ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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【YOASOBI】自分の中に眠る“怪物”を飼いならせ

無関係ではない怪物

怪物は、人間に害を与えたり、襲ったりする恐ろしい生き物として、はるか昔から描かれてきた。

例えば、ギリシア神話に登場するメドゥーサ。蛇でできた髪を持ち、見るものを石化してしまう魔力を持つ怪物として描かれていることは有名だろう。また、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』などで描かれている巨大なタコのような姿をしたクラーケンも、船乗りや漁師たちを襲う怪物として北欧に伝えられている。

そうした怪物は、人間とは異なる見た目の生き物として描写されていることが多い。しかし、人間の心の中にだって、怪物は潜んでいると思うのだ。YOASOBIの「怪物」を聴きながら、改めてそう感じたのだった。

アニメ『BEASTARS』を凝縮した、その世界観に迫る

YOASOBIの「怪物」は、アニメ『BEASTARS』第2期のオープニングテーマとして起用されている。

肉食獣と草食獣が共存する世界が展開されている同アニメ。男子高生のハイイロオオカミ・レゴシが肉食獣としての自分の本能と葛藤しながらも、愛するドワーフウサギの女子生徒・ハル、そして草食獣を守るために奔走していく姿が描かれている。

食肉がタブーとされる中、学園内で起こる食殺事件。さらには草食獣の肉などを手に入れることができる、肉食獣のための街・裏市の問題などのさまざまな出来事に巻き込まれながら、成長していくレゴシ。その姿は、どこか私たち自身と重なるところがある。

YOASOBIの「怪物」を聴きながら感じたこと

緊急事態宣言下における現在は、よる20時以降、不要不急の外出は避けるよう言われている。しかし、悲しいことに、“それまでの時間ならいい”と感染防止策の意味を取り違えて、大人数での飲み会を開催している人もいることが現実だ。そして、そんな現実からそっと目を背けて、見て見ぬフリをしている人も多い。気が触れそうだ。

素晴らしき世界に今日も乾杯

街に飛び交う笑い声も

見て見ぬフリしてるだけの作りもんさ

気が触れそうだ

YOASOBIの「怪物」では、こんな歌詞が登場する。『BEASTARS』で描かれている裏市のことが想像される一方で、筆者は緊急事態宣言下における“今”とどこか重なるところがあるように感じたのだ。

この世界で何が出来るのか

僕には何が出来るのか

ただその真っ黒な目から

涙溢れ落ちないように

 

願う未来に何度でもずっと

喰らいつく

この間違いだらけの世界の中

君には笑ってほしいから

もう誰も傷付けない

強く強くなりたいんだよ

僕が僕でいられるように

続く歌詞では、このように描かれている。さまざまな制限があるとはいえ、ルールをきちんと守った上で自分なりに楽しみ方を見つけている人が多いのは、家族や恋人など、自分にとって大切な人たちを守りたいからこそなのではないだろうか。

心に潜む“怪物”を飼いならせ

本能の赴くままに動けば、時には加害者にだってなり得る人間の弱さをも動物に例えて描いたような箇所が見られる『BEASTARS』。そして、その弱さも詰め込んだYOASOBIの「怪物」は、こんな“今”だからこそ、きっと響くものがあるのだと思っている。

社会現象を巻き起こしている『鬼滅の刃』に登場するさまざまな鬼たちもかつては人間だったように、“怪物”は一人ひとりの心にそっと潜んでいるように感じるのだ。

本当の“素晴らしき世界”にするためにも、弱い心に負けず、一人ひとりの中に眠る“怪物”をいま飼いならしてほしい、と心から願っている。

すべては、自分にとって“大切なもの”を守るため。自分の中の自分を超えてほしい。そう思うのだ。

怪物

怪物

  • 発売日: 2021/01/06
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オクタゴンスピーカーだけじゃない! Devil ANTHEM.が贈った、“極上のプレゼント”【デビタゴン祭 配信ライブレポ】

Devil ANTHEM.(通称:デビアン)が12月24日、新木場STUDIO COASTにてワンマンライブ「Devil ANTHEM. 6th Anniversary ONE MAN LIVE『デビタゴン祭』」を開催した。

新木場STUDIO COASTと言えば、“モンスター音響システム”が有名だ。フロアを取り囲むように頭上に設置されている、真っ赤に燃ゆるオクタゴンスピーカー。それから、ウーファーの威力は凄まじく、地響きするほど重低音が鳴り響く、迫力満点の音響設備を整えている。

そんな都内最高レベルの音響設備を揃えている新木場STUDIO COASTは、“音”にこだわりが強いデビアンと相性が良い。本来ならば、心まで押し寄せるその最上級のサウンドの凄さについて綴りたいところだが、筆者はこの1年間、現場に行くことには敵わないといった想いから、オンラインライブを記事化することを避けてきた。そして、そんな自分に嫌気がさしたため、今回はこれまで逃げ続けてきた配信ライブレポに挑戦してみることにしたのだ。

本気で挑んだからこそ、配信ライブを観ながら気づくことのできたこともたくさんあった。感じたことをたくさん詰め込んだ配信ライブレポ。ぜひ楽しんでいってもらえたらうれしい。

 

“日々、最高を更新”している、デビアンの歩み

クリスマスを感じさせるBGMが流れる中、「Merry Christmas」という文字が画面いっぱいに表示されていく。会場ルールの説明やメンバー紹介が終わると、「Are You Ready?」とオクタゴンスピーカーが降りてくるまでの10秒間のカウントダウンが始まった。

カウントダウン終了とともに、会場には「SE」が響き渡る。横揺れしながらメンバーの登場を待つ人、リズムに合わせて拍手する人、飛び跳ねる人――スクリーンに映っていた観客からは、“待ってなんからんないYO!”、“ダメダメ待ってるひまないYO!”といった想いがひしひしと感じられた。そして、メンバーが出揃うと、そのまま「あなたにANTHEM.」に繋いでいく。

あなたにANTHEM

あなたにANTHEM

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眩い白い光が点滅し、グリーンのレイザーも無数に飛び交う中、元気よく踊っていくメンバー。衣装は「VS」のときの、白地に緑のラインが入ったものを着用していた。“戦い”を表現しているようなアーティスト写真を鮮明に思い出すという人も少なくないだろう。

デビアンはコロナ禍という中でも、彼女たちなりに賢明に戦ってきたのだ。「遠い道のりだとしても チャンスは必ず掴みたい」「まだまだまだまだまだ! 想い届くように 全力で行くよ!」といった歌は、まさに彼女たちの一人ひとりの想いを表現しているように聴こえた。あの衣装でこの曲を歌うからこそ、より一層、響くものがあるように感じた。

また、「今しかない! 今しかない! 巡り来たこのチャンス さぁこの流れ乗るしかないよ」という歌詞も出てくる。メンバー一人ひとりが逆境の中でも決してあきらめなかったからこそ、目標としていた新木場STUDIO COASTでワンマンをするという夢への切符を勝ち取ることができ、この日、コーストワンマンを実現することができたのだと思っている。

その後は“自己紹介ソング”「UP」へと続く。「まっすぐ歩く」と何度も歌っているように、デビアンは目標に向かってまっすぐ歩いてきた。だからこそ、見ることができた夢の景色。そんなメンバーの想いは、一人ひとりの表情や歌声が語っているように見えた。

UP

UP

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続く「Like a 熱帯夜」では、くるみちゃんのこぶしの効いた歌い方だけでなく、曲にハモリを取り入れるといった歌唱テクニックにも魅了された。メインボーカルを際立たせつつ、歌に深みと一体感が生まれるといった工夫は、これまでの音源でも無かったと記憶している。メンバーの歌唱力が上がったからこそできる、魅せ方に驚かされた。

Like a 熱帯夜

Like a 熱帯夜

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「Days」では、これまで魅せていた楽しげな表情から一転し、メンバーは真剣な顔を魅せていく。しっとりと曲を歌い上げていく姿からは、一人ひとりが曲の世界観に入り込んでいることが伝わってくる。

Days

Days

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観客も、普段なら振りコピをする人もいる中、この日はスクリーンから見える限り、メンバーの表情や歌声に浸りながら、静かに横に揺れている人が多いように感じた。

