ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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Devil ANTHEM.が魅せた、“日々最高を更新する”パフォーマンス【ワンマン振替公演 ライブレポート】

“Make Some Noise”のキャッチコピーを掲げ、常に楽しく沸けるライブを追求している“沸ける正統派アイドル”Devil ANTHEM.(通称:デビアン)。

11月17日には、台風19号の接近に伴い延期となったワンマンライブ「It's a brand new day」の振替公演が開催された。今回は、そのライブの模様をファンである筆者の感想も交えながらレポートする。

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ライブレポート

耳と目を刺激するサプライズ

突如、新たな音色が耳に飛び込んできた。ワクワクさせるような本格派のEDMサウンドが流れてきたのだ。

この不意打ちに、初っ端から心を鷲づかみにされた。さらに、そこに追い打ちをかけるように、無数の放射線状のレーザー光線が飛び交う演出も取り入れていく。

新SEでスタートを切ったデビアンからのサプライズに、歓声が上がるフロア。しかし、この思いがけないプレゼントは、まだ序の口に過ぎなかった。

序盤から破竹の勢い!

メンバーが登場すると、アッパーチューンの「あなたにANTHEM」、疾走感のあるサウンドが特徴的な「MY WAY」、フューチャーハウスを取り入れた「ALRIGHT」でキックオフ。

さらに、4つ打ちハードスタイルの「Like a 熱帯夜」、スウィングを効かせたビートとエレクトロサウンドが調和した「Flashover」をエネルギッシュに畳みかけていく。その様子は、まるでデビアンの勢いそのままを表現しているようだ。

メンバーたちが口にしている「日々、最高を更新する」といった言葉がある。筆者がデビアンのライブを観に行くたび、彼女たちはその言葉通り毎回一歩成長したパフォーマンスを魅せてくれるのだ。そんな想いが詰まっているように感じた。

“天使”から“新星アイドル”へ

MCを挟んで披露されたのは、「覚醒WOW WOW」「らすとご!!」といった、アルバム『Fever』収録曲を中心とした楽曲の数々。およそ6曲を続けざまにパフォーマンスした後、メンバーが自由なトークを展開する10分間のVTRを流し、今度は新衣装に着替えて登場した。

先ほどまでの衣装は“天空から舞い降りた天使たち”といったイメージだったが、新衣装は“宇宙から舞い降りた新星アイドル”のような印象を受けた。天空から宇宙へステップアップしたように感じたのだ。

メンバーの「日々、最高を更新する」といった想いが色濃く反映された衣装のように思い、強く心を揺さぶられた。

“日々最高を更新する”魅せ方

その後、爽やかなバンドサウンドが響く新曲「①②③④⑤」やバンドサウンドを取り入れた「Dark“s” side」などのパフォーマンスを観ているうちに、気づいたことがある。一人ひとりのメンバーの魅せ方も、格段に上達しているように感じた。

それぞれの個性を活かしたダンスの魅せ方や表情が映えているように思っただけでなく、表情の魅せ方が上手いメンバーはダンスや歌唱力が、ダンスが秀でているメンバーは表情の作り方が上達しているなど、自分の得意分野を伸ばしつつ、他の魅せ方まで向上しているように感じたのだ。

MCでメンバーが話していた、「デビアン全体として仲が深まって、まとまりが出た」という言葉に、私は説得力を感じずにはいられなかった。

終わりのほうでも、サプライズを用意

トロピカルハウスが印象的な最新曲「Days」から始まるライブの後半戦でも、メンバーは疲れた素振りを見せることなく、楽しそうに盛り上げていく。

それに伴い、ますます凄まじい盛り上がりを見せていくフロア。多数のリフトが上がっていた他、エレクトロポップなハードコア「Fever」では、コールやマサイをせずにはいられなかった。

“フィーバー”を巻き起こしたデビアンは、その後、2020年2月23日に東京・Veats Shibuyaでワンマンライブのリベンジ公演を開催することを発表した。最後のほうでもサプライズを用意しているデビアンに、度肝を抜かれた瞬間だった。

