ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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PIGGSの「まじ無理ゲー」から感じた、“ポジティブな無理”精神

“無理”という言葉を避け続けてきたのは、いつからだろう。

筆者は“無理”という言葉が嫌いだったのだ。昔からプライドがやや高いからだろうか。あるいは、負けず嫌いな性格も影響していたのかもしれない。まだまだ秘めているかもしれない可能性を、“無理”と言ってシャットダウンしてしまう。そんな強力なネガティブワード・“無理”から、これまで避けるように生きてきたのだ。

そんな筆者が出逢ったPIGGSの「まじ無理ゲー」という曲は、さまざまな“無理”だと思うことを歌っている曲である。しかしながら、彼女たちの歌う“無理”はネガティブな要素を感じさせない。それどころか、むしろポジティブなチカラを秘めているように感じたのだった。28年目にして、はじめて“ポジティブな無理”の存在を知った瞬間だった。

PIGGSの「まじ無理ゲー」の中には、筆者が苦手だと感じることも歌われている。例えば、朝早く起きることやフォルダ別に整理することなんてまさにそうだ。そういった、人々が“無理”だと感じることを軽快なリズムに合わせて歌っていく彼女たちの歌は、どこか共感できるところが多いように感じただけでない。“まじ無理ゲー”と歌うことでさまざまな人が持つ弱さをいったん受け止め、その上でなんとか前に進もうとする前向きな姿勢をも表現しているように感じたのだ。

 

筆者は今、仕事と必死に戦っている。新聞を読む仕事をしているのだが、平均時間よりもひとつの仕事をこなすスピードが遅く、さらには量も膨大なため、かなり苦戦している状況なのだ。もともと読むスピードは遅めなのだが、さまざまな情報に触れていたくて選んだ仕事である。終わらない仕事と常に戦いながらも、これまで弱音を吐いたことは無かった。

そんなストイックなマインドのもとひたすら走り続けてきたのだが、無理がたたったのか、いつからか体調不良に陥ってしまっている。他の先輩社員さんもものすごい量を抱えているため、弱音など吐いてはいられないと鞭を打っていたのも束の間。やがて定期的に病院に通うまでになってしまうほど、事態は深刻化した。

上司にはこれまで抱え込んでしまっていた、さまざまな悩みについて聞いてもらっている。体調についても、仕事量についても、早めに相談してほしいと言ってくれた。その言葉にどれほど救われただろうか。体調の波はまだあるものの、今ではだいぶ以前のような自分を取り戻しつつある状況だ。

 

そして、この曲の中にも、メンバーたちがやさしく心に寄り添ってくれる箇所がある。“無理ゲーな日々を頑張る君、フレーフレー”、“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ 我慢しないで”と、エールを送ってくれるのである。

“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ”。これまで“無理”だと音を上げることを頑なに禁じ、身体を壊して、ようやく早めのSOSが出せるようになったからこそ分かる、その大切さ。“無理”を受け入れてくれる環境であることも大きいとは思うが、自分自身の弱さを認め、受け入れてあげることで、はじめて前へと進めることもあると学んだ。

“無理”は必ずしも100パーセントの否定や拒絶でなくてよいのだ。限界まで溜め込んで放った黒々とした“無理”ではなく、グレーのような曖昧な“無理”があってもよいと思っている。それはきっと白に塗り替えるための、前向きな“無理”なのである。

そして、むしろグレーな“無理”のほうが重要だと思うのだ。グレーの段階ならまだ白に変わりやすいが、黒まで行ってしまうとなかなか変えられないものだと思っている。だからこそ放つ、グレーな“無理”。“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ だからせーので 叫んじゃおうぜ”とメンバーが歌っているように、“ポジティブな無理”のサインを早めに出していきたい。

以前、ロックバンド・ドラマチックアラスカの「無理無理無理」という曲のインタビューを読んだ際には分からなかった、“ポジティブな意味での無理”といった言葉も、今なら分かる気がした。