途中、流れてきたサウンドからは、どこかアレンジが施されているように感じ、この日ならではの特別感が感じられたナンバーだ。

そして、人気曲「絆という羽」を歌い終えると、MCへ。かえでちゃんは「ありがとうございます! デビタゴン祭に来てくれた皆さん、メリークリスマス!」と切り出していく。

絆という羽

絆という羽

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その後、「ついに始まりました。新木場スタジオコーストでのデビアンワンマンです! 今日の目玉であるオクタゴンスピーカーを使ったのですが、皆さんどうですか?」と質問すると、くるみちゃんは「やっぱり迫力が違うね。オクタゴンを使ってワンマンライブでっていうことで、もう緊張が止まらなくて」と緊張を口にする。

あいりちゃんは「始まる前に映像一人ひとりの紹介があって。あれやばかった」、ゆめちゃんは「あれ(自己紹介)ちょっと憧れてたの。見てみたかったの」と、自己紹介のオープニング映像についての感想を述べていた。

そして、くるみちゃんが「最初のブロックはこのオクタゴンスピーカーを使ってライブをしたんですけれど、次のブロックは通常のスピーカーでライブをしたいと思います。通常のスピーカーでやろうと思うんですけれど、この新木場スタジオコーストの音響設備は都内最高レベルのものになっているので、デビアンサウンドを楽しめると思います。それではさっそく次の曲に行きたいと思います」と説明すると、「Fake Factor」でスタートを切った。

侮るなかれ、“攻め”のデビアン

「Fake Factor」、「Dark“s” side」と言葉の切れ味が鋭い2曲で2ブロック目のオープニングを華麗に彩っていくデビアン。通常スピーカーでは言葉攻めにあわせるという粋なセットリストで、攻めの姿勢を忘れない。

Fake Factor

Fake Factor

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「Fake Factor」は、世の中の“スタンダード”や“マジョリティ”とされていることに、はみ出さないようにしたり、とりあえずその場しのぎをしたりと、自分らしく生きることをあきらめている人に対し、“それでいいのか?”と冷静に問うているように感じる1曲となっている。

一方の「Dark“s” side」は、心の中に眠る“闇”や不満を感情的にさらけ出したようなナンバーだ。どちらも違う攻め方だが、やはりデビアンは攻めていた。

Dark“s” side

Dark“s” side

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続く「ストレライド」では、サウンドにアレンジを利かせるという、さりげない攻め方をしているように感じた。

ストレライド

ストレライド

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爽やかなサウンドに乗せて、「まだ上の上に行くんだ」「あの雲を越えて」などといった“デビアンらしさ”が詰まった歌詞を心地よく響かせたのち、今度は「STARLIGHT CIRCUS」へと移り変わっていく。

STARLIGHT CIRCUS

STARLIGHT CIRCUS

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青やピンク紫のライトが点滅し、妖しさを醸し出す演出からは、ハロウィン感のある歌のように感じられるだろう。実際、歌詞でも“サーカス”について歌っている。

ただ、メンバーの歌に良く耳を傾けてみると「星降る夜にキミと 光の中でダンス」や「光り輝く星空」といった、どこかクリスマス感も感じられるような表現が登場していることが分かる。やはりデビアンは攻めているのだ。

その後、披露されたのは「Clover」。メンバーが「キセキは… 夢なら 残酷」「キセキは… 届くわ」とみんなでハモるパートがあるのだが、この日の彼女たちの歌声にはより一層、説得力があるように感じた。

Clover

Clover

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彼女たちがキセキを起こすことができたのは、決して夢なんかじゃあない。コロナ禍の中でも戦い続けてきたことが積み重なり、目標だった新木場STUDIO COASTでワンマンをするという目標に届いたのだと思っている。一人ひとりが志していたコーストワンマンへの想いがあふれ出ているようにも感じ、彼女たちが魅せた姿はいつもよりずっと美しく見えた。

その後、披露された「OMONPAKARU」を歌い終えると、メンバーたちはステージをはけ、姿を消していく。

OMONPAKARU

OMONPAKARU

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少し経つと、スクリーンに「Merry Christmas」と表示され、3月3日にミニアルバムのリリース、およびツアー公演「春TOUR2021」が開催されることが発表された。

そのニュースだけでもうれしかったが、驚いたことにツアーファイナルが筆者の誕生日だった。これほどうれしい“贈りもの”はない。そう画面に釘付けになる中、メンバーが赤い衣装に着替えて、再びステージに姿を現した。まさに“デビサンタ”である。

そして、MCであきらちゃんが「ファイナルが新宿BLAZEになったんですけれど、リベンジだよね」と話したことを皮切りに、話題はツアーファイナルの話へと移り変わった。

くるみちゃんが「そうだよね、うちら的には新宿BLAZEでワンマンしたときにすごい埋められたわけじゃなくて、それがすごい悔しくて。いつかリベンジしたいなってずっと言ってたので」と悔しかった過去を打ち明ける中、あいりちゃんも「(前回ワンマンしたときは)2018年の12月だったから、2年半くらい」と付け加えていた。

筆者がデビアンのライブに初めて行ったのが、2019年3月に行われた対バンイベント「40/4man」だ。その頃に比べると今のデビアンは、歌唱力や表現力、そしてパフォーマンス力が一段と向上しているように感じる。今のデビアンなら、リベンジを果たせるはずだと強く思う中、あきらちゃんの「それじゃあ、春のツアーも遊びに来てください。皆さん、よろしくお願いします。それでは後半戦に行きたいと思います」という挨拶を持って、次なる展開へと移っていく。

初期ナンバーから続く、色あせない想い

次のブロックは「覚醒WOW WOW」でスタート。讃美歌「Amazing Grace」を大胆にアレンジしたメロディで、デビアンなりのクリスマスを彩っていく。

覚醒WOW WOW

覚醒WOW WOW

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涙を流した日々に終わりを告げつつ、「譲れない想いがある」「輝け 全身全霊」と歌うメンバーの姿が、先ほどのMCと重なった。リベンジを誓った彼女たちが“歌”という武器で声を上げるからこそ、響くものがあるのだろう。

その後披露されたのは、「MY WAY」。「つまずいても 擦りむいても ただ前に進み続けたい」と歌うくるみちゃんの歌声にグッとくるものがあるのは、“日々、最高を更新する”といった熱い想いがいつだって彼女たちを突き動かしてきたからということを知っているからではないだろうか。

MY WAY

MY WAY

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続く「歪んだ世界がリアリティ」では、時間が過ぎていく様子を、時計の針が進んでいくようなダンスで魅せていたのが印象的だ。それは、この日新木場STUDIO COASTでワンマンを開催するまでの、これまでの歴史を表現しているようにも捉えることができ、どこか感動させられるものがあった。

歪んだ世界がリアリティ

歪んだ世界がリアリティ

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また、曲中にはハモるパートがあるのだが、あいりちゃんの想いあふれる歌声に痺れざるを得なかった。正直、ここのブロックに突入してから、あいりちゃんの表情やダンスがより一層、磨きがかかったように感じていた。しかし、この曲で魅せた伸びやかで力強い歌声からは、いつも以上の気合いが伝わってきたのだ。普段はかわいらしく踊っているあいりちゃんが魅せた“本気”に、心を奪われた瞬間だった。

次の「EMOTIONAL」では、くるみちゃんの「この1年、普通の1年じゃなかったけれどありがとう」「みんな大好きだよ」という涙交じりのコメントに感涙した。

EMOTIONAL

EMOTIONAL

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「いつだって ここから 起死回生 泣いたって このままじゃまだ終われないから」「精一杯 未来へ ただ信じてる」「叫べ 挑め 夢は続いてく」。そう歌うメンバーの歌声が、心にしゅわりと突き刺さったのだ。

さらに「ココロカラ」で畳みかけたのち、「早いもので、次のブロックで最後となってしまいました~」とゆめちゃんのゆるいMCが始まった。

ココロカラ

ココロカラ

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ワンマンをあっさり知らされたため、信じられなかったなどとメンバーが次々と打ち明ける中、あいりちゃんは「目標だったことだったから」「すごい今日はね、この景色観れてうれしいです」とコメント。観客からは温かい拍手が送られていた。

また「寂しいね、次のブロック行きたくないね」と話すと、ゆめちゃんは「でも、行こうと思います」と続け、場を和ませながら「ということで、最後はもちろん、オクタゴンスピーカーを使いたいと思います」と説明。メンバーたちが雑談をする中、オクタゴンスピーカーが下りていく展開に。