そして、アンコールへ。「EMOTIONAL」と新曲を披露し、メンバーは笑顔でステージを後にした。

感想

メンバーやスタッフの「日々、最高を更新する」という想いがより一層伝わってきた、この日のパフォーマンス。

そんなデビアンは、ライブの翌日にはアーティスト写真やソロ写真を一新していた他、対バンの予定を発表するなど、“攻めの姿勢”を忘れない。

これからのデビアンにも、ますます目が離せなくなりそうだ。

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【ゲーム好きな君へ】“最強コマンド”を入力している楽曲を紹介

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ゲーム好きな君へ

これを読んでいる君は、きっと格ゲー(対戦型格闘ゲーム)が好きなのではないだろうか。

私が格ゲーで遊んだ想い出は、友だちの家に遊びに行ったときくらいだが、ゲームが大好きで、小学生、中学生時代はゲーム漬けな日々を送っていた。

小学生時代は、学校帰りによくプレステ(プレイステーション)でサルゲッチュクラッシュ・バンディクーを遊んでいた記憶がある。中学生だった頃は、オンラインRPGメイポメイプルストーリー)に夢中になっていたため、帰宅後すぐにPCを開いては、ゲームに熱中していた。今となっては懐かしい想い出だ。

現在は本格的にゲームをやらなくなってしまったものの、音楽が好きで、ほぼ毎日聴くようになった。その中で、“最強コマンド”を入力している楽曲を2曲見つけたため、ゲーマーな君に紹介していきたい。ジャンルが異なるからこそ、きっと気に入ってくれる曲もあるのではないかと思う。

君は、BABYMETALとBURNOUT SYNDROMESの曲を知っているだろうか。

BABYMETAL「↑↓←→BBAB」

まずは、BABYMETALの最新アルバム『METAL GALAXY』の収録曲「↑↓←→BBAB」を紹介したい。もうそのタイトルから既にゲーム臭が漂っている。

一見、コナミコマンド上上下下左右左右BA」のように見えるが、よく見てみると、そこからさらに派生したものとなっており、BABYMETALだけの“最強 Command”となっているのが分かるだろう。

そして、それはタイトルだけでなく、歌詞からもしっかりゲームの要素が伝わってくるものとなっている。

ライフポイントがゼロになったときに画面に表示されるあのセリフ、“Game Over  or Continue?”から始まる歌詞。何度負けようと、めげずに挑戦し続けるゲーマーの姿が描かれている。

さらに、“Save Point”や“High Score”、“最強 Cheat”や“Quest”など、ゲーム好きなら誰もが聞いたことのあるワードが散りばめられているのだ。

また、“High Score 決めるぜ  My Turn”、“We are the champ”といったリリックや、“弱い敵 強い敵  最強敵 すべて倒すぜ”といった箇所は、ゲームに白熱しているときに意気込んでいるゲーマーのセリフのように感じられるのではないだろうか。

ゲーマー共感必至の同曲を、ぜひ聴いてみてほしい。

BURNOUT SYNDROMESハイスコアガール

次に紹介したいのが、BURNOUT SYNDROMESの「ハイスコアガール」という楽曲だ。この歌詞からは“ゲーム愛”を越えて、ゲームへの敬意すら感じられる。

まず、歌詞中の“私”がコナミコマンド“↑↑↓↓←→←→(同時押し)青+春”と“↑↑↓↓←→←→ 残機は∞”を立て続けに入力するところから曲がスタート。

曲中には“『『『『Round 1 Fight!!』』』』”、“『『『『『Here we go!!』』』』』”といったリリックが登場する他、ストリートファイターのキャラクター・リュウの“波動拳”や“昇竜拳”といった必殺技が繰り出されている。

ストリートファイター愛が伝わってくるが、それだけに留まらない。“踊り切れ 不恰好に  自前の妙なステップ踏んで”や“Shall we Dance-Dance-Revolution?”と、曲中の“私”がDance Dance Revolutionで踊っている様子がイメージできる箇所も見られるのだ。

