ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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とってもダメウーマン! ヤバT、花冷え、ジェニーハイで紡ぐ、崖っぷちOLのとある日々

新卒の際に入社した会社を除き、これまでメディア関連の仕事に携わってきた。

そんなちゃんさき氏だが、自分に合う会社だけでなく、合わない会社に所属していたことも少なくない。

つい先日、最終出社を迎えた企業は後者だった。

こればかりは入社してみないと分からないため、仕方のないことだとは思うが、入社して1週間足らずで仕事内容が肌に合わないと感じたのをよく覚えている。

合わないながらも、3年と少し働いてきたちゃんさき氏。自分なりに頑張りつつも、これまでたくさんのミスをし、時には怒られ、へこたれそうになることもあった。

心に潜むブルゾンちえみさんからも思わず、「とってもダメウーマン!」と指摘されることもあったちゃんさき氏のダメっぷりを、自戒の念も込めて、この記事でポップに昇華させていきたい。

今回は、ヤバイTシャツ屋さん、花冷え。、ジェニーハイの各バンドの楽曲をピックアップ。それでは行ってみよう。

“すみません、ほんまに”

ヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)の楽曲には度々感心させられることがある。

例えば、映画『ニセコイ』のために書き下ろされた「かわE」では、「かわE越して かわF」、「恥ずかC越えて 恥ずかD」といったように“アルファベットを使った古典的な表現”で“アルファベット革命”を巻き起こし、“泡”と“Our”、“Bubble Bubble”と“バブバブ”といった赤ちゃんの発声を掛け合わせるなど、韻を踏んだ言葉遊び巧みな「泡 Our Music」はシャンプーのCMソングに抜擢され、そのキャッチーでポップなメロディをお茶の間に響かせていたこともまだ記憶に新しい。

そんなヤバTだが、EP『こうえんデビュー』の1曲目に収録されている「くそ現代っ子ごみかす20代」の破壊力が半端なかった。20代のことを“ごみかす”呼ばわりしている曲名はもちろん、仕事でダメっぷりを発揮してしまっている歌詞がなんだか大変ニクイのである。まだ“こうえんデビュー(社会にデビュー)”したばかりの新社会人だった頃や、仕事でヘマをしてばかりのいまの自分が自然と重なり、思わず涙腺を崩壊させられた。

この曲に登場する“俺”は「やらんといけんこと全部先延ばすマン」であり、時にはファイルを無くしてしまうダメっぷりも見せ、そんな自分のことを「くそごみかす20代の僕」と自虐しつつも、「それなりに頑張ってはいる」と思っている様子が描かれている。

そんな“俺”は膨大なタスクを抱えるがあまり、仕事の優先順位が上手くつけられずに締切日ギリギリに駆け込む自分とあまりにもよく似ているのである。また、机上がさまざまなモノで散乱し、なかなかファイルを見つけられない自分とも重なった。「すみません ほんまに」と心から思っているものの、あまり改善が見られず、怒られてばかり。しかしながら、それでもがむしゃらに頑張っていた。

“お先に失礼します”

花冷え。の「お先に失礼します。」もまた、“崖っぷちOL”のとある1日を垣間見ているような楽曲である。

まず、この曲の魅力だが、重厚なサウンドに乗せて歌うポップな歌詞がたまらないのだ。「お先に失礼します」といった日本ならではのフレーズを「Sorry, Sorry, I'm sorry, I know now Let's just run away」と彼女たちなりに意訳している点もおもしろい。

そして、そこで止まらないのが彼女たちの魅力だと思っている。おそらく緻密に計算されたであろう、ワードセンスが炸裂しているのだ。「Sorry, Sorry」と何度も頭を下げながらペコペコ謝っている様子を、次の「ペコペコちゃん♪とする〜」や「頭ぺこぺこ 笑顔が流儀」といったところに繋げているのである。

そうして某洋菓子店のマスコットキャラクターを連想させたかと思いきや、「コドモって見る気?」や「甘ったれてるよねまるでキャンディ」のフレーズに繋げ、あの看板商品を彷彿とさせる。それでもって同曲のジャケット写真に描かれているのは、ペコッとお辞儀をしながら、舌をペロッと出しつつ微笑む人のイラストなのだ。あのマスコットキャラを想像せずにはいられないだろう。

花冷え。はそうしたワードセンスをあちこちに散りばめつつ、仕事のストレスを強烈なデスボイスとともにお見舞いしているようなナンバーだ。過密スケジュール管理や馴染めない飲み会、それから業務上で発生する謝罪など、仕事をする上で発生する細々としたストレスを、ヘヴィなサウンドと激しいシャウトをもって解き放っていく。そんな彼女たちの“バズーカ砲”は、リスナーの抱える“負の感情”をもたちまち吹き飛ばしてしまうような威力があるように感じるのだ。

また、曲中に「唯一わくわく日曜日」「遊びたいカマシタイ」「Ah 最近ラッキーハッピーSunday」といった歌詞が出てくるのだが、楽しめる日がほぼ土曜日だけだった自分にとっては、曲中の主人公の気持ちが痛いほど分かるのである。平日は仕事で疲れ切っていたため、ほぼ何もできない日常を送っていた。

“お世話になりました”