定位置まで下りたことを確認すると、かえでちゃんは「はい、ということで最後のブロックに行きたいと思います。そして、ここで突然ですが、今日のワンマンのために新曲を作ってきました!」とコメント。

さらに「ここでしか体感できない素晴らしい空間をこの設備と私たちと一緒に作っていきましょう」「そして、こんな世の中だけど、みんなと一緒に幸せを少しでも感じられたらなと思います」というMCで、新曲「シアワセクラップ」のパフォーマンスがスタートした。

みんなで楽しむ、“最高の時間”

次に披露されたのは「minnadeiko」。「追いかけた どこまでもずっと… キミとなら どこまでも行ける 無限大に」「遠くても 願い届くように 追いかけた 未来 夢 続く 永遠に」と歌うメンバーの姿を見ながら、MCであきらちゃんが話していた言葉がフラッシュバックした。

minnadeiko

minnadeiko

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「春のツアーも遊びに来てください。皆さん、よろしくお願いします」と話していた、あきらちゃん。“皆さん”と確かにそう言っていた彼女は、この日会場にいるファン、それから配信で観ているファンとともに、次なるステップへ挑みたいのだろう。ファンのことを大切にしているグループだからこそ、口にしていた言葉のように感じた。

続いてドロップされたのは、「Flashover」。「乗り越えるんだ 臆病なキセキ 飛び越えて行くから 期待を」「押し寄せる音が 弾ませて行く あの先にある 光へと」と歌うメンバーの姿は、どこか頼もしげに見えた。ワクワク感やドキドキ感であふれる中、私たちファンの期待を越えて、まだ見ぬ世界へ連れて行ってくれるように感じられたのだ。

Flashover

Flashover

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終わってほしくない――。メンバーが魅せる真剣な表情から、そんな想いが感じられたのが、次の「Replay」だ。

Replay

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観客は先ほどまでの激しく沸くフロアとは打って変わり、静かに揺れながら、メンバーたちがダンスパフォーマンスを通して魅せる世界観に静かに浸っているように見えた。

その後、披露されたのは「VS」。遊び心のある彼女たちの“戦い”を繰り広げたのち、「Fever」のインストリミックスが流れ始める。

VS

VS

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そして、「皆さん、これで本当に最後の曲になりました! 最高に楽しんでいってください!」とあいりちゃんが話し、人気曲「Fever」を投下した。

Fever

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曲中にはかえでちゃんがメインボーカルを歌っているところに、ゆめちゃんがハモるというパートも取り入れられていたのだが、ゆめちゃんのハモリの上手さに圧倒された。この日は会場規定によりコールが禁止だったため、「ゆめ! かえで!」「萌え萌えキュン」の“同期コール”は聴くことができなかったものの、“同期”2人の歌声には痺れるものがあった。

また、マサイする人が続出するフロアからは、“最高の時間をもっとFever(したい)”といった歌に対して、全力で応えているように見えた。

くるみちゃんが語る過去「みんなで悔しい想いもして…」

アンコールを待っていると、来年・2021年12月24日も新木場STUDIO COASTにてワンマンが開催されることが前方のスクリーンにて表示された。その発表に、泣きながら登場するあきらちゃん、かえでちゃん、くるみちゃん。

くるみちゃんは「このワンマンライブが決まったときに、コロナで制限があって。私たちから見た景色も、いっぱいは入ってるけれど悔しかったので、またできるってことでうれしいですね」とコメント。「皆さん1年後もいますよね?」というくるみちゃんからの問いかけに、観客は拍手で応えていた。

そうして「またここにいる皆さんで1年後も新木場スタジオコーストに帰って来ましょう。よろしくお願いします」と締めくくると、あいりちゃんは「ここにいる新しいファンの方とか、前から来てくれているファンの方とか区別するわけじゃないんだけど。くるみちゃんが小学生の頃から応援している人は、くるみちゃんの涙とか成長とか、苦しいものを一緒に成長してきたと思うから」とコメント。

さらに「今日のくるみちゃんの歌っている姿がね、本当にかっこよくて…。『STARLIGHT CIRCUS』の落ちサビ、マジでかっこよくて…」と涙ながらに続けていた。

くるみちゃんは「デビアンより早く新木場コーストでワンマンしたりとか、デビアンより早くメジャーデビューしたりとか。そういうのを見ているので、みんなで悔しい想いもして、一緒に泣きながら話したりとかしてたんですよ」と付け加えると、「スタッフの皆さんにもすごい感謝の気持ちがあるし、こうやっていっつもいっつも応援してくれる皆さんのことがありがたい存在だなって改めて思います。本当にありがとうございました」と感謝の気持ちを口にした。

あきらちゃんも「みんな大好き…」と泣きながら話す中、くるみちゃんの「このアンコールで今日のライブは最後になるので、楽しんでいってください」というコメントで、アンコール1曲目となる「LINK」を披露していく。

私がした“約束”

くるみちゃんがMCで想いを打ち明けたのち、披露された「LINK」。だからこそ「伝わるココロの振動 巻き戻したい瞬間を 重ね 重ねたら 気持ちはひとつになるの」という歌は、より一層、響くものがあった。

LINK

LINK

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曲中には「足並み揃え 遠くまでもっともっと 想像を超えて」といったフレーズも登場する。彼女たちの歌声に合わせて、みんなの心が本当にひとつになっているように感じられた。

そして、最後に披露されたのが「①②③④⑤」。

①②③④⑤

①②③④⑤

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「君が笑えば 明日はくるよ」「僕が笑えば あの場所でまた」と歌い上げたメンバーたちは、曲を通して「“あの場所”でまた」と“願い”を口にしていた。その場所とは、もちろん来年12月24日に行われる新木場STUDIO COASTに違いない。

「ありがとうございました」と挨拶し、最後に自己紹介をして、笑顔で手を振りながら会場をあとにしたメンバー。「皆さん1年後もいますよね?」というくるみちゃんの声がいつまでもこだましているように聴こえた。

言いたくても言えなかった「いるよ!」という返答を、“あの場所”で実際に聞かせてあげたいものだ。

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感想

この日、デビアンが贈ってくれた“プレゼント”。それは、オクタゴンスピーカーを使って演出した、こだわりのサウンドだけではなかった。

もちろん、ミニアルバムのリリースや春ツアーの発表、来年のコーストワンマンのサプライズなどもうれしかったが、メンバーの歌唱力、表現力などが一段と向上していた、彼女たちの成長を感じることができたことが何よりもうれしかった。

彼女たちは1年後、どのようになっているのだろうか。今からとても楽しみだ。

【No Music No Life Question】渡された“音楽バトン”から考える、26年間の歩み

読者の皆さまのおかげもあり、先日2周年を迎えることができた、音楽ブログ「ミュージック バンク」。2年前の12月15日に開設し、翌日16日に初記事を投稿して以来、楽しく続けられている。

そして、晴れて3年目に突入したタイミングで、フォロワーさんのひとりである、うちゅうネコさん(Twitter ブログ)から「No Music No Life Question」という企画に誘われた。音楽を好きになった“きっかけ”を探るべく、あらかじめ用意されてある質問に回答していく、いわゆる“音楽バトン”のような企画である。

お声がけいただけたことがうれしかったことから、ありがたく“音楽バトン”を受け取った、ちゃんさき氏。ちゃんとした自己紹介もないままブログを書き始めてしまったこともあり、改めて“ちゃんさき”という人物を知ってもらうためにも、“音楽バトン”企画で3年目をスタートさせていきたい。

それでは、行ってみよう。

 

人生で初めて音楽をいいと思った瞬間はいつですか? きっかけになった曲があれば曲名と理由もお願いします。

あれは、私が幼稚園児だったときの話。映画「千と千尋の神隠し」に登場するハクのような男の子に恋をしていた私は、指をくわえて、ただ見ていた――といったことはまるでなく、自分から何かと話しかけに行っていたようだ。相手の男の子は、肉食系女子の私にはてんで興味なしだったが、いつの日か、Whiteberryの「夏祭り」を教えてくれた。それからというもの、当時の私は、毎日のようにお家で熱唱していたそうだ。“君がいた夏は遠い夢の中”。当時好きだった男の子のことは全く関心がないが、それでも「夏祭り」は未だに大好きな曲である。

どういった感じの音楽が好きですか? ジャンルでも、言葉で詳しく表現して頂いても構いません。

邦ロック、J-POP、アイドル、EDM、洋楽ポップス、レゲエなど、幅広い。メッセージ性の強い音楽はとりわけ刺さりやすいらしい。

上の質問で挙げたジャンルを好きになったきっかけはありますか?