また、“インベーダー・ゲーム”や“テトリス”と懐かしのゲームが登場する場面や、“其れは唯一無二の『ふっかつのじゅもん』  ちたに けらは とほら すての  はてき らとな りはし てと”と、歌詞にはドラクエで用いられる“ふっかつのじゅもん”も描写されている。

そんなゲーム愛あふれる同曲も、ゲーマーならきっと愉しめるのではないだろうか。

君は今回紹介した2曲を気に入ってくれただろうか。

もしよかったら、また今度書く予定のお便りコラムも読んでみてほしい。

ちゃんさきより

“クッソ生きてやる”! ZOCの「family name」が心に響いた、あの日感じたこと

心に響いた“クッソ生きてやる”の言葉

ZOCが最後に披露した曲は「family name」だった。

先日開催されたギュウ農フェスでの出来事だ。

オクタゴンスピーカーとウーファーの威力が凄まじく、地響きしていたほど重低音が鳴り響いていた会場。心臓まで音が伝わってくるほど迫力があったからか、歌詞も心にダイレクトに響いてきた気がする。

メンバーが歌う“クッソ生きてやる”の箇所が、ものすごく沁みたのだった。

そしてそれが、私にとって初めてとなるZOCのライブとなった。

“クッソ生きてやる”

もう何度、“クッソ生きてやる”と思ったのか分からない。

海外に住んでいた小学生時代、「日本人だから」という理由だけで人種差別に遭い、突然仲良くしていた友だちから別れを告げられた。お昼休みはしばらくひとりで過ごしていたこともあった。悲しくて、見返したくて、英語をとにかく頑張った。そのときに思った“クッソ生きてやる”。

中学1,2年生の頃は、イジメに遭った。浮世離れした性格で、帰国子女ということもあったのだろう。髪を蛍光ペンで塗られた他、さまざまなことをされた。そのときに思った“クッソ生きてやる”。

大学生の頃は、就活に失敗。そこでも思った“クッソ生きてやる”。

社会人になってからも、イジメに遭った。再び思った“クッソ生きてやる”。転職活動を行い、50社ほど受けて、ようやく決まったのだった。

そして、“クッソ生きてやる”と思う出来事が起こるたんびに、その経験が私を強くしてくれた。

そんなことがフラッシュバックしたのだった。私も波乱万丈な人生を歩んできたからこそ、ZOCの「family name」に響くものがあったのだろう。

「family name」から感じる熱い想い

ZOCのメンバーも、一人ひとりが波乱に満ちた人生を歩んできた。

引きこもりや虐待、家庭内暴力の経験者など、さまざまな“孤独”を抱えてきた女の子たちの“孤独を孤立させない”ため、大森靖子が“共犯者”となり築き上げたグループがZOCである。

そして、デビュー曲として発表されたのが「family name」だった。

同曲では、一人ひとりが抱えてきた“闇”を歌うソロパートや、敢えてバラバラに踊るパートを取り入れ、それぞれの“孤独”を表現しつつも、“悲しみも映えてる”、“なんも気にすんな”などと、一人ひとりの人生を全肯定。

さらに、“だからって光を諦めないよ”と、アイドルとして新たな道を歩みだした自分たちのこれからの可能性を信じていることを歌っている。

その上で、これまでのマイナス要素を全て強みに変えたような、力強い意志や決意が感じられる、“クッソ生きてやる”という熱い想いを解き放つのだ。

彼女たちが「family name」を歌うからこそ、楽曲が活きるのだと思ったとともに、同じようにライブで聴き、彼女たちのこの曲に心を突き動かされたという人も多いのではないだろうか。

今いる環境に何らかの不満を感じる人へ

“family name”には、もともと“姓(家族の名前)”といった意味があるが、家族だけでなく、学校や会社などのグループ、組織など、今いる環境に何かしらの不満を感じている人にも、この曲は刺さるのではないかと思う。

