ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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“人を楽しませる天才”ジェニーハイの、音楽を超えたエンタメの最高峰【アリーナジェニー】

ジェニーハイが音楽とお笑いの最高のフュージョンで奏でた「アリーナジェニー」。それは“天才を超えよう”という、そのバンド名にふさわしい圧巻のライブだった。

ワクワクするオープニング

パーキングのマークまであり、細部までこだわりを感じるコンビニをイメージしたステージが青く光る中、この日の公演は「ジェニーハイのテーマ」から幕を開けた。しかし、イントロは流れているものの、肝心のメンバーが見当たらない。

そのまま序奏が終わりかけた、次の瞬間である。「俺が川谷絵音だ」という声が響き渡り、バンドのプロデューサー兼ギターを務める川谷絵音(以下、絵音さん)が姿を現した。アリーナにいた観客が拍手で静寂を破ってゆく中、絵音さんはそのまま自身の自己紹介パートを続け、センターステージまで堂々と歩いていく。

そして、そんな絵音さんに続き、キーボードを担う新垣隆(以下、ガッキー)、ベース担当のくっきー!(以下、くっきー)、ボーカルを務める“歌姫”中嶋イッキュウ(以下、イッキュウさん)、ドラムを受け持つ小籔一豊(以下、小籔さん)が一人ひとり登場。自己紹介する形でバトンを繋げてゆくという、斬新なオープニングからスタートした。

笑いを誘う“典子さん”

メインステージへ戻り、「夏嵐」や「ランデブーに逃避行」、「コクーンさん」を披露すると、「ダイエッター典子」へ。ダンサー・典子さんたちが登場し、エクササイズ風のダンスを繰り広げる中、イッキュウさんが典子さんの想いを高らかに歌い上げていく。

ダイエッター典子

ダイエッター典子

  • ジェニーハイ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲に登場する典子さんは、名目上はダイエッターである。連れの“あんた”がスタイル完璧な他の女性を見ていたことで嫉妬し、ダイエットに励もうとするも、大好きなタピオカの魅力に負けてしまっているのが現状だ。

頭の中では「食べ過ぎ注意」や「モチモチガールを卒業したら ボンキュッボンになるんだから」とは思いつつも、とにかく“やる気が出ない”のである。そんな典子さんの心情を、ダンサー・典子さんたちとともにジェニーハイは描いていた。

イッキュウさんの「頑張ってダイエッター典子」という歌声とともに応援したくなる声をグッと抑える代わりに、手を挙げたり、拳を突き上げたりと、エールを送っていると、典子さんはある“考え”が思い浮かぶのである。それは「食べ過ぎたら 奇跡的な体質変化が起こるかもしれない」「科学を超える力は奇跡でしか起こせない」というもの。典子さん流“タピオカダイエット”だ。

「幸せ掴みたいんでしょ お腹掴めてる場合じゃない」と思っていた典子さんが「食べ過ぎ上等ダイエッター」「タピオカ摂取できないよりは できる幸せを掴みたい」と開き直る瞬間は笑いを誘うが、そんなユーモアたっぷりの典子さんのファンは多い。その後、ジェニーハイは立て続けに「バイトリーダー典子」を披露し、“典子さんシリーズ”を完成。典子さんの世界観へと引きずり込んだ。

ダンスで魅せるジェニーハイ

MCを挟み、披露されたのは、「ジェニーハイラプソディー」、「愛しのジェニー」、「ジェニーハイボックス」のダンス曲の数々である。

両手で作った“ジェニーハイ(genie high)”の“g”のポーズを左右にリズミカルに動かしたり、リズムに合わせて前に突き出した両腕を舟をこぐようにして踊ってみたり、手遊びうた「おべんとうばこのうた」をオマージュした振り付けを披露したり。それぞれの曲で楽しそうにダンスするメンバーに合わせて、一緒に踊る人や、手を挙げる人など、観客は思い思いにその場を楽しんでいる人が多いように感じた。

また「愛しのジェニー」では、メンバー4人が前屈をする中、絵音さんが一人ひとりに「不埒なあの子も才能の前に背筋ピン」と歌っていき、それぞれ「背筋ピン」と答えながら、実際に背筋を伸ばしていくといったシーンもある。