たまたまラジオで流れていた音楽が好みだったことであったり、サブスクで関連アーティストを次々と聴いていくうちに偶然出逢えた音楽だったり、好きになった“きっかけ”はふとした瞬間に訪れたものが多い。邦ロックとアイドルを好んで聴くようになったのは、それぞれKANA-BOONとDevil ANTHEM.の曲を聴いたことが始まりだ。

好きなアーティストはいますか?

KANA-BOONサカナクションRADWIMPS、back number、マキシマム ザ ホルモンオメでたい頭でなによりFear, and Loathing in Las Vegas、感覚ピエロ、WANIMA、BABYMETAL、Perfume、Devil ANTHEM.、水曜日のカンパネラ岡崎体育湘南乃風など多数。これまで書いてきた記事を読んでもらえたら、うれしい。

音楽を聞いて感じたことがあればレビューなどを書いたりしますか?

楽曲レビューやコラム、ライブレポートなどを執筆中。

上の質問で書いてると答えた方だけに質問です。そのアルバム(曲)の何を重視して伝えてますか?

歌詞やメッセージ性。ただし、アーティストの想いはアーティスト本人にしか分からないと思っているので、感じたことや考えたことなどの独自の解釈を文章にしているのが当ブログの特徴だ。

どんな時に音楽を聞きますか? また、状況に合わせて聞くものを選んだりしますか?

毎日、気づけば再生ボタンを押している。何も考えずに音楽を流すときもあれば、突じょ脳内再生された曲を聴いたり、気になった言葉が出てくるものを聴いたり、そのときの自分の状況に合わせた音楽を聴いたりと、さまざまだ。

※アニソン・声優系の曲は聞きますか? 聞く場合は何に注目して聞いていますか?

自分からは積極的に聴かないため、残念ながら、その方面は疎い。 カラオケで他の人が歌う、アニソンや声優アーティストの曲に、耳を傾ける程度である。

※印の質問で声優アーティストの曲を聞いていると答えた方に質問。アーティスト活動している声優で好きな方はいますか? 魅力も書いてみてください。

こちらも※印の質問で声優アーティストの曲を聞く方への質問。キャラソンを聞く時はどういった部分に注目して聞いてますか?(歌唱、表現など…)

映画・アニメ・ドラマ・ゲームなどのサントラは聞いたりしますか?

アニメはあまり観ないものの、映画やドラマ、ゲームなどのサントラは聴く。中でも、音ゲーを中心とするゲームは大好きだ。以前「太鼓の達人」に使われている楽曲「さいたま2000」についての記事を書いているくらいには、音ゲーに目がない。

ライブにはよく行きますか?

コロナ禍に入る前までは、月に1回程度、現場に行っていた。今年は2月に開催された「東京ぴこぴこフェス」以降、しばらくライブに行かれなかったが、今まで抑えていた“音楽愛”が一気に爆発した結果、12月下旬から1月末までの時点で3本のライブへ行くことが決定している。

2018年ごろから名前を聞くようになったと感じるSpotifyApple Musicなどのサブスクリプションサービス(以下サブスク)。利用したことはありますか? 利用したことがある場合、定額制プレミアム会員登録はしていますか?

Spotifyも利用したことがあるが、Apple Musicのヘビーユーザーである。もちろん、月額会員だ。

サブスクを利用したことがある方に質問。サブスクを使っていて感じるメリットは何ですか?(サブスクを利用したことがなければこの質問はスルーしてください)

Apple Musicでは、毎週金曜日に新曲ランキングが更新されるため、いま流行りの音楽を定期的にチェックできる点が魅力的に感じる。 また、若手バンドがピックアップされたもの、大手音楽雑誌が選んだものなど、ジャンル別に分かれた曲をさらに細かく分類したプレイリストも使いやすい。

サブスクを使い始めてCD(iTunesでのダウンロード購入・レンタルも含む)の購入枚数は減りましたか? それとも、逆に増えました?

減ってしまった。今後も残念ながら増えることはないと思っている。

「30歳を過ぎたら新しい音楽を聞かなくなる」と言われているそうですが、これについてどう感じますか?

そうは思わない。自分の中に探求心があり続ける限り、今後も新しい音楽を聴き続けると思う。それに、大事なのは実年齢ではなく、心の若さだと思っている。

あなたが今まで聞いた音楽の中でもっとも印象に残っている作品を教えてください。アルバムでも楽曲単位でも構いません。ジャンルも問いません。印象に残った理由も交えて書いてみてください。

岡崎体育の「Explain」。“いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対”と何度も自身の夢を“説明”してきた岡崎体育が、SSAにいる大勢の観客の前でこの曲を披露したときのあの感動は忘れられない。そこで見た感動の光景を感じたままに綴った記事があるので、よかったら読んでみてほしい。

あなたにとっての音楽とは何?

人生を豊かにしてくれる、よき友だち。

 

終わりに

音楽を聴いて、恋愛や仕事、転職など、さまざまな“人生のイベント”を思い出すくらいには、私の人生と音楽は密接な関係だ。

そんな“よき友だち”と歩む、この先の人生も楽しみである。

f:id:k_cat51alom:20190916164258j:plainあなたにとって“音楽”とは、何だろうか。

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【年間ベストソング2020】この1年を統括する、ちゃんさき的ストーリー(うち10曲、コロナ禍と私ver.)

2020年12月。

音楽を愛する人たちが、年間ベストを次々と発表していく時期の突入だ。

密かに“マイベスト”を作ることに憧れを抱いていた私は、今年こそはと気合いを入れて、書いてみることにした。

さまざまな曲を聴く中で、特に気に入った20曲をセレクト。10曲ずつに分け、それぞれをストーリー形式で紹介する“らしさ”全開の“マイベスト”を作ってみた。

また、各楽曲のストーリーの下部には、選出理由も記載している。ストーリーだけ先に読んでから、各曲の選出理由を見ていくなど、あなたなりの読み方で愉しんでいってもらえたらうれしい。

前回は、恋愛をテーマに曲で紡いだストーリーを紹介したが、今回のものは、コロナ禍と私が主題。一風変わった、年間ベストの後半戦。それでは、行ってみよう。

 

勝つまで続く、終わりなき戦い

“自分らしさ”が持ち味の“メタルサイファー(BABYMETALなりのフリースタイルラップ)”を持ってバトルで勝ち抜いていく姿を描いたような、BABYMETALの「BxMxC」は、まるで混沌とした時代の中、“らしさ”を持って戦っていく必要性を訴えているようだ。

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「ライム 壊すスタイル カオス巻き起こすぜ Mosh」「ライフ 燃やすタイム 交わす私たちの Mosh」といった歌詞からは、抗争が繰り広げられている中、負けじと“私たち”も戦っていく様子が浮かぶ。

さらに「流行り廃り気取り 身振り手振りかまし」「誇り 証し 探し バトり 叫び」「言葉巧み飾り 上がり下がり吹かし」などのフレーズから、バトルが白熱していることが伝わってくるだろう。

まるで現在のネット社会の“闇”を浮き彫りにし、表現しているようだ。

選出理由:BABYMETAL「BxMxC」

重厚なサウンドに乗せて、激しいダンスを披露していくMOAMETAL。挑発的なリリックを、ヒップホップのような歌いまわしとともに歌い上げていくSU-METAL。そんな2人が“メタルサイファー”に挑戦したこの曲は、これまで確立してきたスタイルを壊し、これからはメタルに限らず幅広いジャンルに挑戦していくといった力強い意思を表現したように感じた。また、今年結成10周年を迎えたBABYMETALの10年を象徴する10曲を、ファンの投票で決定する「10 LEGEND SONGS TOURNAMENT」を実施していた彼女たちは、同曲のMVの世界観をそのまま反映しているようだった。

そんな同曲は、日本では既に昨年から配信されているが、全世界での配信がスタートしたのは今年10月からである。正直、取り扱いが難しい同曲を【年間ベスト2020】として入れるか否か最後まで悩んだのだが、今年1月に開催された幕張メッセ公演で初披露されたこと、シングルカットする形で「BxMxC」のアナログ盤が発売されたこと、そして、力強い意志が感じられたことと、MVの世界観をそのまま反映したようなイベントを実施していたことなどの上記2つの理由も踏まえると、やはり「BxMxC」はBABYMETALにおいて大切な1曲のように感じたため、この記事では特別に取り上げることにした。