それらの不満は、きっとプラスに変わる起爆剤となるだろう。

気づけば、唱えているのではないだろうか。

“クッソ生きてやる”

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BABYMETALの「Shanti Shanti Shanti」には2通りの意味がある? サンスクリット語を解読してみた

アルバム『METAL GALAXY』が待ち遠しい。

まるで“世界一周”した気分!? アルバム『METAL GALAXY』は彩り豊かな楽曲となる予感

10月11日に、アルバム『METAL GALAXY』を世界同時リリースするBABYMETAL。

前作『METAL RESISTANCE』からおよそ3年半ぶりにリリースされる同アルバムは、“メタルの銀河を旅する”をテーマに掲げ、タイやスウェーデンアメリカや日本など、さまざまな国で活躍しているアーティストをフィーチャリングゲストに迎えているとのこと。

既に発表されている、同アルバム収録曲の「PA PA YA!!」では、タイのヒップホップアーティスト・F.HEROをゲストに迎え、ラップ、それからタイ語という他国の言語を取り入れた新たな試みを実施している。

6月に開催された「BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES-」の横浜アリーナ公演では、観客が凄まじい盛り上がりを見せていた他、8月に開催された「SUMMER SONIC 2019」でも、観客が激しくタオルを振り回し、圧巻の光景が広がっていた。

また、先日公開された、同アルバム収録曲の「Shanti Shanti Shanti」は、サウンドだけでなく、歌詞にもサンスクリット語を取り入れた、インドを彷彿とさせるような楽曲となっており、アルバム『METAL GALAXY』の振り幅の大きさにかなり期待できるものがあると感じた。

今回はそんな「Shanti Shanti Shanti」について、独断と偏見で書いていきたい。

サンスクリット語が炸裂している歌詞

「Shanti Shanti Shanti」には、“プラナ”や“チャクラ”、“サンサーラ”や“カルマ”など、サンスクリット語が歌詞中にところどころ散りばめられているのが印象的だ。筆者が確認できたサンスクリット語だけでも10個ある。

それらは“息吹(プラナ)”、“エネルギー(チャクラ)”、“輪廻転生(サンサーラ)”、“自由意志(カルマ)”、“神力(マーヤー)”、“解脱(モークシャ)”、“真言マントラ)”。さらに、男性の名前を意味する“Ali”、感嘆詞や間投詞の他、英語のGoodと同じ意味の“Accha”、そして曲名にもなっており、平和などを意味する“Shanti Shanti Shanti”の10個。

これらの意味に意識して聴いてみたところ、この曲はBABYMETALの誕生からメンバー・YUIMETALの脱退、そして“新生BABYMETAL”として再び舵を切った現在までの歴史について歌っているのではないかと考えた。

サンスクリット語を交えながらBABYMETALの歴史を振り返る

メタルの神「キツネ様」からの“神力(マーヤー)”のもと活動しているBABYMETALは、「アイドルとメタルの融合」をテーマに2010年に結成された。

当時、SU-METALはアイドルグループ・さくら学院に所属しており、その歌声を聴いたアミューズの中の1人の“Ali(男性社員)”・KOBAMETALがアイドルとメタルの掛け合わせを考えたのがBABYMETAL誕生のきっかけだ。

その後、KOBAMETALは、SU-METALの周りを天使のような子が踊るという設定を考え、同じくさくら学院のメンバーだったYUIMETALとMOAMETALをそのキャラクターに抜擢し、BABYMETALが結成。

可愛らしい女の子たちが重厚なサウンドにのせて歌って踊るというコンセプトは海外でも大いにうけ、世界の音楽シーンに新たな“息吹(プラナ)”をもたらした。

息を呑むような圧倒的な歌唱力を持つSU-METALと、その両横でYUIMETALとMOAMETALが繰り広げる激しいダンスパフォーマンスは、観るものすべてに“エネルギー(チャクラ)”を感じさせていたに違いない。

