ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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とってもダメウーマン! ヤバT、花冷え、ジェニーハイで紡ぐ、崖っぷちOLのとある日々

新卒の際に入社した会社を除き、これまでメディア関連の仕事に携わってきた。

そんなちゃんさき氏だが、自分に合う会社だけでなく、合わない会社に所属していたことも少なくない。

つい先日、最終出社を迎えた企業は後者だった。

こればかりは入社してみないと分からないため、仕方のないことだとは思うが、入社して1週間足らずで仕事内容が肌に合わないと感じたのをよく覚えている。

合わないながらも、3年と少し働いてきたちゃんさき氏。自分なりに頑張りつつも、これまでたくさんのミスをし、時には怒られ、へこたれそうになることもあった。

心に潜むブルゾンちえみさんからも思わず、「とってもダメウーマン!」と指摘されることもあったちゃんさき氏のダメっぷりを、自戒の念も込めて、この記事でポップに昇華させていきたい。

今回は、ヤバイTシャツ屋さん、花冷え。、ジェニーハイの各バンドの楽曲をピックアップ。それでは行ってみよう。

“すみません、ほんまに”

ヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)の楽曲には度々感心させられることがある。

例えば、映画『ニセコイ』のために書き下ろされた「かわE」では、「かわE越して かわF」、「恥ずかC越えて 恥ずかD」といったように“アルファベットを使った古典的な表現”で“アルファベット革命”を巻き起こし、“泡”と“Our”、“Bubble Bubble”と“バブバブ”といった赤ちゃんの発声を掛け合わせるなど、韻を踏んだ言葉遊び巧みな「泡 Our Music」はシャンプーのCMソングに抜擢され、そのキャッチーでポップなメロディをお茶の間に響かせていたこともまだ記憶に新しい。

そんなヤバTだが、EP『こうえんデビュー』の1曲目に収録されている「くそ現代っ子ごみかす20代」の破壊力が半端なかった。20代のことを“ごみかす”呼ばわりしている曲名はもちろん、仕事でダメっぷりを発揮してしまっている歌詞がなんだか大変ニクイのである。まだ“こうえんデビュー(社会にデビュー)”したばかりの新社会人だった頃や、仕事でヘマをしてばかりのいまの自分が自然と重なり、思わず涙腺を崩壊させられた。

この曲に登場する“俺”は「やらんといけんこと全部先延ばすマン」であり、時にはファイルを無くしてしまうダメっぷりも見せ、そんな自分のことを「くそごみかす20代の僕」と自虐しつつも、「それなりに頑張ってはいる」と思っている様子が描かれている。

そんな“俺”は膨大なタスクを抱えるがあまり、仕事の優先順位が上手くつけられずに締切日ギリギリに駆け込む自分とあまりにもよく似ているのである。また、机上がさまざまなモノで散乱し、なかなかファイルを見つけられない自分とも重なった。「すみません ほんまに」と心から思っているものの、あまり改善が見られず、怒られてばかり。しかしながら、それでもがむしゃらに頑張っていた。

“お先に失礼します”

花冷え。の「お先に失礼します。」もまた、“崖っぷちOL”のとある1日を垣間見ているような楽曲である。

まず、この曲の魅力だが、重厚なサウンドに乗せて歌うポップな歌詞がたまらないのだ。「お先に失礼します」といった日本ならではのフレーズを「Sorry, Sorry, I'm sorry, I know now Let's just run away」と彼女たちなりに意訳している点もおもしろい。

そして、そこで止まらないのが彼女たちの魅力だと思っている。おそらく緻密に計算されたであろう、ワードセンスが炸裂しているのだ。「Sorry, Sorry」と何度も頭を下げながらペコペコ謝っている様子を、次の「ペコペコちゃん♪とする〜」や「頭ぺこぺこ 笑顔が流儀」といったところに繋げているのである。

そうして某洋菓子店のマスコットキャラクターを連想させたかと思いきや、「コドモって見る気?」や「甘ったれてるよねまるでキャンディ」のフレーズに繋げ、あの看板商品を彷彿とさせる。それでもって同曲のジャケット写真に描かれているのは、ペコッとお辞儀をしながら、舌をペロッと出しつつ微笑む人のイラストなのだ。あのマスコットキャラを想像せずにはいられないだろう。

花冷え。はそうしたワードセンスをあちこちに散りばめつつ、仕事のストレスを強烈なデスボイスとともにお見舞いしているようなナンバーだ。過密スケジュール管理や馴染めない飲み会、それから業務上で発生する謝罪など、仕事をする上で発生する細々としたストレスを、ヘヴィなサウンドと激しいシャウトをもって解き放っていく。そんな彼女たちの“バズーカ砲”は、リスナーの抱える“負の感情”をもたちまち吹き飛ばしてしまうような威力があるように感じるのだ。

また、曲中に「唯一わくわく日曜日」「遊びたいカマシタイ」「Ah 最近ラッキーハッピーSunday」といった歌詞が出てくるのだが、楽しめる日がほぼ土曜日だけだった自分にとっては、曲中の主人公の気持ちが痛いほど分かるのである。平日は仕事で疲れ切っていたため、ほぼ何もできない日常を送っていた。

“お世話になりました”

ダイエットに失敗したり、買おうとしていた豆腐を買い忘れたり、調味料をこぼしたりと、“グータラ女子”っぷりをこれまで度々見せてきたジェニーハイ。「華奢なリップ (feat. ちゃんみな)」では、赤いリップを塗ることで強くあろうとする女性が描かれていたが、「超最悪」に登場する女性は本当に心から強い女性だと言えるだろう。

この曲に描かれているのは、どんな逆境に立たされようとも決して負けない、不屈の精神を持った“私”である。「何で私だけ詰んでるの でも負けねえ負けねえふざけんな」と冒頭から噛みつきつつ、美容ケアにも抜かりがない。朝も夜も化粧水、しわクリーム、乳液の3点セットを忘れず、さらには余裕があるときに美容液とパックを追加するといった徹底ぶりを見せている。

それもこれも、周りを見返すためだ。この“私”は「台本通りの大人たちに Noを突きつける系女子」であり、「逆襲が始まる音 崖っぷちで鳴っている」といまいる逆境をもポジティブに捉え、それをたちまち跳ねのけてしまうようなロックンロールスピリットを持っているのである。負けず嫌いな自分も思わず頷きたくなった。

“超最悪”に感じたこともいろいろとあったが、会社には感謝の気持ちが大きい。そして、やっとの想いで夢を掴んだからこそ、「私、最幸になってくるぅ お世話になりました」と心の内に秘めた想いを吐露している箇所は痛いほど分かるのである。

 

仕事が上手くいっていない人ならば、共感できることもあったかもしれない。

「どうも。充実した私生活、効率的な仕事ぶり。キャリアウーマンです!」。

そう言える日が自分にも遅かれ早かれ来ることを願っている。