愛しのジェニー

愛しのジェニー

  • ジェニーハイ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

最終周の「背筋ピン」をくっきーや小籔さんが面白おかしく言っていく中、ガッキーの裏返った声での「背筋ピン」には、絵音さんだけでなく、観客からも笑みがこぼれていた。絵音さんがこの曲について「最後まで笑わずに歌えたことがない」と話していた理由がよく分かった瞬間だった。

個性光るメンバーのパフォーマンス

その後、「グータラ節」と「ルービックラブ」のパフォーマンスを終えると、ジェニーハイはいったんステージを離れ、衣装チェンジをして再登場。BiSHのメンバーのひとりであるアイナ・ジ・エンドをゲストに迎え、「不便な可愛げ」を披露したのち、「卓球モンキー」をプレイしていく。

MVほど地面すれすれではなかったものの、膝丈くらいの低い位置でベースをかき鳴らすくっきー、美しいピアノが無双するガッキー、思わずくすりと笑ってしまうイッキュウさんの語りなど、この曲の魅力は計り知れないが、中でもひと際、目を引いたのが、小籔さんである。

この日のために、ほぼ毎日のように自身のInstagramにコメントを添えて、ドラムの練習風景をアップしてきた小籔さん。そんな小籔さんが、時に真剣な眼差しで、時に瞳を閉じてビートを刻んでいく姿は、ブルブルと心を震わせたのだ。スティック回しなどの細かな芸などは入れずに、曲の世界観に入り込みながら叩いているように見えたその姿はとにかくカッコよかった。

MCでの小籔さんはお笑いのプロとしての顔を覗かせるものの、「ジェニーハイのテーマ」で「満員の観客を笑わせるんじゃなくて踊らせるんだ」と歌っているように、演奏中の小籔さんは一人ひとりの心を踊らせに来ているように感じた。そしてその想いは、イッキュウさんやガッキー、くっきーや絵音さんを観ていても、ひしひしと伝わってくるのである。

メンバーには、くっきーや小籔さんのように音楽を本業としていない人もいる。また、ガッキーのように、バンドを本業としていない人もいる。さらに、イッキュウさんにはtricotというバンドがあり、絵音さんはいくつものバンドを掛け持ちしている。一人ひとりが多忙な中でも、合間を縫って練習し、このように集っているのは、やはり“お客さんを楽しませたい”という想いが強いからではないだろうか。

ジェニーハイから感じられた絆

“人を楽しませる天才たち”は、この日、他にも「シャミナミ」や「片目で異常に恋してる」、それから「華奢なリップ」など、さまざまな曲を披露してくれた。

そして、それだけでない。ゲストには、ちゃんみなやアイナ・ジ・エンドほか、ロバートやお笑い芸人・パーフェクト・ダブル・シュレッダーの門野鉄平が登場。最高なエンターテイナーたちを招き、感動や笑いを提供してくれた。

何かに秀でた才能や素晴らしいセンスを持っているだけでなく、人としての魅力も兼ねそろえているからこそ、たくさんのゲストが駆けつけたのだと思っている。そんなジェニーハイを見ていると、既に“天才を超えている”ように感じるのだが、最新アルバムの表題曲「ジェニースター」で高みを目指していることを歌っているように、彼らの歩みはとどまるところを知らない。

ライブの1曲目にふさわしい「ジェニーハイのテーマ」から始まり、大トリでちゃんみなとコラボした最新アルバムの1曲目「華奢なリップ」で締めくくったセトリも、まだ終わらせないと言っているかのようだ。何より「長く続けたいですね」と話した小籔さんの一言が、説得力をもたらしていた。

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コロナ渦に見る、マキシマムザ亮君の“変わらない”カッコよさ

変わってゆくものの中にある、変わらないもの

今でも感染拡大が続いている、新型コロナウイルス。コロナ渦に巻き込まれてからというもの、マスクが外出する上での“必需品”となったり、ソーシャルディスタンスを心掛けるようになったりと、私たちの日常の多くが変わっていったように感じている。

私たちは変わってゆく世の中に必然的に適応しなければならなくなった。それに膨大なストレスを感じる人も数多くいる中、マキシマム ザ ホルモンはさまざまなカタチで人々を楽しませるエンタメコンテンツへと昇華させてきた。