しかし、YUIMETALは体調不良のため2017年12月から公演を欠席しており、YUIMETALのいないDARK SIDEがしばらく続いていた。その後、2018年10月に“解脱(モークシャ)”している。

そして、BABYMETALはSU-METALとMOAMETALの2人体制に“輪廻転生(サンサーラ)”したのだった。

改めて歌詞を考察

これらの歴史を踏まえて、改めて歌詞を見てみると、“自由意志(カルマ)”という言葉が登場する箇所が2つある。

“Shanti Shanti 舞い上がれよカルマ”と“Ali Ali Ali Ali 舞い踊れよカルマ”の2箇所なのだが、ひとつは“新生BABYMETAL”と現在も応援しているBABYMETALのメイト(※BABYMETALファンの呼称)、そしてもうひとつは脱退したYUIMETALとYUIMETALを応援していたメイトのそれぞれの“自由意志(カルマ)”を指しているように思った。

Shanti Shanti 生けるものたちのプラナ
Shanti Shanti 命の花咲くチャクラ
Shanti Shanti 生けるものたちのサンサーラ
Shanti Shanti 舞い上がれよカルマ

このひとつ目の“自由意志(カルマ)”の部分では、サンスクリット語だけ見ると、“息吹(プラナ)”、“エネルギー(チャクラ)”、“輪廻転生(サンサーラ)”、“自由意志(カルマ)”となっている。これは、“新生BABYMETAL”そのものを表しているように思った。

Ali Ali Ali Ali 祈るものたちのマーヤー
Ali Ali Ali Ali 命の枷断つモークシャ
Ali Ali Ali Ali 祈るものたちのマントラ
Ali Ali Ali Ali 舞い踊れよカルマ

ふたつ目の“自由意志(カルマ)”の箇所では、サンスクリット語だけ見ると、“神力(マーヤー)”、“解脱(モークシャ)”、“真言マントラ)”、“自由意志(カルマ)”となっている。

歌詞を詳しく見てみると、“Ali(男性ファン)”が祈っている様子や、“Ali(男性ファン)”が“解脱(モークシャ)”していることが分かるのではないだろうか。

ここから、YUIMETALの“体、心、精神”の無事を祈る男性ファンの姿が浮かんだ他、YUIMETALがBABYMETALを脱退したことでBABYMETALから遠ざかったファンの様子を表現しているように思った。

そして、この曲はそんなそれぞれの自由意志を尊重しつつ、“自分(BABYMETAL)、周り(ファンなど)、世界の平和”と、YUIMETALの“体、心、精神”を大切にしてほしいといった2つの意味を込めた「Shanti Shanti Shanti」といった曲名にしたのだと考えた。

真実はONLY THE FOX GOD KNOWS...

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【遅めの自由研究】サカナクションの「モス」を自由に分析してみた

今年6月にアルバム『834.194』をリリースしたサカナクション

前作『sakanaction』から6年ぶりにリリースされたことでも話題となったが、サカナクションにとって“6年ぶり”となったのはアルバムのリリースだけにとどまらなかった。

同アルバム収録曲の「モス」が、深田恭子主演のフジテレビ系木曜劇場「ルパンの娘」の主題歌として起用され、サカナクションがドラマ主題歌を6年ぶりに担当したことも人々の関心を集めることとなった。

その後、サカナクションテレビ朝日系「ミュージックステーション」でアンダーグラウンドなDJパーティーをイメージしながら「モス」を披露し、そのパフォーマンススタイルも注目を浴びていた。

今回はそんな「モス」について、筆者なりの着眼点も交えながら、楽曲を分析していきたい。

「モス」の画像がやたらと気になる、ちゃんさき氏

「モス」と「忘れられないの」は、アルバム『834.194』だけでなく、サカナクションこだわりの仕様の、8cmシングル『忘れられないの / モス』にも収録されている。

