をいくつかピックアップして、その個性的な歌詞を紹介していきたい。

“人”をテーマにした楽曲

昔話やおとぎ話に登場する人物から歴史上の偉人まで、ある特定の“人”について想像力を膨らませながら書くところが、何といってもケンモチさんの魅力だと思う。

例えば、楽曲「桃太郎」のMVを観てほしい。

この桃太郎、昔話に登場する桃太郎とは全く異なる人物として描かれているのが分かるだろうか。

昔話の桃太郎は、村人たちに悪さを働いている鬼を退治しようと、イヌ、サル、キジを従えて鬼ヶ島へ果敢に躍り出る物語だ。

しかし、この桃太郎は、宿題も勉強もせずにゲームに明け暮れている姿が描かれている。しまいには家を追い出され、ペットのイヌ、サル、キジと仕方なく鬼退治しに行くという、本来の桃太郎の性格とは真逆で、どこか現代風にアレンジされたストーリーになっている。

また、曲中には元ゲームソフト開発・販売会社の“ハドソン”や、「ファミコン名人」として名が知られる“高橋名人”、さらにゲーム機のコントローラーのボタンを1秒間に16回押すという高橋名人の必殺技“(魂の)16連射”などが登場。

加えて、桃太郎がファミコンのコントローラー・2コンに付いているマイク(2コンマイク)から“一緒に行こうよ鬼が島 あなたの助けが必要です”と叫ぶシーンも描かれており、ゲーム好きなファミコン世代に刺さる内容となっている。

現代風のアレンジが施された楽曲は、他にもたくさんある。

例えば、芸能の神であり、日本最古の踊り子でもあるアマノウズメが登場する「アマノウズメ」では、歌詞中に“ディスコ”が出現する。その他、江戸時代なのに“運転席”や“助手席”、“後部座席”といった車の表現が描かれる「松尾芭蕉」などがあり、ユニークな人物が描かれている。

ケンモチさんは、小説や映画からのアプローチも忘れない。

太宰治の短編小説『走れメロス』からアイデアを引き出しつつも、歌詞中には“ハナ・アタマ・クビ”と競馬を匂わせるフレーズが登場する「メロス」の他、「一休さん」では昔話の要素を取り入れつつも、“レインボーブリッジ封鎖できません”と映画『踊る大捜査線―』からピックアップされたワードが入っている。また、「オードリー」では、映画『ローマの休日』で主演を務めたオードリー・ヘップバーンが題材となった楽曲だ。

このように、ケンモチさんは“人”がテーマの曲の描き方がとにかく独創的で魅力にあふれているが、彼の作詞力がスゴいのはそれだけにとどまらなかった。

テーマはそっち!? 敢えて主題をタイトルに入れない楽曲

「見ざる聞かざる言わざる」という曲を聴いてみてほしい。

曲中には、タイトルにもある、栃木・日光東照宮にいる三猿が登場する。

しかし、“「せざる」という4体目のシンボル”が歌詞に登場するのを忘れないでほしい。

三猿の元となったのは、孔子の『論語』だ。曲中にも、“礼にあらざれば”という『論語』の中に登場するフレーズが出てくる。そして、その中で孔子は「見るな、聞くな、言うな」の3つの教えだけではなく、「するな」の4つ目の教えを説いているのだ。

ただ、なぜか三猿しか残っていないことに目を付けたケンモチさんは、“最近用はない”や“少々品がない”などと、4体目の「せざる」の気持ちになってこの曲を書いたものだと私は思っている。

だから、この曲のテーマは「見ざる聞かざる言わざる」ではなく「せざる」なのだと思う。ただ、曲名を「せざる」にしなかった理由は、おそらく「せざる」が日光東照宮にないからだろう。

ケンモチさんが“天才”とささやかれる理由は、こういうところにあるのだろう。

何この歌詞! 一般的な曲名のイメージとはガラッと異なる独創的な楽曲

もうひとつ、面食らった曲を聴いてみてほしい。

ひたすら駅名が登場する歌詞。そして、付けられた曲名は、すごろくでも、人生ゲームでもない。「モノポリー」だ。そこに深く感心した。

モノポリーは、アメリカで誕生したボードゲームのひとつ。すごろくや人生ゲームとルールは何ら変わらないが、マス目にはさまざまな鉄道会社や地名の他、駐車場や刑務所などが描かれている。

ここからケンモチさんはヒントを得たのではないかと思うのだ。鉄道の代わりに電車という、日本人にとって馴染みのある交通手段に置き換え、歌詞には路線名も登場する。また、“二重橋前 再逮捕”というフレーズからは、モノポリーで登場するGO TO JAIL(刑務所行き)の名残りであるかのように感じる。

そんな、ケンモチさんのセンスがきらりと光る曲となっている。

曲名も歌詞も独特! 言葉遊び巧みなオリジナル要素あふれる楽曲

最後に、「ディアブロ」を聴いてみてほしい。

“Dear 風呂”とスペイン語の“悪魔(Diabro)”の意味、さらに“ディアブロ”というゲームの要素を掛け合わせた曲名となっているのが特徴だ。

歌詞中には、“デビル デーモン サタンにルシファー”と悪魔に関連するフレーズが登場する他、“あくま(悪魔)で昇天”という掛け言葉も見受けられ、MV中でも悪魔やゲームが登場する。

また、曲中には韻を踏んでいる箇所が多く見られ、オリジナリティあふれる楽曲となっている。

感想

このように、ケンモチさんが持ち前の豊かな想像力を発揮しているのは、“人”がテーマの曲だけでない。

ケンモチさんはステージに上がらないものの、しっかりと縁の下の力持ちとして活躍されているのがスゴいところ。

5月15日に発売されるアルバム『沸騰 沸く ~FOOTWORK~』も期待できるに違いない。

それにしても、これを書いていたら、また水カンのライブに行きたくなってきた。

コムアイちゃんのパフォーマンス、また生で観に行きたい。

f:id:k_cat51alom:20190423231228j:plain

水曜日のカンパネラの武道館ライブの模様(PHOTO:水曜日のカンパネラ 日本武道館公演〜八角宇宙〜 のもの)