ダイエットに失敗したり、買おうとしていた豆腐を買い忘れたり、調味料をこぼしたりと、“グータラ女子”っぷりをこれまで度々見せてきたジェニーハイ。「華奢なリップ (feat. ちゃんみな)」では、赤いリップを塗ることで強くあろうとする女性が描かれていたが、「超最悪」に登場する女性は本当に心から強い女性だと言えるだろう。

この曲に描かれているのは、どんな逆境に立たされようとも決して負けない、不屈の精神を持った“私”である。「何で私だけ詰んでるの でも負けねえ負けねえふざけんな」と冒頭から噛みつきつつ、美容ケアにも抜かりがない。朝も夜も化粧水、しわクリーム、乳液の3点セットを忘れず、さらには余裕があるときに美容液とパックを追加するといった徹底ぶりを見せている。

それもこれも、周りを見返すためだ。この“私”は「台本通りの大人たちに Noを突きつける系女子」であり、「逆襲が始まる音 崖っぷちで鳴っている」といまいる逆境をもポジティブに捉え、それをたちまち跳ねのけてしまうようなロックンロールスピリットを持っているのである。負けず嫌いな自分も思わず頷きたくなった。

“超最悪”に感じたこともいろいろとあったが、会社には感謝の気持ちが大きい。そして、やっとの想いで夢を掴んだからこそ、「私、最幸になってくるぅ お世話になりました」と心の内に秘めた想いを吐露している箇所は痛いほど分かるのである。

 

仕事が上手くいっていない人ならば、共感できることもあったかもしれない。

「どうも。充実した私生活、効率的な仕事ぶり。キャリアウーマンです!」。

そう言える日が自分にも遅かれ早かれ来ることを願っている。

“ロックンロール・ドリーマー”の音色は、今日も鳴り止まない

はじめに

あなたは心の中の“ロックンロール”をかき鳴らしているだろうか――。

“ロックンロール”。“ロック(rock)”と(and)“ロール(roll)”からなるこの言葉。日本語に無理やり訳すとしたら、“石が転がる”である。より分かりやすく表現するとしたら、“意思と意志(rock)”を持って、それを“生かし続ける(roll)”こと、だとも言えるだろうか。

例えばそれは「早くゲームしたいから、それまでに宿題を片してしまおう」といった小さなことから、「編集長になるために絶対にここで頑張ってみせる」といった大きなことまでいろいろあると思うが、定めた目標に向かってひた走っている姿は、みんな“ロックンロール”しているものだと思っている。

先生と私

そんな私には大きな夢があった。中高生の頃から、ずっと英語の先生になりたいと思っていた。自分ならもっと楽しい授業ができると、そう信じてやまなかったのだ。つまらない英語の授業を自分の手で変えてみたかった。だから、私は英語の先生になるために、英語学系の大学への道を選んだのだった。

しかし、入学して頑張りすぎたのである。周りを見渡せば、英語がペラペラな人ばかり。聞けば、高校生まで海外に住んでいたと言う。小学生の頃、帰国子女だった私とは比べものにならないほどの差があったのだ。その差を少しでも縮めるために、寝る間も惜しんでひたすら勉強していたのだが、2~3時間睡眠の生活は長らく続かなかった。大学1年生のときから統合失調症に苦しむこととなり、少しでも身体への負荷を減らすため、教職はあえなく断念した。大好きだった音楽も、ゲームも、読書も。すべて受け付けられなくなるほど、身体は既に限界だったのだ。これ以上、“ロール”したくともできなかった。

人間開花

そんな日々が半年から1年ほど続いたのだが、大学2年生は明るかったことを覚えている。講義は児童文学を楽しく受講していた他、サークルは卓球とダブルダッチを掛け持ちし、何かと充実した日々を送れていたのだ。そして、この頃からだろうか。卓球サークルの先輩方と徐々に親しくなっていき、サークル終わりにカラオケに直行。これまで洋楽やK-POPを主に聴いてきた私にとって、先輩方が歌う、RADWIMPSマキシマム ザ ホルモン、back numberなどの邦楽ロックアーティストの選曲はどれも新鮮だった。おすすめを聴いては、CDショップへと出掛けていく。そんな生活を送っていた。これが私のバンドとの出逢いである。KANA-BOONを好きになったのも、この時期だろう。

そして迎えた、大学3年生。エントリーシートの書き方を学んだり、SPIの勉強をしたりと、就職活動が本格化する中、ひと皮剥ける出来事があった。それが、自己分析である。自分の好きなことや好きなものをノートに書き止めながら、それぞれの好きな理由を深掘りしていたのだが、英語の先生にはなれなくとも、かねてから書くことが好きだったこと、そして読書も好きだったことから、出版の道を目指せるのではないかという希望の光がどこからともなく差し込んでくるのを感じた。

半ば反骨精神から抱いた夢は、これを機に自分の“好き”というポジティブな想いあふれる夢へと切り替わっていく。この自己分析を徹底的にやっていたからこそ、今があると言っても過言ではない。再び日々が“ロック”していくのを感じたのだった。第二章の幕開けである。

それからの私は、ひたすら音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだりとインプットを欠かさなかった他、これまで勤めてきた塾講師のアルバイトを辞め、エンタメライターとしての一歩を踏み出したのである。プロの書き方を少しでも学ぶためだ。そうして大学3、4年生の日々はあっという間に過ぎていったのだが、出版社は全落ち。複雑の気持ちのまま大学を卒業し、なぜか気に入ってもらえた教育系の会社に就職した。そこで働きながら夢を追いかけ続けた結果、某出版社から「内定」を出してもらうことができた。記者としての道が拓けた瞬間である。9月11日のことだった。