例えばそれは、全席・顔面指定席ライブ『面面面~フメツノフェイス~』から感じることができるだろう。同ライブは、腹ペコ(※ファンの呼称)が応募フォームに記載された、遊び心あふれるさまざまな“面カテゴリー”と自分の顔を照らし合わせてから抽選に挑む必要があった。マスク必須、声出しNGという感染予防対策をきっちり守りながらも、それぞれの“面カテゴリー”ごとに持参可能だった“簡易的な楽器アイテム”を鳴らすことで、自分たちが楽しんでいる様子をアーティスト側に伝えることができたのだ。まさに、コロナ渦だからこそ生まれた楽しみ方だと言えよう。

さらに、コロナ渦で働く腹ペコたちのお店を応援すべく“腹ペコえこひいき加盟店”でいち早く販売された『ESSENTIALS』も、まだ記憶に新しいだろう。現在の“エッセンシャルなグッズ(必需品)”であるマスク、2号店・コロナナモレモモのラストシングル、そして“腹ペコえこひいき加盟店”で使用できるクーポンをたっぷり詰め込んだ『ESSENTIALS』もまた、コロナ渦だからこそ試みることのできた“新たな挑戦”のひとつである。

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そして、このような独創的なアプローチは、昔から変わっていない。マキシマムザ亮君は、これまでも『これからの麺カタコッテリの話をしよう』で漫画とCDをセットにした“書籍”として販売したり、『Deka Vs Deka~デカ対デカ~』ではコッテリ作り込まれたゲームをクリアしない限り、中身の映像までたどり着くことができないという、亮君のセンスとユーモアが炸裂した“ライブDVD”を作っていたり。“音楽”の常識を突き抜け、さまざまなカタチで腹ペコたちを楽しませてきたのだ。

そうした亮君の“変わらないもの”は、楽曲からも感じることができる。2004年にリリースされた「ロック番狂わせ」では、「HEY!ロックバンド どれが売れ どれが廃れる? もうどうでもいい」、「HEY!ロックバンド なにが優れ なにが劣る? そんなんどうでもいい」と歌っているのだ。人の評価に振り回されることなく、“自分”を信じて突き進んでいる姿は、今も昔も変わっていない、そのままの亮君を感じることができるだろう。

亮君は、先日読んだインタビュー記事でも、数字ではなく“本当のいいね!”をもらうことの大切さを語っていた。中には、他人の評価が自分の基準となってしまったり、次々と変わってゆくものに振り回されてしまう人もいるが、ブレない“自分軸”を大切にしているからこそ、亮君はカッコいいのだろう。

変わってゆくものの中にある、“変わらないもの”。そこにこそ、亮君の“最大の魅力”が詰まっているように感じるのだ。最高に“ロック”な亮君、そしてホルモンが描く“これからのストーリー”も楽しみで仕方ない。

 

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KANA-BOON、ЯeaL、サカナクション…“SNS”がテーマの曲から、その使い方を考えてみた

私たちは何かとスマホをチェックしがちである。

LINE、TwitterInstagramFacebookYouTubeTikTok、Clubhouseほか、数多のSNSがひしめき合う今。スマホを手放せなくなっている人も少なくない。

そうしたSNSを楽しむ目的で使用しているのならよいのだが、中にはSNSに振り回されて疲れてしまっている人もいる。そんな“SNS疲れ”を感じている人たちに、SNSがテーマになっている楽曲を紹介していきたい。ピックアップしたのは、バンドを中心に5曲だ。この記事を読み終わった頃には、正しくSNSを使えるようになっていてほしい。

KANA-BOON「ウォーリーヒーロー」

KANA-BOONの「ウォーリーヒーロー」は、SNSの持つ悪い側面を描きつつ、聴くものに“警告”を促している曲のひとつである。

タイムラインを見れば、ずらりと流れてくるたくさんの呟き。そこから、いつだってそばに誰かがいるような感覚に陥ってしまう人も少なくない。そうして、そこでSOSを出すも、誰からも返信がなく、孤独感を感じてしまう――。

一見、フォロワーが多ければ多いほど“繋がった気分になる”SNSだが、実は“閉鎖的”という、現代的なツールの持つ“落とし穴”を歌っているのがこの曲だ。また、さまざまな“声”を目にするうちに、中には自分の“本当の声”が分からなくなってしまう人もいるだろう。時に流れてくる容赦のない“声”は、“毒”のような存在感を放っているものもある。