サカナクションが2曲を制作するにあたり、1980年代の音楽と文化に影響を受けたことから、当時普及していた8cmシングルという形態でリリースされた。

8cmシングルの表ジャケットが「忘れられないの」、裏ジャケットは「モス」となっているが、ここで注目したのが裏ジャケットに写っている蛾の種類だ。

自分なりに調べた結果、この蛾、どうやら「クスサン」という種類らしい。

「クスサン」に迫る

クスサン。なんだか“さん”付けだと、妙に親近感が湧くという人も多いのではないだろうか。

そんなクスサンが幼少期(幼虫)の頃は、「シラガタロウ」という別名も持っているらしい。漢字だと「白髪太郎」。白髪のクス太郎さん、という謎の人物が脳裏にちらついた。やっぱり、どこか人っぽい。不思議な蛾だ。

シラガタロウのお腹の中には絹糸腺という糸を作る器官があり、ここから昔はテグスを作っていたそう。今のテグスはナイロン製が主流とのことだが、釣り好きの山口一郎さんも、昔はクスサンからテグスを作っていたのだろうか。

マイノリティ meets マジョリティ、マジョリティ meets マイノリティ

そして、そんな「モス」と対比にあるのが、アルバム『834.194』内にある「ナイロンの糸」だと思う。

こだわりの強いサカナクションだからこそ、今は“マイノリティ”となったクスサンから作ったテグスと、“マジョリティ”となったナイロン製のテグスを、さりげなくアルバムの中で比較できるようにしたのではないか、と考えた。

そして「モス」が“マイノリティ”と歌いながら“マジョリティ”向けに歌われており、「ナイロンの糸」という“マジョリティ”のテグスが曲名でありながら“マイノリティ”向けに歌われているということも大きなポイントだと思う。

サカナ論

サカナクションの音楽は、“マジョリティ”や“マイノリティ”といったことに意識が向けられていることが多い。

“マジョリティ”と“マイノリティ”の狭間にいるようなサカナクションは、自分たちなりの“マイノリティ”へのアプローチを試みつつも、“マジョリティ”についても考えており、両者の意見を重視しているように感じている。

その考え方は、“東京”と“札幌”がコンセプトのアルバム『834.194』でも見られるが、過去に販売されたサカナクションのグッズにも表現されている。

また、「ミュージックステーション」でのサカナクションの「モス」のパフォーマンスを覚えているだろうか。

アンダーグラウンドなDJパーティーをイメージした”とうたっていたものの、魚民(※ファンの呼称)ならば、あれが“いつもの”サカナクションでないことは知っているだろう。

サカナクションは、クラブ風の雰囲気を醸しだしたパリピ演出という、明らかに“マジョリティ”を意識したパフォーマンスでありながら、そこで“マイノリティ”を叫んでいたのだ。

しかし、その“マジョリティ”と“マイノリティ”の絶妙なバランスこそがサカナクションだと伝えたかったのではないだろうか。私はある意味、あれは“自己紹介”のようなものだと感じた。

「モス」は“自己紹介ソング”?

今度は歌詞に注目して、「モス」を聴いてみてほしい。

長い間“マイノリティ”に傾倒した生活を送ってきた山口一郎さん自身を表現しつつ、“マジョリティ”と“マイノリティ”の真ん中になるような音楽を追求し、葛藤している一郎さんの様子を描写。さらには、そんな自分を客観的に見ているように描いたものなのではないか、と考えた。

そして、そんなサカナクションを好きな人、応援している人すべてをこれからも“サカナ的世界観”に連れて行ってあげるという歌詞のように感じられた。

繭割って蛾になる マイノリティ
揺れてる心ずっと 三つ目の眼

連れてく蛾になる マイノリティ
君はまた僕を思い出せるなら

特にこの最後のパートでそう感じたのだ。

“マジョリティ”と“マイノリティ”の狭間にいる立場の考え方を紹介されたような、“自己紹介ソング”のように思った。

感想

それにしても、終わらない自由研究を続けている一郎さんはカッコいい。

楽曲やパフォーマンスなど、あらゆる場面でよりよいものへとアップデートしていくサカナクションには、見習うべきものがたくさんある。

私も日々を更新していきたい。

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