言霊

記者として働いていた日々は本当に楽しいものだった。担当しているドラマの記事執筆から、ドラマ出演者へのインタビュー。何より音楽イベントに取材に行き、ライブレポートを書くことがこの上なく楽しかった。そして、未だに思い出すのが、その会社の採用面接である。今後のキャリアプランを聞かれた私は「編集がやりたい」、「編集長になりたい」とそう答えたのだ。

面接官は皆、笑っていた。本気になんてしていなかったのだろう。しかし、私は違ったのだ。至って本気の回答だった。私には大学生の頃から抱き続けた夢が3つあるのだ。ひとつがライター、もうひとつは編集者。そして3つ目は小説家だ。まずはライターになり、ゆくゆくは編集者になりたかったのである。だからこそ、誰よりも記者の仕事をこなしていた自負があったのだ。しかし、残念ながらその会社では叶うことは無かった。いろいろとあって退職してしまったのだった。

その後、100社以上、クリエイティブ系の仕事に携われる会社に応募するも、結果はまたしても全落ち。すべてお祈りされる結果となってしまった。それでも、あの日蒔いた夢の種だけはしっかりと育っていく。このブログを始めても、現在の仕事に就いても、編集がやりたいという想いは消えることなどなかった。しかし、今。その夢も掴むことができたのである。あの頃笑われた編集がやりたいという夢が、今、再び輝き出したのだ。何度挫けようとも、そのたんびに立ち上がってきたからこそ、今があると思っている。これから先の光景が非常に楽しみである。

“ロックンロール・ドリーマー”の音色は、今日も鳴り止まない。

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【年間ベストソング2022】ちゃんさきが選ぶ、マイベスト10選

明けましておめでとうございます。

早いもので、時は2023年の1月。2022年もさまざまな楽曲がリリースされ、多くの媒体やジャーナリスト、ライターからブロガーまで、音楽を愛する人たちが既に年間ベストを発表している中、遅ればせながら、今、昨年の年間ベストを上げようとしている。

アイドルソングについてはこちらにて記事化しているため、この記事では割愛するが、今回もよかったと感じたものを10曲ピックアップした。

独断と偏見で選んだ、マイベスト10選。愉しんでいってもらえたらうれしい。

サカナクション「フレンドリー」
フレンドリー

フレンドリー

新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るうようになり、社会全体が自粛ムードに包まれてしまうこともあった。そんなときからだろう。日本に定着している“空気を読む”といった独自の文化が時に“同調圧力”へと変貌を遂げてしまう様子を、主にSNSで見かけるようになった。気晴らしのつもりで呟いた内容でも、批判や否定をする声がしばしば見受けられる。また、そのような投稿者に対する、不満や怒りの声も後を絶たない。そんな日常になってしまった今を反映しているように思ったのが、サカナクションの「フレンドリー」である。「正しい 正しくないと 決めた虚しさ そう 真っ暗になる」や「左右 行ったり来たりの 水と泥の淀」といったフレーズは、そうしたSNSで行われるやりとりを表現しているかのように感じ、一郎さんは互いの相違点をも認め、尊重する大切さをやんわりとこの曲で“主張”しているように思ったのだ。この曲を「フレンドリー」と名づけた背景には、そういった一郎さんの優しさが反映されているのではないだろうかと思っている。

4s4ki「Punish」

ハイパーポップアーティストとして取り上げられることも多い4s4kiだが、そうカンタンに紹介してしまうのは野暮のように思う。というのも、“ハイパー”も“ポップ”もポジティブなニュアンスを持つワードであり、4s4kiが内に抱える“負の感情”の部分を無視してしまっているように感じるからだ。4s4kiはそうした“陰”、それからエレクトロやトラップ、ポップスなどの“陽”を感じさせる明るめのサウンドも混ぜ込んだ楽曲をリリースしているからこそ、国境を越えて、さまざまな人の心を掴んで離さないのだろう。だからこそ、いまのところ4s4kiにしっくりくるワードが無いように思うのだ。

今回マイベストに選んだ「Punish」は一見、ネガティブな“顔”が全面に押し出されているように感じるが、間奏パートでは思わず踊りたくなってしまうような、ドラムンベースダブステップなどの“陽”を感じるサウンドも混ぜ込んでいるところがおもしろい。体調不良になって響くものが多かった、4s4kiの歌。とりわけ“地獄”の中でも“篝火”を求めるという、まさにいま抱えるネガティブな感情に共鳴した「Punish」をセレクトしたが、4s4kiの創る音楽にはいつだって弱りきった心に寄り添ってくれるやさしさがあるように感じる。