 

社会の“闇”に牙をむく

世の中に対する不満や怒り、皮肉などを堂々と突き付けてくる、感覚ピエロの「感染源」。

感染源

感染源

  • 感覚ピエロ
  • ロック
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コロナ禍で、新型コロナウイルスや政治、他人のせいにする人が目立つようになった。そんな世の中に対して「全員容疑者です」と切り込んでいく“僕”。

“僕”は一人ひとりが持つ、人の醜さや愚かさ、無力さに注目しながら、さらに牙を向けていく。疑心暗鬼に陥っている人たちに対しては、「1番犯されてしまったのはその脳内なんじゃないですか」「助け合い 思いやり 自己犠牲 それがバカらしく見えますか」「最も蔓延してしまったのは その醜い考えそのものです」と問いただしていくのだ。

そして、そこに加えて「愛し合う気持ちを無くしてはいけないや」「All You Need is Love」「愛に優るものなんかない」と、“僕”は何度も“愛”の必要性を訴えていく。

“誰も一人でなんか生きられない”のだから、愛し合う気持ちは無くしてはならないのだ。

選出理由:感覚ピエロ「感染源」

“感エロ”の愛称でも親しまれている、感覚ピエロ。その愛称からも分かるように、曲を通して、時にエロスを全面に押し出しながら、人々を楽しませる遊び心を持っているところが彼らの魅力のひとつである。しかし、その“道化師”という化粧を落としたとき、彼らの持つ、独自の“感覚”が存分に発揮されていることが分かる。エッジの効いたメッセージ性のある歌詞を、時に真剣に、時にユーモアを交えながら歌い上げるという、彼らが持つ、もうひとつの“顔”があらわになるのだ。そんな彼らの“すっぴん”に良い意味で驚かされたのは、今回が初めてではない。しかし、世の中に対する皮肉が炸裂している「感染源」は、コロナ禍における今だからこそ、より一層、響くものがあるのだと思っている。

また、シングル『毒の根の音』に収録されているジャケ写に描かれているのは、力強い眼差しで何かを訴えかけるように耳を塞ぐ人の姿だ。「感染源」を聴いたあとに改めてジャケ写を眺めると、聞こえてくる愛のない言葉をシャットアウトし、自分の心の中に眠る“愛”を信じてほしいと何度も主張している“僕”の姿が重なった。“毒の根の音”とは、愛のない、人の醜さや愚かさから出た言葉を指しているのだろう。感覚ピエロが訴えかける愛の必要性に深く共感したとともに、少しでも世の中が平和になってほしいという願いも込めて、この曲を【年間ベストソング2020】に選出したい。 

 

ノイズの中、響かせるハーモニー

現在のネット社会を見ながら感じた疑問を歌詞にしたような、欅坂46(現、櫻坂46)の「誰がその鐘を鳴らすのか?」。

誰がその鐘を鳴らすのか?

誰がその鐘を鳴らすのか?

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「「耳を澄ますと聴こえて来る 色々な声や物音 人は誰もその喧騒に 大事なものを聴き逃している」」といった呟きから始まるこの曲は、まるで新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るうようになってから浮き彫りにされた“不謹慎狩り”や“同調圧力”、さらには自分とは異なる意見を必要以上に叩く“批判”や“否定”、“非難”などの問題点を指摘しているようだ。

そこで、“冷静になろう”という合図を出すためにも、“世界中のどこにいても聴こえる巨大な鐘”を鳴らしたいと思う“僕”。しかし、世の中には神様のような絶対的な存在がいるはずもなく、“鐘を鳴らす”といった重たい責任を自分ひとりだけで持つことも難しい話である。

そして「僕たちの鐘はいつ鳴るんだろう?」と鐘を鳴らす人を待っている“僕”だったが、「そばの誰が誰であっても鳴らせばいいんだ 信じるものが たとえ違ってても そう平等に…」と思いつき、「Wo oh oh oh oh oh oh…」と、“言葉ではなく誰でもわかるように心に響かせる”ハーモニーをみんなで何度だって奏でるのだ。

“大事なものを聴き逃している”人に向けて、何度も心を込めて歌う“僕たち”だが、そこには単に“自己主張”するのではなく、“愛”を持って“主張”する、新しい“僕たち”の姿が描かれているように感じた。

選出理由:欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」

これまで楽曲を通して“自己主張”してきた欅坂46が、改名前最後となったこの曲をもって、突然、協調性について説き始めたことに衝撃を受けた。相手に噛みついていくような鋭い言葉や、パンチの効いた言い回しで“自己主張”してきた彼女たちが「際限のない自己主張は ただのノイズでしかない」と一蹴し、過去の自分たちを全否定している様子は正直、寂しい。しかし、愛を持って主張していくような新たな姿勢からは、彼女たちの成長も感じ取れた。“欅坂46”としては最後の「誰がその鐘を鳴らすのか?」。驚きはもちろん、寂しさやワクワクなどの想いもこみ上げてきた同曲は、深い印象を残したように感じたため、年間ベストにピックアップ。

 

心の中を照らす、理想と希望

理想や希望を歌った、RADWIMPSの「ココロノナカ (Complete ver.)」は、コロナ禍にいる一人ひとりに“エール”を送ってくれているようだ。

ココロノナカ

ココロノナカ

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「現実とは 時にどんな物語よりも残酷で 冷たくて 容赦なく僕らを踏みつけるけど」「でも 現実とは 時にどんな物語よりも美しく あたたかい そのことを僕らは知っているから」という歌を歌っていく“僕”。絶望を味わった人たちの心を理解しつつ、一人ひとりの心にあたたかい明かりを灯してくれているようだ。

そんな“僕”には「帰りたい明日がある」「また逢いたいあなたがいる」「叶えたい明日がある」「まだなりたい自分がいる」「戻りたい明日がある」から、みんなと“歴史の教科書のどのページよりも眩しいストーリー”を歩みたいのだ。

そして、“僕”にはハッピーエンドを迎える準備ができているのだ。理想や希望をたくさん持った“僕”がこの歌で与えるパワーといったら、計り知れないものがあるだろう。

選出理由:RADWIMPS「ココロノナカ (Complete ver.)」

理想や希望をたくさん持った“僕”が歌う歌に感動した。曲の後半になるにつれて次第に大きくなる合唱からは、ハッピーエンドを望む“僕”に共感した人たちが“歴史の教科書のどのページよりも眩しいストーリー”を描くために、“僕”と一緒に歩いていく姿が浮かぶ。野田洋次郎Twitterでこの曲の動画を添付するとともに「よかったら、みんなも歌ってみて」とコメントしたことを皮切りに、この曲はたくさんの人によって歌われている。それがさらにこの曲を聴いて想像したイメージと重なり、感動的な光景を作り出しているように感じるのだ。「ハッピーエンドよ そこで待っていろ」。私もそう願う人たちのうちのひとりだ。早くコロナが終息してほしいという願いも込めて、「ココロノナカ (Complete ver.)」を年間ベストにセレクトした。

 

夢と愛で進め、未来へ

“掴みたいもの”のために突き進む“僕”の姿を描いた、LiSAの「紅蓮華」。アニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマとして起用された同曲は、大切な人たちとの幸せを掴むため、さまざまな鬼としのぎを削っていく主人公・竈門炭治郎が連想されるような歌となっている。

同時に、この曲に登場する“僕”は、どこか幸せな未来を掴むために“見えない敵”と戦っている、コロナ禍における私たちと重ね合わせることもできるだろう。

紅蓮華

紅蓮華

  • LiSA
  • J-Pop
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掴みたいもののためになら強くなれることを知った“僕”。それに導かれるように、“僕”が進んでいく姿が浮かぶ。そんな“僕”は、世間や他人のせいにしたとしても、“変わっていけるのは自分自身だけ”ということを知っている。だからこそ、“消せない夢”に向かって、進んでいくのだ。

彼を明るく照らすのは、“掴みたいもの”だけでなく、“紅蓮華”の花言葉である“愛情”もあると思っている。そうしたものを力へと変えながら、紅に燃ゆる心とともに、“本気の僕だけに現れるトゲだらけの道”を乗り越えていく姿が浮かんだ。