KANA-BOONは、そうしたさまざまな情報が飛び交うSNSの悪い一面を描きつつ、私たちに向けて「君の本当の声忘れないで」「そのタイムラインに飲み込まれる前に 想像してくれ」と“警告”してくれているのだ。「ウォーリーヒーロー」は、他人に左右されずに、自分らしく生きることを促してくれるような1曲となっている。

ЯeaL「仮面ミーハー女子」

ЯeaLの「仮面ミーハー女子」は、ティーン女子の“心の闇”を映し出したような1曲だ。

誘われた花火大会に「置いてけぼりは嫌」という理由から、本音を隠して参加。友達の“あの子”の呟きには「どうでもいい」「興味無い」「ミュートしたい」と思いながらも、とりあえず「いいね!」を押す。「何人友達がいたって一人きり」と歌っているところからも、“僕”には“本当の友だち”がおらず、クラスの女子と希薄な関係を築き上げていることが分かる。

“本当の友だち”ができないのは、おそらく相手の顔色を伺い、他人の意見に合わせてしまっていることが原因だろう。そして、その背景には、スクールカーストやいじめなどの問題があることも考えられる。

ティーン女子から人気のあるミオヤマザキも「女子高生」で、「必須科目は学よりもPeople」「ちょっと目立てば ハブ」と歌っているものの、自分の想いや考えを持ち、相手に伝えていくことで“本当の友だち”ができるものだと思っている。また、自分の好きなものやことを大切にすることで、心を通わすことのできる仲間ができると思うのだ。

だからこそ“僕”は、本音を言わない、エセ「いいね!」などの“傷付かない為の防御法”でガードを固めるのではなく、自分らしさを開示していってほしいと願っている。

グッドモーニングアメリカ「コピペ」

SNSでの承認欲求が強すぎる人をアイロニーたっぷりに描いているのは、グッドモーニングアメリカの「コピペ」だ。

SNSをやっていると、自分で自分自身を認めるのではなく、他者に自分自身を認めてほしいという、他者承認欲求が強すぎる人をチラホラ見かける。そして、この曲で描かれているのもまた、そうした“承認欲求こじらせ人間”だ。

かまってほしい、注目されたいなどの、周りに認めてもらいたいという想いが強すぎるあまり、“本当の自分”を見失っている“僕”の姿が描かれているが、SNSをやっている人ならそうした人を少なくともひとりは見かけたことがあるのではないだろうか。

中には、自分がどう在りたいかではなく、人から何を求められているのかを考えて、他者が求める自分を演じてしまっている人もいる。しかし、例えそれで「いいね!」をもらえたとしても、一時的には満足感を得ることができるかもしれないが、本当に心が満たされることはないと思っている。

他人から反応がなくとも、自分が心から「いいね!」と思って投稿したものなら、少しも気にしないはずだ。だからこそ、他者ではなく、過去の自分自身と比較するなど、自分自身に焦点を当てることが大切なのではないだろうか。

サカナクション「エンドレス」

サカナクションの「エンドレス」は、まるでSNSでの“負の連鎖”を表現したような楽曲となっている。

誰かを笑う人がいて、それを笑う人がいて、それをまた笑う人がいる――。以前、サカナクションはラジオ番組で、YouTubeのコメント欄を参考にこの曲の歌詞を書いたと話していたが、SNSに対しても同じことが言えるだろう。

それらを見ないようにしようとしても、どうしても目に入ってしまうことがある。笑われている対象の人のことを大切に思っていればいるほど、アンチの批判や嘲笑に悲しくなってしまうこともあるだろう。また、アンチの攻撃に怯んでしまう人も少なからずいると思っている。

しかし、“僕”は何か言いたいのだと思う。耳を塞いでいるのに、なぜか声がするのは、“僕”自身の“心の声”がずっと聴こえているからなのではないだろうか。そうして、そのことに気づいた“僕”は、他人からなんと言われようとも、“心の声”を口に出すのだろう。

それは、まさに“エンドレス”だ。ただ、何度も自分自身と向き合って口に出したものが心からの“声”ならば、その“声”はきっと少なからず届くはずである。

DAOKO × 中田ヤスタカ「ぼくらのネットワーク」

これまでSNSの問題点を書いてきたが、DAOKOと中田ヤスタカがタッグを組んだ「ぼくらのネットワーク」は、SNSを楽しむ上での理想的な使い方を想像させてくれるような1曲となっている。