Lucky Kilimanjaro「地獄の踊り場」
地獄の踊り場

地獄の踊り場

  • Lucky Kilimanjaro
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

コロナ禍や戦争など、ここ最近の世の中はどんよりとした空気に包まれているように感じるのだが、その時々の時代背景や自己の内面と向き合いつつも、「世界中の毎日をおどらせる」というテーマが決してブレることのないバンド・Lucky Kilimanjaroは、どんなに暗い気分でいても心を躍らせてくれる。そう感じたのが「地獄の踊り場」である。ボーカル・熊木幸丸が「いつだって強くない いつだってギャルじゃない 誰だって地獄があって 抜け出せない闇があるでしょう」と弱った心にやさしく語りかけるように歌うその声には思わず頷きたくもなってしまうが、その上で「そんな気分 あっていい気がして」と何度も肯定してくれるのだ。本能のままに“踊る”ためには、自分の弱さを認めないのではなく、受け入れてはじめて自分の心の赴くままに“踊る”ことができるのではないだろうか。最初は“不器用な踊り”になってしまうかもしれないが、自分の本心に向き合いながらも“踊る”ことで、やがて本来の“自分らしい踊り”を取り戻すことができる気がした。

THE ORAL CIGARETTES「BUG」

開始早々、クセになるリズムパターンを刻んだ電子音の“光線銃”をこれでもかと放ちまくる、オーラルの「BUG」。その間およそ50秒と非常に長く、パッと思い浮かんだイントロの長い曲の中でも、アジカンの「Re:Re:」以上、浜崎あゆみの「Mirrorcle World」以下を記録している。しかしながら、最初の電子音に次々と重なるようにして女性のボイスや楽器隊のサウンドが乗せられていくさまは、その長さを感じさせない。それどころか、大変ワクワクさせられるのだ。そんな印象的なイントロを持つ「BUG」だが、この曲から感じたのはおかしくなった世界にがむしゃらに抵抗しているようなロックスピリットである。これまでロックチューンで攻めることの多かった彼らが、電子音という新しいサウンドを取り入れながらも、やはり魂の部分ではロックをかき鳴らす。そんな姿勢がたまらなくカッコよいのである。また、コロナ禍以降のバグった世界でも、オーラルは新しい方法をもって理想的な未来や観たい景色が創れることを先導して証明してくれているように感じた。

chelmico「ISOGA♡PEACH

chelmicoがリリースしたアルバム『gokigen』の中で、とりわけ気に入っている曲が「ISOGA♡PEACH」である。可愛らしいサウンドとは裏腹にネガティブな感情が爆発している歌のちぐはぐさは、まさに忙しすぎて混乱している人の脳内そのもの。時折聴こえる木琴のような音も入ったそのピコピコとしたサウンドは一見“ゆめかわいい”ようにも感じるが、歌をじっくりと聴いた上で再生してみると、鳴り止まない携帯の着信音のようにも聴こえてくる。この曲で“私”が「スケジュールと格闘 いつ空いているの?って そりゃ会いたいよ 私も同じよ」「来週また来週毎度リスケです。」と言っているように、休日も返上して働いているのだろうかとすら思えてくるのだ。

そんな忙しさを曲にした「ISOGA♡PEACH」からは、“本当にご機嫌ですか?”というchelmicoからの“問い”が聴こえてきそうだ。働き方改革を実施している企業が多いとはいえ、サービス残業や休日出勤が“当たり前”だからとそれらを行ったり、周りが頑張っているからと自分も合わせたりと、働き方に対する意識が変わっていない人も決して少なくない。仕事を頑張ることはひとつの“正義”なのかもしれないが、自分を“gokigen”にすることも立派な“正義”であると堂々と胸を張って言える社会に世界全体がなっていってほしいと願っている。そしてそう考えているのは、chelmicoも同じのように思うのだ。

NEE「本日の正体」

「本日の正体」が流れ始めて、わずか5秒足らずでNEEだと分かる。そんな特徴的なサウンドこそがNEEの“強み”だと思っているのだが、この曲のもうひとつの魅力はその歌詞にあると思っている。曲中の“僕”が度々口にし、曲名にもなっている“本日の正体”の意味や解釈は婉曲的に書かれているため、リスナー一人ひとりの判断に委ねられているように感じるのだが、おそらく“僕の弱さ”のことを指しているのではないだろうか。人に嫌われるのが怖い自分、自分は間違っていないと疑わない自分、愛されたいだけの自分など、時に臆病になってしまうがゆえに出てきてしまう人もいる“さまざまな弱さ”を“僕”が代弁しているように感じるのである。だからこそ、“本日の正体”は“いつでも目の前で泣いている”上に、“誰よりもソッと静かに見守るの”であって、“確かに僕の内側でまだ 臆病に脆く弱く生きて居る”ものであるとも思うのだ。

[Alexandros]「Baby's Alright」

昨年放送されたドラマ『六本木クラス』の主題歌を担ったのが[Alexandros]で良かったと思うのである。炎上騒動や改名、元ドラマーの“サトヤス”こと庄村聡泰の“勇退”など、いろいろ経験してきた彼らだからこそ、『六本木クラス』で竹内涼真さん演じる宮部新がリベンジを果たすべく奮闘する姿と、どこか重なっているところがあるようにも感じたのだ。プロデューサーはドロスのファンなのだろうかと思ったほど、ドロスにこのドラマの主題歌をオファーしたのはあまりにも優秀なように感じただけでなく、そのプロデューサーの期待にちゃんと応えているドロスもまた流石だと言いたい。アーティスト側がドラマの世界にどっぷり染まった主題歌を提供していることも少なくない中、両者の世界観が合致したような「Baby's Alright」は、ドラマを観ていない人も、バンドをあまり聴かない人も楽しめる、“いいとこ取り”ができる楽曲のように感じた。そんなこの曲は、昨年リリースされたドラマ主題歌の中で、個人的ナンバーワンを誇っている。