何度でも立ち上がる“僕”の姿は、どこかコロナ禍と戦う私たちと重なるものがあるように感じた。

選出理由:LiSA「紅蓮華」

世間を賑わせている『鬼滅の刃』。同アニメのオープニングテーマとして起用されたこの曲は、LiSAの“鬼滅愛”が感じられる。シングルやアルバムに収録されている同曲の「ありがとう 悲しみよ」という歌詞が、アニメOPでは「何度でも立ち上がれ」と変更されているのだ。この“工夫”がされていることで、より一層、主人公・炭治郎の気持ちに寄り添った歌となっていることが分かるだろう。昨年リリースされた曲でありながら、映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の大ヒット、および今年リリースされたアルバムに収録されていることで、さらに注目を浴びることとなった、LiSAの「紅蓮華」。その愛情込められた歌詞を高く評価した。

 

今こそ起こす、“思いやりのぶつけ合い”

メンバーに続いて観客が答える形で大合唱を繰り広げる様子が想像できる、オメでたい頭でなによりの「頑張っていきまっしょい」は、コロナ禍を乗り越えるためにお互いを励まし合うような姿が描かれている。

コロナ禍が蔓延してからバラバラになってしまった一人ひとりの気持ちを描きつつ、「頑張っていきまっしょい(わっしょい)」と互いに励まし合う人たちの姿を描写。そして、そこに描かれているのは、闇雲に“頑張れ”と声を掛け合う人たちの姿ではない。“お互いに上手くいくために頑張ろう”という、思いやりの精神が感じられる掛け声が響き渡っている様子なのだ。

「1万の心臓 揺らす」「2万の瞳 濡らす」「10万の指 繋ぐ」リズムやメロディ、言葉を探し続けている主人公。そんな彼が響かせる「頑張っていきまっしょい(わっしょい)」の歌声は、今日もどこかの誰かの心を揺らし、瞼を濡らし、手を繋ぐきっかけを与えてくれるだろう。

選出理由:オメでたい頭でなにより「頑張っていきまっしょい」

ボーカル・赤飯に続き、メンバーやオメっ子(ファンの呼称)たちが答える形で大合唱を繰り広げる姿が想像できるナンバーだ。そんな彼らが掲げるサインと言えば、“ダブルピース”である。この曲が披露された後は、きっとたくさんのダブルピースがフロア一面に咲き誇っているに違いない。争いごとが絶えない世の中だが、敵対し合っていた人たちも、やがては笑顔で仲良く“ピース”を掲げる日が来ると思っている。オメでたい頭でなによりがライブで普段からよく「思いやりのぶつけ合い」という言葉を口にしているように、彼らはそんな“平和”な世の中を望んでいるのだろう。そして、それは、この曲で「付ける薬ないくらい バカ笑い してた日 思い出して笑いたい」「くすりとこぼした笑顔なら 喜んで伝染るんだい」と描かれていることからも感じられるのだ。お互いを励まし合う、笑顔の“伝承歌”になってほしい。そんな願いを込めて「頑張っていきまっしょい」をピックアップ。来るZeppワンマンの景色も、今から楽しみだ。

 

“新たな1ページ”に向かって、闘志を燃やせ

“今”を生きる人たちに向けて歌われたような、Anlyの「We'll Never Die」は、応援歌となっている。

We'll Never Die

We'll Never Die

  • Anly
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「私たちは決して負けない」のリフレインが次第に強くなるところから始まるこの曲は、仲間を引き連れながら“明日”へと向かう“私たち”の姿が浮かぶ。

そんな彼女たちが口ずさんでいるのは「頑張ったと言えるまで、私たちは決して負けない」という闘志である。また、仲間たちに対して「ねえ、君。自分自身を信じて。大丈夫だから」「私たちが新たな歴史の1ページを刻むから、気にしないで」や「ねえ、あなた。自分自身を信じて。あなたは心やさしい、人を思い遣る心を持ってる」「あなたが歴史に新たな1ページを刻むのよ。私はありのままのあなたが好き」と声を掛け合いながら進んでいく様子からは、結束力の強さが垣間見える。

さらに「抵抗しよう、敢えて大志を抱いていこう」「私たちは輝き続けるの」「誰も私たちに文句を言わせないわ」という歌からは、新型コロナウイルスに対して、宣戦布告しているようにも見えるだろう。そうして、彼女たちは再び「頑張ったと言えるまで、私たちは決して負けない」という大合唱を繰り広げるのだ。

「誰かを照らす光になりたい」。そう願う“私”は、やがて“私たち”の歌になった。小さいけれど、大きい。人の心を動かす原動力にもなり得る歌には、そんな不思議な力が宿っているように感じる。

※上記の曲に関しては、英語で書かれている箇所は日本語へ和訳(意訳)しています。正式な歌詞はほとんど英詞なので、知りたい方はお手数ですが、歌詞サイト等でご確認ください。

選出理由:Anly「We'll Never Die」

伸びやかな歌声を時にゆったり、時に力強く響かせる、シンガーソングライター・Anly。そんな彼女の歌声が一皮むけたように感じたのは、世の中の“あたりまえ”に対して、疑問の声を上げる「MANUAL」だ。茶色い地毛を持つ彼女が、黒髪が“正しい”とされている染髪禁止の校則に向かって吠える姿や、沖縄出身である彼女の言葉の訛りも「ホントに素敵よ 生まれつきな自分が好き」と肯定する様子は凛とした美しさがあった。心で感じたまま、思ったままに表現しているからこそ、彼女の歌声は多くの人に響くものがあるように感じた。

今回取り上げている「We'll Never Die」は、カントリー・ミュージックに乗せて歌われる応援歌だ。「私たちは決して負けない」と何度も歌う姿からは、Anlyの凛々しさが感じられる。そして「あなたが歴史に新たな1ページを刻むのよ。私はありのままのあなたが好き」という歌からもまた、一人ひとりの“らしさ”を肯定してくれていることが分かる。刺々しい言葉は一切使わずに、周りを照らす光となっている「We'll Never Die」。Anlyの持つ魅力を最大限に引き出しながら、新境地を切り開いたという点で、高く評価したい。

 

“金色の明日”への挑戦

湘南乃風の「GOLD」は、コロナ禍で戦う人たちの応援歌だ。

GOLD

GOLD

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「でっかい夢抱いて 走り抜けてきた成果 ここまで来たんだ」と励ましつつ「夢に泣いて 諦めるなんて冗談じゃねえ 舐めんな」と“俺”なりの“愛”を持って相手をたしなめながら、“金色の明日”へ向かって、“今”と戦う様子を描いている。

“俺”が相手を叱る理由は、挑戦し続けてきた過去を知っているからだ。だからこそ、“俺”は「胸張れ誰よりも」「挑み続けた日々は 決して裏切らない」「むせるような努力越えれば 孤独な金色の勝者」「初心忘るべからず だろ 何事も途中で不安なり」「がむしゃらで 良いんだ 良いんだ」「やれば出来んだ」などというエールを次々と送るのである。

「世界をひっくり返せ お前がヒーロー」と一人ひとりに向けて激励していく“俺”。“金色の明日”を信じているからこそ、戦えるのだろう。いつしか“強靭な武器”へと変化した、夢や愛、信念などを持っているからこそ、戦うことができるのだと感じた。

選出理由:湘南乃風「GOLD」

黄金魂」や「STAY GOLD」など、これまでも“金色”について描いてきた湘南乃風。そんな彼らは今回、アルバム『湘南乃風 ~四方戦風~』で、色そのものが曲名となった「GOLD」という楽曲を堂々と突き付けてきた。レゲエとトロピカルハウスの“いいとこどり”のような、アッパーなサマーチューンに仕立て上げられた同曲。この“ハイブリッドミュージック”には、当初から持ち続けている“色”と、「はなび」や「一番歌」など、“らしさ”にエレクトロミュージックを掛け合わせる“新たな試み”に挑戦し始めた、湘南乃風のこれまでの歩みが感じられる。今までの“歴史”があるからこそ、コロナ禍に巻き込まれても、そこで諦めずに“金色の明日”に向かって戦い続ける。そんな“チャレンジャー”湘南乃風の姿が浮かび上がった1曲だ。そんな彼らのストーリーを語っているような「GOLD」には、代表曲のひとつである「黄金魂」を越えてくるものがあるように感じたため、年間ベストにセレクトした。

