ミュージック バンク

ミュージック バンク

感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

MENU

BABYMETALが灯し続ける“希望の光”

はじめに

新型コロナウイルスの影響で、数々のライブやイベントが中止や延期を発表している。

感染拡大防止のために求められている、不要不急の外出、および密閉空間・密集場所・密接場面の「3つの“密”」の回避は、やはりエンターテインメント業界にとって痛手が大きいだろう。

しかし、そんな中でも、世の中に“希望の光”を灯そうと奮闘しているアーティストがいる。

打首獄門同好会は無観客ライブを実施し、Twitterのトレンドで彼らの名がトップに躍り出るほどの大成功を遂げていた。

サカナクションは、彼らにとって初となるライブ映像作品「SAKANAQUARIUM 2010」や、初めて6.1chサラウンドを導入した「SAKANAQUARIUM 2013」などを次々と配信しており、こうしたライブ映像は毎週土曜日よる21時から自宅で愉しむことができる。

また、星野源は楽曲「うちで踊ろう」を自身のInstagramで公開。その後、三浦大知香取慎吾岡崎体育などのアーティスト、高畑充希渡辺直美などの芸能人、さらにはハローキティガチャピンなどのキャラクターもこの曲のコラボ動画を発表し、大きな反響を呼んでいる。

そしてBABYMETALも、世の中を音楽で活気づけようとしているアーティストのうちの1組である。

STAY HOME, STAY METAL

4月8日。「LET'S MOSH'SH AT HOME!」という文言とともに突如更新されたBABYMETALのTwitterには、2枚の画像が添付されていた。

「STAY HOME, STAY METAL」と書かれたものと、東京ドーム公演時のライブ映像がYouTubeで観ることのできるという告知画像だ。

2日間に渡り開催された同公演。初日の「RED NIGHT」と2日目の「BLACK NIGHT」でひとつの物語が構成されており、1stアルバム『BABYMETAL』と2ndアルバム『METAL RESISTANCE』収録曲を被りなしで全て披露するという圧巻のライブを行っている。

それにしても、なぜBABYMETALはこのタイミングに東京ドーム公演のライブ映像を配信したのだろうか。

それは音楽を通じて世の中を元気づけたいから、という想いももちろんあるだろう。しかし、それよりも感じたのは、同ライブで展開されている物語が今のご時世と重なっているように思ったことだ。このストーリーに込められたメッセージをいま人々に伝えたかったからこそ、このライブ映像を配信することに決めたのだと思う。

東京ドーム公演のストーリーに感じた想い

2日目が具体的なストーリーを説明しているように感じたのに対し、初日は物語の大枠を伝えているように思った。

初日の「RED NIGHT」では、BABYMETALがダークサイド(闇の世界)に導かれていたものの、やがてダークサイドとライトサイド(光の世界)の両方に通じる覚醒が起こったことが途中の紙芝居(※アニメーション動画の通称)で説明されている。

そして、迎えた翌日の「BLACK NIGHT」。「己の過去を乗り越えることによって、新たな伝説が生まれるのだ」という紙芝居後、展開されるストーリーに今伝えたいメッセージがふんだんに詰め込まれているように思う。

“魔物”を飼いならす必要性

例えば途中の紙芝居で、“怒り”について触れているシーンがある。「“怒り”――それは時として強靭かつ強大な炎へと豹変し、この世の全てを焼き尽くす魔物である」というナレーションが流れる場面だ。

さまざまな自粛が相次いでいる今、苛立ちや不満などのストレスに押しつぶされている人は少なくない。それに伴い、家庭内暴力や虐待などの被害も増加しているそうだ。また、SNSでは否定や批判などで誰かを攻撃している人をよく見かけるようになった。“怒り”は、本当に“魔物”なのかもしれない。

この状況が続くとどうなるのだろうか。紙芝居では「神は人間が抱くその怒りを、心の奥底へと沈め封印した」「神の怒りは強大な嵐を巻き起こし、この世の全てを洗い流した」と続く。深夜に起きた関東地方での地震は、もしかしたら“神の怒り”なのかもしれない、とさえ思えてくる。

しかし「だが、止まない雨はない」と、紙芝居では言っている。「やがて嵐は過ぎ去り、絶望の先に見えた一筋の光が我々を導いてくれた」「EL・DO・RA・DOへとたどり着くのだった」と、未来では明るい展開が待ち受けていることを語り掛けているのだ。

こみ上げてきた“怒り”をぶつけ合っても、良いものはきっと何も生まれない。それに、新型コロナウイルスも時間は掛かれど、必ず収まるだろう。だからこそ、今私たちにできることは、結束することなのではないだろうか。

もちろんそれは、思い遣りを持って人に接することでもある。それだけでなく、星野源から素敵な音楽の輪が広まっていったように、今こそ音楽などのエンターテインメント作品で、笑顔の輪を広げていくことが大切だとも思っている。

“輪”で広げる、幸せの連鎖

さらに「なぜ人は傷つけ合うの?」「誰のために傷つけ合うの?」という問いかけから始まった「イジメ、ダメ、ゼッタイ」歌唱前の紙芝居も、今伝えたいメッセージであるように感じた。

その後は「一人一人は小さな存在かもしれないけれど、心と心が繋がれば、やがて大きなひとつになる」「本当の勇気を見せてくれたら、この世界を変えることができるよ」と紙芝居で一人ひとりの心へ畳みかけている。

BABYMETALがここで言っていた“本当の勇気”。それは、希望へ向かって一歩踏み出すことだと思っている。みんなの幸せを願い、それに向けて行動すること。それが今、私たちにも求められていることなのではないだろうか。

BABYMETALの中にある、“メタル細胞”

BABYMETALは「アイドルとメタルの融合」をテーマに、2010年に結成されたグループだ。

“メタル”と聞いて、社会に反抗的な人々のイメージがある、などと何らかの先入観を抱く人もきっと少なくないだろう。

しかし、BABYMETALはどうだろうか。中には「BxMxC」のような、やや攻撃的な楽曲もあるものの、彼女たちは音楽を通じて世の中に“希望の光”を灯していることが今回の記事で分かってもらえたのではないだろうか。

2016年に開催された東京ドーム公演から4年経った今でも、彼女たちは心の灯を絶やしていない。そして、彼女たちの中に存在する“メタル細胞”は、2020年10月10日から始まる「最終章」でも、決して消えることはないだろう――。

f:id:k_cat51alom:20200216142021j:plain

PHOTO:METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN 幕張メッセ DAY-2のもの