SNS上でさまざまな人と繋がるうちに見えてくる光景は、本来ならば楽しいはずである。一人ひとりの持つ独自の世界観は、例え同じ意見だとしても、理由までがすべて同じということはない。そんなちょっとした違いも楽しむことができるはずだ。

また、「好き」なもので繋がるコミュニティは、決して脆いものではないだろう。むしろ、強固な関係性を築くことができると思っている。そのためにも、自分の中の「いいね!」を大切にしてほしいと思うのだ。

自分の好きなものやこと、自分らしさを開示することで見えてくる世界は、変わってくるはずだ。いま“SNS疲れ”を感じてしまっている人は、自分自身のSNSとの向き合い方を改めて考えてみてほしい。

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“ヘタクソ”のその先へ――“愛すべきラブソング”たちの想いよ、響け

歌の上手い、下手だけで曲を判断する人がいる。

“下手”だと感じれば、簡単に切り捨ててしまう人が、残念ながらいる。

誰かにとっては、“ヘタクソ”に感じるのかもしれない。それでも、他の誰かにとっては、“愛すべき歌”にだってなり得ることがある。

その“違い”は、“想い”の部分に気づくことができることか否かだと思うのだ。彼らの“想い”を感じ取ることさえできれば、例え“ヘタクソ”だとしても、その歌が美しく聴こえるものだと、そう思っている。今回は、そんな“愛すべきラブソング”について、自由に綴っていきたい。

湘南乃風純恋歌

例えば、“お前”に向けてヘタクソながらも愛を歌う、湘南乃風の「純恋歌」がある。

なかなか個性的な歌い方をするため、人によってはあまり好きではないと思う人もいるかもしれない。また、歌詞も「初めて一途になれたよ」と歌いつつも、「家庭的な女がタイプの俺 一目惚れ」と歌っているところに、やや疑問を感じる人もいるかもしれない。それでも、湘南乃風が好きな私からしてみたら、この曲は彼らの“代名詞”と言っても過言ではないくらいの名曲だ。

“お前”のことを愛するあまり、やや口下手になってしまっているところはあると思う。しかし、その想いには並々ならぬ熱量があることが、彼らの情熱的な歌い方や歌詞から伝わってくるのではないだろうか。

湘南乃風は「ヘタクソな歌で愛を」「バカな男が愛を歌おう」と歌っているが、彼らの熱い“想い”を目の当たりにしたとき、“ヘタクソ”とは言えなくなると思うのだ。そして、それを言うことができるのは、本人。それから、彼らのことを大切に思っている人たちだけだと思っている。そう思っている人たちの言葉には、どこか“愛”が感じられるからだ。

CY8ER「サマー」

CY8ER(読み:サイバー)の「サマー」には、「聴かせてほしいな、下手くそな歌」という歌詞が登場する。さらには、「世界中に響くEメジャー いつか届くよう衝動 ずっと抱いていたいよ」とも歌っている。

この曲に出現する“君”は、アーティストだ。しかし、“着てる服以外見たことない”ことから、売れていないことが分かる。歌もあまり上手くはないのだろう。それでも、「聴かせてほしいな、下手くそな歌」と言っているところからは、“君”への愛情が伝わってくる。さらには、“君”の歌が世界中に売れることを願っているのだ。

そんな愛のある“下手くそ”という言い方をしているのは、きっと、売れるための努力をしている“君”のことをよく理解しているからだろう。また、大切に思っている“君”の想いに少なからず共感できるところがあるからではないか、と思うのだ。

だからこそ、“聴かせてほしい”のだろう。例え“下手くそ”だとしても、“想い”の部分に気づいたとき、美しく聴こえるものだと、そう信じてやまない。ラブソングが美しく聴こえやすいのは、人を想う気持ちの熱量が高い曲が多いからではないだろうか。その“想い”には、いっさい混じり気がなく、どこまでも純粋だ。だからこそ、心動かされる曲が多いのだと思っている。

GReeeeN「愛唄」

純愛で言えば、GReeeeNの「愛唄」も負けていない。“大好きな君”への想いを、飾ることなく、ありのままに伝えている等身大のラブソングである。

そして、この曲にも「ヘタクソな唄」という歌詞が登場するのだ。冒頭で「愛してる」という言葉以外伝えることができない“僕”が描かれていることから、“僕”は自分の唄が“ヘタクソ”だと思ってしまっているところがあるのかもしれない。