 

“好きに選ぶ”生き様で、人生を楽しむ

コロナ禍とはいえ、常識やルールを破らない範囲で、思いっきり人生を楽しんでいる人もいるだろう。

例えば、MAMAMOOの「HIP -Japanese ver.-」は、人の視線を気にせず、自分らしく生きる姿を描いている。それは、ダンサーや大統領、そして母親までさまざまな職業を演じるメンバーの姿が描かれているMVからも感じられるだろう。

HIP -Japanese ver.-

HIP -Japanese ver.-

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そんな同曲は「All I wanna be is trendy 好きに選ぶ」「顔 肩 足まで hip」という歌詞から始まる。全身キメている様子は、“私はただお洒落でいたいの”という想いが強調されているようだ。

さらに「I love you どう言われたってね」「Respect you 何をしたってね」や「問題視 My fashion 騒ぎすぎただの Action」という表現からは、他の人からの批判にはまるで興味のない、自分の意見をしっかり持った“私”の姿が浮かぶ。

炎上さえも払いのけてしまう“強靭なメンタル”を持った“私”は、まさに“HIP”そのものだ。人の視線を気にせず、常に“らしさ”を大切にしているその生き方は、格好いい。

選出理由:MAMAMOO「HIP -Japanese ver.-」

日本には昔から“空気を読む”といった独自の文化が定着しているが、コロナ禍に入り、和を乱すことを極端に嫌う人が増えたように感じている。そうした人からの嫌がらせ行為や炎上などを避けるために、ネット社会でも、実社会でも、周りの目を気にする人が多くなったように思うのだ。そんな今だからこそ、“自分らしく生きていい”という強いメッセージ性が感じられる同曲をピックアップしたい。何を“HIP(格好いい)”と思うのかは一人ひとり異なると思うが、それぞれが思う“らしさ”を、今、出してもよいのではないだろうか。

 

“ハイライト”を引けるのは、自分自身

人生の“見せ場”を作り続ける、という強い意志が感じられる、SUPER BEAVERの「ハイライト」。

ハイライト

ハイライト

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何度も「必死でありたい」と歌う“僕”。必死だからこそ、歓びなどの“ポジティブな感情”、そして悔しさや哀しさ、怒りや虚しさなどの“負の感情”まで、さまざまな感情を深く味わえることを“僕”は知っているのだ。

そんな“僕”は過去を振り返れば、そこで経験した“痛み”もやがては愛しくなることを知っている。いつだって必死だからこそ、“負の感情”もバネにして、明日への原動力へと変えるのだろう。

幸せになるため、今日も必死で今日を生きる“僕”。幸せを掴んだとしても、そこで終わりたくないのだ。その先の景色を見たいという想いを持ち続けているからこそ、“僕”にとっては、いつだって今この瞬間が“ハイライト”なのだろう。

選出理由:SUPER BEAVER「ハイライト」

“必死でありたい”理由を述べていく同曲は、全ての物事や経験には“意味”があると、人生を肯定してくれているようなあたたかさを感じた。“ポジティブな感情”だけでなく、“負の感情”まで描きつつ、全てを受け止めてくれる「ハイライト」。これはSUPER BEAVERがバンド人生において、さまざまな苦悩を経験してきたからこそ、描ける物語がそこにあるのだと感じた。そして、“不可能”だと言われていたメジャー再契約を、“可能”へと変えたSUPER BEAVERがこの曲を歌うからこそ、説得力が増すように感じるのだ。明るい希望を灯してくれた「ハイライト」は、暗い世の中も照らしてくれるだろう。

 

終わりに

コロナ禍と私をテーマに、10曲で紡いだストーリー。

きっと、共感してもらえる人も多かったのではないだろうかと思っている。

最後に目次を記しておくので、気になった曲はぜひ聴いてみてほしい。

あなたにとってこの1年は、どんな物語になっただろうか。

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【年間ベストソング2020】ちゃんさき的トップ20曲で、ストーリーを描く!(うち10曲、恋愛ver.)

さまざまな曲がリリースされた、2020年。

いろいろあった1年もそろそろ終わりに近づいているが、毎年多くの媒体やジャーナリスト、ライターからブロガーまで、音楽を愛する人たちが最後に力を振り絞る季節がやってきた。

年間ベストを発表する時期の到来である。

 

ブログを始めて早2年が経とうとしている、ちゃんさき氏。これまで、人の年間ベストを眺めてばかりいたが、実は密かに“マイベスト”を作ることに憧れを抱いていたのだ。

そこで今回、今年こそはと気合いを入れて、私も書いてみることにした。

ランキング形式は曲に優劣をつけているようで好まないため、たくさんの曲を聴く中で特に気に入った20曲をピックアップ。10曲ずつに分け、それぞれをストーリー形式で紹介する“らしさ”全開の“マイベスト”を作ってみた。

また、各楽曲のストーリーの下部には、選出理由も記載している。ストーリーだけ先に読んでから、各曲の選出理由を見ていくなど、あなたなりの読み方で愉しんでいってもらえたらうれしい。

最初に紹介するのは、恋愛をテーマに曲で紡いだストーリーだ。一風変わった、年間ベストの前半戦。それでは、行ってみよう。

 

尾を引く2人の愛

別れてしまった男女が終わってしまった恋について嘆いている、End of the Worldの「Over (feat. Gabrielle Aplin) [Shift K3Y Remix]」。

Over (feat. Gabrielle Aplin)

Over (feat. Gabrielle Aplin)

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男女がお互いに「この恋が終わってしまったなんて信じられない、立ち直れない(※注1)」と嘆いているものの、それぞれのパートで「よく本気じゃないことを言っていたけれど、今回は本気な気がする(※注2)」や「あなたは私(僕)の全てを愛していたけれど、今回は愛しているフリをしているだけだよね(※注3)」と歌っていることから、2人の間で何らかの誤解が生じて、別れてしまったことが考えられる。

男性は、どこで間違ってしまったのか、あれこれ考えるものの、これといった理由が見当たらない。一方、女性は、男性の両親の前でしなくてもいい演技をしたこと、いくつかの話を飛ばしたことなどの具体例を挙げている。

破局後も、終わってしまった恋の原因を考えている2人。しばらく尾を引きそうだ。

 

※注1:(正式な歌詞)I can't get over that it's over

※注2:(正式な歌詞)You used to say things you didn't mean But this time I felt you meant it

※注3:(正式な歌詞)You used to love all the parts of me But this time you're just pretending

選出理由:End of the World「Over (feat. Gabrielle Aplin) [Shift K3Y Remix]」

SEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseとシンガーソングライター・Gabrielle Aplinがタッグを組んだ同曲。違和感を全く感じさせない2人の歌声は、まるで付き合っていた男女のようだ。そこに懐かしさを感じさせる幻想的なサウンド、心臓の鼓動を彷彿とさせるビート、ダンサブルな音楽が加わることで、交際していたときのワクワクやドキドキ、楽しさが感じられるだろう。国境を越えた2人が描いた、終わってしまった恋についての嘆き。そんな2人の表現力を高く評価した。

 

やるせない想い

「くたびれない心が欲しい」というフレーズから始まる、ゲスの極み乙女。の「透明な嵐」は、やりきれない“僕”の混沌とした気持ちが描かれた1曲のように感じる。

透明な嵐

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“僕”は“あなた”の側にいたいと思っているものの、“僕”にとって“あなた”は今や高嶺の花のような存在なのだろう。というのも、“僕”は“あなた”のことを「奇跡」と呼び、「隣の芝生で青くありたい」と言っているからだ。そんな2人の心には、どこか距離が感じられる。

追いかけてくれない“あなた”と、追いかけたい“僕”。2人の関係に悩む“僕”だが、「透明な嵐 気だるい背中を いつのまにか押してくれ あぁ」と他力本願だ。どうやらこの“僕”、あれこれと考えるあまり、前に進めない状況に陥っているようだ。

いろいろと考える中で、“僕”は過去の記憶まで遡ることとなる。そこで“僕”はある出来事にたどり着くが、「後悔したくない」という気持ちから、それを受け止められずに立ち止まって蓋を閉める、“僕”の姿が描かれている。そのため、詳しくは書かれていないが、過去に2人は恋人関係だったことが考えられる。しかし、“僕”の“譲れないこと”が引き金となり、破局するという事態に発展してしまったのだろう。