Fear, and Loathing in Las Vegas「Get Back the Hope」

友だちと気軽に逢えない、ライブもできないなどの、これまでの我慢だらけの日々に対するストレスや鬱憤を一気に爆発させ、加速していくようなアグレッシブさを持っているのが、この曲。アルバム『Cocoon for the Golden Future』の1曲目に収録された「Get Back the Hope」である。それもそのはず。ベガスはおよそ3年間、アルバムをリリースしてこなかったのである。血がたぎっているのも納得できるだろう。そして、この曲は内に溜め込んだ不満を解き放っているだけでなく、「Take back that was ours(意訳:私たちの日常を取り戻せ)」「Don't need to make a stop Just keep running(意訳:止まる必要などない、走り続けろ)」とリスナーを鼓舞してもくれるのである。この3年間でしぶしぶ抑えてしまった“衝動”や“想い”を着火させていくような力強さがあるこの曲は、きっと一人ひとりのリスナーの心も突き動かしてくれるのではないだろうか。

ジェニーハイ「超最悪」

ジェニーハイが“強い女性”をテーマにした曲は、これがはじめてなのではないだろうか。例えば「華奢なリップ (feat. ちゃんみな)」では、傷心中の“私”が赤いリップを塗ることで強くあろうとする女性らしい姿が描かれているが、最後に彼女が「強くなるから」と言っているように、強がっているだけで決して強くはないことが伝わってくる。また「ダイエッター典子」では、スタイルが良い女性を見ていたパートナーに対し、「すっとぼけてんじゃないわよ」「あんた他の女見てたでしょ」とお怒り気味のその口調は強いものの、ダイエットのやる気が出ずに、最後は「タピオカ摂取できないよりは できる幸せを掴みたい」とタピオカ大好きな“私”が自分に負け、ダイエットを諦めてしまう姿が描かれている。

そんな中、ジェニーハイが「超最悪」で放ってきたのは、どんな逆境に立たされようとも決して負けない、不屈の精神を持った強い女性だ。冒頭から「何で私だけ詰んでるの でも負けねえ負けねえふざけんな」と吠える、ボーカル・イッキュウさんのパンクな歌声からも既にひしひしと伝わってくるように、この曲に登場する“私”は“負の感情”を抱けば抱くほど、それをたちまち原動力へと昇華させてしまうようなロックンロールスピリットを持っている。この曲をもって新たな一面をさらけ出してきたジェニーハイから、ますます目が離せなくなりそうだ。

水曜日のカンパネラ一寸法師
一寸法師

一寸法師

水曜日のカンパネラの音楽担当・ケンモチヒデフミ。彼の魅力は何と言っても、昔話やおとぎ話に登場する人物から歴史上の偉人まで、ある特定の“人”についてさまざまな想像力を膨らませながら作詞しているところだと思うのだが、xiangyuやfemme fataleの他、これまで多くのアーティストのサウンドプロデュースを手掛けてきた中で、詩羽ちゃん率いる“新生”水曜日のカンパネラがスタートするまで、その彼の“得意分野”である人物をテーマにした楽曲は提供していないところが非常にポイントの高いところだと思っている。2021年にリリースされたシングル「アリス / バッキンガム」や「招き猫 / エジソン」で、改めてケンモチさんのその“強み”に気づかされたが、収録曲の半分以上が人物を占める昨年のアルバム『ネオン』でそれが確信へと変わった。

今回ピックアップした「一寸法師」では、およそ3.03cmの小さな主人公が5人おり、「一寸暴威(一寸ボーイ)」と名づけたアイドルグループをやっているという、『御伽草子』の作者もひっくり返るような、斬新なストーリーが描かれているのだ。題材となった人物を増やすといった新たな試みがおもしろいだけでなく、一寸暴威のメンバー一人ひとりが持つ熱い魂と、芯の強さを感じる詩羽ちゃんの歌声、それからグルーヴ感のあるサウンドが重なり、最高のハーモニーを生み出しているように思っている。アルバム『ネオン』の中でもひと際魅力が光り輝いているように感じた1曲だ。

終わりに

愉しんでもらえただろうか。

最後に目次を記しておくので、気になった曲はぜひ聴いてみてほしい。

今年もよろしくお願いします。

【第11回アイドル楽曲大賞2022】この1年を彩った、ちゃんさき的ベストセレクションはコレだ

1年もそろそろ終わりに近づく頃、全国のアイドル好きが密かに楽しみにしている“冬の風物詩”がある。それが、アイドル楽曲大賞だ。

1年間にリリースされたさまざまな女性アイドルの曲の中から、メジャーアイドル楽曲部門、インディーズ/地方アイドル楽曲部門、アルバム部門、推し箱部門の4つの部門にそれぞれ自分が好きな曲やアーティストを投票して順位が決まるのだが、順位付けをあまり好まない筆者でも、これまで出逢ったことのなかった曲やその魅力を知る良いきっかけとなっているため、関心度が非常に高いのである。

実は2年前から密かに参加しているのだが、このブログで紹介してきた年間ベスト記事と被ることもあったため、これまで敢えて記事化してこなかったのだ。

しかしながら、今年はお家に引きこもっている時間が増え、さまざまなアイドルが歌う楽曲をいつもよりも聴いてきたように感じたことから、3回目となる今回の投票をもってはじめて記事化してみることにした。各部門にピックアップした楽曲やアーティスト、それからその選出理由を記載してみたので、愉しんでいってもらえたらうれしい。