しかし、例え“僕”がそう思っていたとしても、そんなことを微塵も感じさせないのは、やはり“僕”が“大好きな君”に対して決して背伸びせずに、ストレートに想いを伝えているところにあるのだろう。だからこそ、この曲はたくさんの人の心を震わせ、次第に名曲と呼ばれるようになり、リリースされてから数年の時を経たのち映画化もされたのだと思うのだ。

「愛してる」と言われ、最初は笑っていた“君”にも、想いがしっかりと伝わったのではないだろうか。上手い下手は関係ない。本気の想いは、人にもきちんと伝わるものだと思うのだ。少なくとも私は、そう思う。

 

今週のお題「わたしのプレイリスト」

Ambivalent about VaVaの「悲しいAkon」

VaVaの「悲しいAkon」が突き抜けている。

これまで“アンビバレント”といえば、欅坂46(現、櫻坂46)のそれが浮かんだが、私の脳内ディクショナリー・“アンビバレント”ページの中に、新たな曲が刻まれた。

それが、この曲。VaVaの「悲しいAkon」である。

悲しいAkon

悲しいAkon

  • 発売日: 2021/04/28
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

今回はそんな「悲しいAkon」に感じた魅力を、独断と偏見で自由に語っていきたい。

タイトルから欅坂46(櫻坂46)も関連しているのかと期待してクリックしてしまった人がいたら、申し訳ない。好きではあるものの、残念ながらこの記事には他にどこにも登場しないので、それは謝らせてほしい。お詫びに、昨年末、個人的年間ベストソングにセレクトした「誰がその鐘を鳴らすのか?」のことも記載している記事を紹介しておきたい。気になった方は、こちらへどうぞ。

 

なんとなく最近のヒップホップが気になり、ランダムに曲を流していたところ、VaVaの「悲しいAkon」に心をくすぐられた。

恋人と別れてしまったあとに、たまたまAKONの曲をいろいろと聴いていた、というのが、この曲のざっくりとした内容である。“悲哀”がテーマでありながら、聴いていて耳が楽しいという、アンビバレントな感情を抱いたのは初めてだ。

これまで出逢ったことのある、いわゆる“失恋ソング”は、失恋した悲しさをそのまま“負の感情”のあふれ出るままに情緒たっぷりに表現したものか、“負の感情”を自分なりに断ち切ってみせ、明るくポジティブに昇華させたもののいずれかだった。

例えば、恋の百戦錬磨といっても過言ではない“ラブソングの女王”・西野カナは、その名を世に広く轟かせることとなった名曲「会いたくて 会いたくて」で、失恋した辛さを、誰もが知る“キラーフレーズ”「会いたくて 会いたくて 震える」と想いあふれるままに歌っていたり、“片想いソングの女王”・Miliyahこと加藤ミリヤは、「Love Forever」や「Aitai」で、恋の切なさや失恋の痛みを、高らかに歌い上げていることは有名だろう。

また、Taylor Swiftの「We Are Never Ever Getting Back Together」では、もう決して戻らないという力強い意志を明るく宣言、Kelly Clarksonの「Stronger (What Doesn't Kill You)」では、失恋から立ち上がった姿をパワフルに描いている。

“失恋ソング”といっても、そのアーティストの気分によって描き方も、ニュアンスも異なるが、「悲しいAkon」のように、失恋してしまって、たまたまAKONのいろんな曲を聴いていた、という“出来事”だけを粛々と描いている曲に出逢ったのは、初めてだ。

そして、ピコピコ電子音とともに流れるのは、VaVaの淡々としたラップである。「楽しい Akon」「寂しい Akon」「嬉しい Akon」「悲しい Akon」というフレーズが曲の大半を占め、“音”で視聴者を楽しませる曲として昇華させたこの曲に衝撃を受けたのだった。

「楽しい Akon」は「Play Hard」、「寂しい Akon」は「Lonely」や「Right Now (Na Na Na)」、「嬉しい Akon」は「Sexy Bitch」や「Beautiful」、「悲しい Akon」は「Locked Up」が浮かんだのだが、これも聴く人によって、思い浮かぶ曲が異なるのではないだろうか。

まるで“失恋ソング”の新境地を切り拓いたような、VaVaの「悲しいAkon」。ぜひ聴いてみてほしい。