独断と偏見で選んだ、ちゃんさき的ベストセレクション。それでは、行ってみよう。

メジャーアイドル楽曲部門

乃木坂46「絶望の一秒前」
絶望の一秒前

絶望の一秒前

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「絶望の一秒前」という強烈なタイトルを掲げる、乃木坂46新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから3年が経とうとしているが、その中で希望を感じられなくなってしまった人も少なからずいると思っている。この曲はそんな人たちに向けて、「結局は君自身 どうしたいか聞こう」と、乃木坂なりの“ヒント”を与える歌だと思うのだ。本当に絶望してしまうと、ポジティブな想いや考えなどがシャットアウトされてしまうものだと思うのだが、希望がまだ見える状態のときにぜひこの曲を聴いてみてほしい。きっと君に何かしらの“原動力”を与えてくれるはずだ。

BiSH「サヨナラサラバ」

BiSHがBiSHらしくいられるために、彼女たちを縛るすべての鎖を引きちぎっていくような力強さがある「サヨナラサラバ」。例えば、“空気を読む文化”に対して、彼女たちは物怖じせず噛みついていく。曲中には「何が良い?何がダサい?」などと他人の顔や世間の目を必要以上に気にしているような人の描写があるのだが、それに対し彼女たちは「誰の為のそのルール」「もう逃げ道はいらない」と堂々と“NO”を突きつけていくのだ。自分は自分、他人は他人と割り切って、我が道を貫いていくようなBiSHの「サヨナラサラバ」。彼女たちの“抗い”に、強く胸を打たれずにはいられなかった。

櫻坂46「摩擦係数」

「摩擦係数」では、BREAKも取り入れたムーブに、森田ひかるちゃんと山﨑天ちゃんのWセンターという新たな試みに挑戦している、櫻坂46。欅坂46時代から引き継ぐ、パンチの効いたメッセージ性の強い曲でセンターを務めることの多いひかるちゃん。一方で、天ちゃんは、愛を持って主張していくような楽曲でセンターを担うことが多いように感じる。そんな一見、“対照的”に見えるふたりが、まさに“ぶつかり合って わかり合おう”としているかのごとく、熱いバトルを繰り広げながらもしっかりと握手を交わす。そんなふたりの踊りが表現しているように、きちんと話し合うことで見えてくるものもあるだろう。

LE SSERAFIM「FEARLESS」

LE SSERAFIMがデビュー曲「FEARLESS」で魅せる“切れ味”はさることながら、丹念に作り込まれたこの曲から目が離せなかった。例えば、サビの、まるで壁からこっそりチラ見している人を表現しているかのようなダンス。さらには、まさに“何見てるの?”とでも言っているかのような彼女たちの意思の宿る瞳まで、すべてが「What you lookin' at?」と歌っているところに繋がっているように感じるのだ。そして、これだけ恐れ知らずな姿が描かれていながら、可愛らしさや強烈な個性も持ち合わせているルセラ。そんなガールズクラッシュの路線に決して乗っているわけではないように感じるところにも、おもしろみを感じている。

mzsrz「夜明け」

mzsrzの「夜明け」は、一人ひとりが抱える辛さや悩みにそっと寄り添いつつ、やさしく背中を押してくれるような1曲だ。「逃げよう さあ今日がやってきた」という歌詞は、Aメロでは現実から逃げてもいいという肯定的なメッセージに捉えることができるが、Bメロでは自分の夢や希望などに向かってひた走る様子が浮かび、それは世間の求める姿からの“前向きな逃げ”であることが伝わってくる。“夜明け”への道のりは自分にしか分からないものだと思うのだが、彼女たちの歌はいま抱える“負の感情”を和らげ、その胸に勇気や希望の灯をつけてくれるだろう。

インディーズ/地方アイドル楽曲部門

PIGGS「まじ無理ゲー」

“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ”というフレーズに救われた3ヶ月間だったといっても過言ではない。PIGGSが「まじ無理ゲー」の中で歌う“無理”は、限界まで溜め込んで放った言葉ではなく、ずっと気軽でライトな“無理”である。これまで「無理!」と音を上げることを禁じ、身体を壊してから気づいた、そのライトな“無理”の大切さ。その「無理!」は、自分自身の弱さを認め、受け入れてあげることで、はじめて前進できる言葉であることに気づいたのだった。自分自身に厳しい人こそ、この曲をぜひ聴いてみてほしい。

On the treat Super Season「超超超」
超超超

超超超

  • On the treat Super Season
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月に一度訪れる“レディースデー”などから、女の子は時々、自分の中に居る“怪物”を飼いならしながら生きている、と思っている。まさに“調子の賞味は生物”であり、“調子って続かない”ものだと思うのだ。それにしても、とにかく今年は身体の調子がよろしくない1年だった。そんな不調が続く自分の影を、「踏み付ける」と歌うところでメンバーと一緒に飛び、踏み付けていくのである。まるで体調不良の原因を根こそぎ消滅させたかのごとく、爽快な気分になれる1曲だ。理不尽なことでも思い浮かべながら、ぜひライブでおすしと一緒にやっつけてしまってほしい。

Devil ANTHEM.「ソノサキ」

“日々、最高を更新する”。その想いをたぎらせながら、実際に常に最高を更新しているデビアンだからこそ、“夢”について語らせたら右に出るアイドルはいないと思っている。「ソノサキ」はまさに、デビアンが強みとしている“夢”について歌った曲だ。隠しきれない夢への想いがあふれて、その落書きをしているところ。そして、その落書きを現実にするために、どんどん加速していくところ。これらは夢を追いかけている人たちにもきっと響くだけでなく、ここ数年でものすごい勢いで駆け上がっていった彼女たちの姿が自然と浮かぶシーンである。さらには、2023年5月に念願のメジャーデビューも果たす彼女たち。これをもって第2章へと突き進む、デビアンの躍進劇が止まらない。

アンスリューム「かわゆすギルティ」

推しに対して“かわいい”と感情が高ぶる様子を、カオスティックな歌とキャッチーなサウンドで表現したような、アンスリュームの「かわゆすギルティ」。推しへの愛があふれるあまり、他の子への“かわいい”という反応を見るたんびにメンタルがすり減ってしまったり、今度は“愛の投げキッス”をお見舞いしたりと、その荒ぶりようはまさに深夜テンション。また、曲中にはとんでもない速度で流れていく思考回路を描いたような早口言葉が織り交ぜてあったり、乙女な主人公が自分自身をペットに例えたりと、彼女の愛にはブーストが掛かりまくっている。傍から見たら狂気かもしれないその深夜の暴走劇も、MVではメンバーたちがかわいく描いているため、ほっこりとした気持ちになれるだろう。

HO6LA「さよなら雷火」

苺りなはむが、後輩であるパンルナリーフィの“武道館に立ちたい”という夢を叶えるべく発足したHO6LA。そして、そのパンちゃんのメンバーカラーである水色を彷彿とさせる“雷火”というワードを曲名に入れた「さよなら雷火」は、まさにパンちゃんのために作られた曲だと思うのだ。雷火が徐々に激しく燃え盛っていくようなサウンドは、パンちゃんの夢に共感した他のメンバーとともに狼煙を上げていく姿が浮かぶ。また、この曲で歌われているのは“なりたい僕”になるために心の灯火を燃やしていくような、非常に前向きで希望を感じさせるものである。その後、メンバー一人ひとりが新たな道を歩むこととなったHO6LA。今でも、それぞれの夢を追いかけ続けてほしい。

アルバム部門

ばってん少女隊『九祭』

このアルバム1枚でまるで九州一周旅行に行った気分になれる、ばってん少女隊の『九祭』。九州各県の魅力がたんまり詰まった歌詞、それからこだわりを感じるサウンドで彩られた楽曲たちが並ぶ同アルバムは、コロナ禍などの現在の不安定な世界で感じる“不安”を吹き飛ばし、たちまち“楽しい(fun)”気持ちにさせてしまおうといった前作『ふぁん』のコンセプトを引継ぎつつも、さらにパワフルにアップデートされたものとなっているように感じた。それは初っ端から韻を踏み倒し、時には本格的なラップパートも構えた、遊び心尽くしなリード曲「御祭sawagi」からだけでもひしひしと伝わってくるものがあるだろう。“九州を盛り上げたい”という想いで活動している彼女たちの、“渾身の作”を聴いてほしい。何らかの事情があり、まだ自由に旅行できない人たちにも、ばってん少女隊の歌は一人ひとりが想い想いに羽ばたける翼を授けてくれるはずだ。必要なのは「再生」ボタンひとつだけ。旅費も掛からずに、九州までひとっとびである。

buGG『buGG PuCKS』

色とりどりのお菓子たちがひとつのパックとなっているジャケ写が印象的な、buGGの『buGG PuCKS』。そのポップな“商品画像”だけでも既に手に取りたくなってしまうかもしれないが、一つひとつの個性的な“味”がそれを掴んで離さなくさせるのである。「絶体絶命!レレレbuGGミッション」では、メンバーたちが楽しそうにしりとりをする輪の中に自分も混ざっている感覚になれたり。“負の感情”に飲み込まれそうになってしまったときには「My War」で昇華できたり。絶望しても、感情的な気分に浸ることができる「Hydrangea」が、再び希望や勇気をじんわりともたらしてくれたり。元気が出るキャッチーな楽曲を中心に、バラエティに富んださまざまなトラックたちが1枚にぎゅぎゅっと詰め込まれた同アルバムは、お腹が空いたときにお菓子を食べることでお腹も心も満たされるあの感覚のように、不足したエネルギーをハートまで届けてくれるのだ。まだ味わったことのない人も、この機会に“かさばることのないお菓子”を試してみてはいかがだろうか。この詰め合わせパックは、心をきっと満たしてくれるだろう。

Quubi『Gene』

ロックテイスト調の楽曲が揃う、Quubi待望のファーストアルバム『Gene』。Quubiの“代名詞”ともいえるこのアルバムは、彼女たちの持つ最大HPで強烈なストレートを思いっきり喰らった感覚になった。特にアルバム中盤の「Pump It」から「Still Walking」の流れが凄まじい。「Pump It」は、アグレッシブな打ち込みからの変態ベースという痺れる曲始まり。そんなリズム隊に負けない熱量で畳みかけていくメンバーの魂感じる歌声、それから煽り気味なラップパートも挟む姿からは“攻めの姿勢”しか感じないのである。再び迫りくる変態ベースからの華麗なるギターソロも、パンチが効いている。ノックアウト寸前なところで、「Still Walking」をドロップしていく彼女たち。穏やかな曲かと思いきや、シンセが響き渡る3拍子の変調パートを挟むという、まさかのフェイントを仕掛けてくるのがたまらないのである。ジャケ写からは九尾の狐の咆哮が聞こえてきそうだが、リスナーからは思わず唸り声が漏れてしまうに違いない。

推し箱部門

On the treat Super Season

“おすしハードコア”というそのキャッチコピーにふさわしいメンバーたちの、それぞれの“核”が光り輝くこのグループ。それは何もパフォーマンスから感じられるだけでなく、SNSからも一人ひとりの個性が強烈に伝わってくるのだ。楽曲はメッセージ性が感じられるものから、遊び心満載なものまでさまざまなため、幅広く楽しめる。この機会にぜひ“旬のご馳走”を味見していってもらえたらうれしい。

終わりに

ちゃんさき的セレクション、いかがだっただろうか。
残念ながら入りきらなかった曲もいくつかあるのだが、楽しんでいってもらえたらうれしい。
最後に目次を記しておくので、この機会にぜひ気になった曲をチェックしてみてはいかがだろうか。

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PIGGSの「まじ無理ゲー」から感じた、“ポジティブな無理”精神

“無理”という言葉を避け続けてきたのは、いつからだろう。

筆者は“無理”という言葉が嫌いだったのだ。昔からプライドがやや高いからだろうか。あるいは、負けず嫌いな性格も影響していたのかもしれない。まだまだ秘めているかもしれない可能性を、“無理”と言ってシャットダウンしてしまう。そんな強力なネガティブワード・“無理”から、これまで避けるように生きてきたのだ。

そんな筆者が出逢ったPIGGSの「まじ無理ゲー」という曲は、さまざまな“無理”だと思うことを歌っている曲である。しかしながら、彼女たちの歌う“無理”はネガティブな要素を感じさせない。それどころか、むしろポジティブなチカラを秘めているように感じたのだった。28年目にして、はじめて“ポジティブな無理”の存在を知った瞬間だった。

PIGGSの「まじ無理ゲー」の中には、筆者が苦手だと感じることも歌われている。例えば、朝早く起きることやフォルダ別に整理することなんてまさにそうだ。そういった、人々が“無理”だと感じることを軽快なリズムに合わせて歌っていく彼女たちの歌は、どこか共感できるところが多いように感じただけでない。“まじ無理ゲー”と歌うことでさまざまな人が持つ弱さをいったん受け止め、その上でなんとか前に進もうとする前向きな姿勢をも表現しているように感じたのだ。

 

筆者は今、仕事と必死に戦っている。新聞を読む仕事をしているのだが、平均時間よりもひとつの仕事をこなすスピードが遅く、さらには量も膨大なため、かなり苦戦している状況なのだ。もともと読むスピードは遅めなのだが、さまざまな情報に触れていたくて選んだ仕事である。終わらない仕事と常に戦いながらも、これまで弱音を吐いたことは無かった。

そんなストイックなマインドのもとひたすら走り続けてきたのだが、無理がたたったのか、いつからか体調不良に陥ってしまっている。他の先輩社員さんもものすごい量を抱えているため、弱音など吐いてはいられないと鞭を打っていたのも束の間。やがて定期的に病院に通うまでになってしまうほど、事態は深刻化した。

上司にはこれまで抱え込んでしまっていた、さまざまな悩みについて聞いてもらっている。体調についても、仕事量についても、早めに相談してほしいと言ってくれた。その言葉にどれほど救われただろうか。体調の波はまだあるものの、今ではだいぶ以前のような自分を取り戻しつつある状況だ。

 

そして、この曲の中にも、メンバーたちがやさしく心に寄り添ってくれる箇所がある。“無理ゲーな日々を頑張る君、フレーフレー”、“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ 我慢しないで”と、エールを送ってくれるのである。

“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ”。これまで“無理”だと音を上げることを頑なに禁じ、身体を壊して、ようやく早めのSOSが出せるようになったからこそ分かる、その大切さ。“無理”を受け入れてくれる環境であることも大きいとは思うが、自分自身の弱さを認め、受け入れてあげることで、はじめて前へと進めることもあると学んだ。

“無理”は必ずしも100パーセントの否定や拒絶でなくてよいのだ。限界まで溜め込んで放った黒々とした“無理”ではなく、グレーのような曖昧な“無理”があってもよいと思っている。それはきっと白に塗り替えるための、前向きな“無理”なのである。

そして、むしろグレーな“無理”のほうが重要だと思うのだ。グレーの段階ならまだ白に変わりやすいが、黒まで行ってしまうとなかなか変えられないものだと思っている。だからこそ放つ、グレーな“無理”。“辛い苦しいたまらない時は「無理!」って言っても いいんだよ だからせーので 叫んじゃおうぜ”とメンバーが歌っているように、“ポジティブな無理”のサインを早めに出していきたい。

以前、ロックバンド・ドラマチックアラスカの「無理無理無理」という曲のインタビューを読んだ際には分からなかった、“ポジティブな意味での無理”といった言葉も、今なら分かる気がした。