やりきれなさを吐露する“僕”。そのやるせない想いは、とどまるところを知らない。

選出理由:ゲスの極み乙女。「透明な嵐」

メンバーが無双する、1サビ後の間奏がたまらない。川谷絵音のギター、休日課長のチョッパー、ほな・いこかのドラムに加わる、ちゃんMARIのピアノ。痺れずにはいられなかった。正直、同曲は2019年に配信シングルとしてリリースされていることもあり、【年間ベストソング2020】に入れるか迷ったのだが、2020年にリリースされたゲスの極み乙女。のアルバム『ストリーミング、CD、レコード』の中で最も尖っていたのが「透明な嵐」のように感じたため、この曲を選出した。

 

夢の中でなら、逢える

いつまでも忘れられない別れてしまった恋人について歌っている、三浦春馬の「Night Diver」。

Night Diver

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「瞼閉じて映る世界 そこに君がいるならば もういっそこのままでいいや いつまでも忘れられなくて」という諦めのような想いを“僕”は口にするものの、「ずっとこのままで良いわけなんてあるはずもない」と歌っているところからは、なんとか前に進もうとも葛藤している“僕”の姿が浮かぶ。

だが、やはり“君”を想う気持ちが勝るのだろう。いつまでも忘れられない“君”のこと、破局してしまったときのこと。それらがひたすらぐるぐると廻る“僕”のやりきれなさが強烈に伝わってくる。

“僕”のくだらないプライドや嘘、言い訳などの積み重ねが大事な“君”を失うこととなってしまうが、過去にはもう戻れない。だからこそ、“僕”はそっと夢の中に飛び込むのだろう。“瞼閉じて映る世界”。そこでなら、“君”と逢えるのだ。

選出理由:三浦春馬「Night Diver」

「再生」ボタンを押した瞬間、三浦春馬の“アーティスト”としての顔を目の当たりにすることとなる。ささやくような歌声、ところどころ交じるため息――歌だけでも魅せてくる彼の姿に脱帽した。隅々まで工夫が凝らされた彼の歌い方は、まるで別れてしまった恋人を思い出しながら歌う“僕”そのものだ。俳優や役者として鍛えてきた“表現力”は、その歌声だけでも存分に発揮されているが、驚くのはまだ早かった。切れ味の良いダンスパフォーマンスでも、“表現者三浦春馬は魅せてくる。恋人を失った悲しみや苦しみ、辛さなどを表現。さらには、“負の感情”の中でもがきながらも、水しぶきとともにそれらを吹き飛ばしたいとも願う心の葛藤も見事に表現した、三浦春馬のダンスに圧倒されたのだ。多方面において高い表現力で魅せた三浦春馬の「Night Diver」。年間ベストに追加せずにはいられなかった。

 

“負のループ”との奮闘

コーヒーや紅茶などに入っているカフェインが曲名の、秋山黄色の「Caffeine」。

吐き気や不眠など、カフェイン過剰摂取による副作用が描かれていることから、カフェイン中毒になってしまった人の歌詞とも捉えられるが、恋人と別れてしまい、その苦しみを引きずっている人の歌にも聴こえる。

Caffeine

Caffeine

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「切ない匂い 覚え過ぎたんだ」「排水口 なだれ込んだ心の中身達」といったフレーズからは、かつての恋人の匂いや恋人との楽しかった想い出など、脳裏に焼きついた記憶を必死に忘却しようとする主人公の姿が浮かぶ。

また「‪最後のお願いを聞いておくれ 僕の事を十秒間だけでいいから教えてよ」といった心の叫びや「最期のお願いを聞いておくれ僕の事を 切り開いていいから皆同じ物を流して」といった苦悩からは、恋人を失った辛さがひしひしと伝わってくるだろう。

一度、中毒性のある恋愛をしてしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しい。好きだった人のことをぐるぐると考えるあまり、しんどくなることもあるだろう。しかし、そんな状況から這い出すことができるのは自分ただ一人なのだ。それをちゃんと分かっているからこそ、今日も苦しみや痛みと奮闘するのだろう。

選出理由:秋山黄色「Caffeine」

シンクの蛇口から水がポタポタと垂れる様子をギターで表現したようなイントロから始まり、アウトロで締めくくられる同曲。そんな音と歌詞が合わさることで生まれるハーモニーに、心を奪われるものがあった。そこに、やり場のない怒りや苦しみ、悲しみまでもがひしひしと感じられるような秋山黄色の歌声が合わさることで、より一層、鮮明になる情景描写。18歳のときに作ったものとは思えないほどの完成度の高さに衝撃を受けた。

 

引き金を引くべき時が来た

好きだった人に対する悲しみや苦しみ、怒りを吐き出したような、米津玄師の「ひまわり」。

ひまわり

ひまわり

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地面を強く蹴飛ばす様子や、跳ね返る光に指を立てる姿など、初っ端から“僕”の想いが強烈に描かれているが、これで驚くのはまだ早い。というのも、隠し持っていた“散弾銃”を突然取り出し、発砲するという展開が待ち受けているからである。

散弾銃に手を掛ける“僕”だが、これは心が痣だらけの“僕”がむしゃくしゃした気持ちになっていたからというわけではないようだ。「消し飛べ 散弾銃を ぶち抜け 明日へ」「吐き出せ 北極星へ 舵取れ その手で」と歌っていることから、“僕”は現状を打破しようと、引き金を引いたことが考えられる。

いつだって“君”の姿を追いかけていた“僕”。忘れかけていた想いを胸に、自ら舵を取るべき時が来た。

選出理由:米津玄師「ひまわり」

元気、明るい、ポジティブ――。“ひまわり”と聞いてイメージする、そんな固定観念を覆してきた米津玄師。また、日向で育っているという、ひまわりの一般的なイメージも、「日陰に咲いたひまわり」という表現で壊しにかかっている。“あなただけを見つめる”という花言葉はそのままに、悲しみや苦しみ、怒りなどの感情をあらわにした米津玄師の「ひまわり」。大ヒットした「Lemon」以降、一気にスポットライトが当たった米津玄師は、人々から求められる要求に“迷える羊”となったのだろう。しかし、これからも彼の意思はブレることなく、“日陰”に咲いたような曲を作っていくといった意志表示をこの曲でしたように感じるのだ。だからこそ、アルバム『STRAY SHEEP』に収録された曲のように感じ、年間ベストに選出した。

 

幸せに向かって、舵をとる

夢や理想を掴むため、どんな困難が立ちふさがろうとも邁進していく姿が描かれている、Mrs. GREEN APPLEの「スターダム」。

「期待をして 傷ついて 無くなるもんとわかってるならさ 最初(はな)からいらない」というフレーズから始まるのだが、ここでの“いらない”ものが“失恋”だとしたとき、恋人と別れてから捻くれた“僕”が葛藤しながら舵をとる様子が浮かぶ。

スターダム

スターダム

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恋人を失ったことによって、これまで平和だった世界がだんだん自分のもとを離れていくように感じるようになった“僕”。理想の世の中が“僕”に対して愛想を尽くしていることから、自分もそんな世界を嫌ってみようと試みるも、心が折れてしまう。

その後、心の中が無茶苦茶になってしまったり、守りに入るあまり心が壊れてしまったりする“僕”だが、何かある度に自分を奮い立たせ、荒れ狂う波の中、舵をとっていく。困難な状況の中でも戦うのは、失くしたくない“大事なもの”があるからであり、幸せを掴みたいからだ。

“僕”は元恋人に対する“恋心”をどうしても失いたくないのだろう。好きだった人との幸せを再び掴むべく、荒波に揉まれながらも舵をとる。そんな“僕”のひたむきな愛情が浮かんだ。

選出理由:Mrs. GREEN APPLE「スターダム」

Mrs. GREEN APPLEが活動を始めて、最初の頃、ライブ会場限定で発売されていたミニアルバム『Introduction』の中に収録されていたという同曲。デビュー5周年というタイミングで再録され、“フェーズ1”の締めくくりにふさわしい「Theater」らとともに初のベストアルバム『5』に収められている。心の内に秘められた青さのようなものを、やや荒削りなサウンドとともに炸裂させる様子は、青春そのもの。ライブでもほとんど披露されてこなかったこの曲を、改めて再録という形でベストアルバム『5』に入れてきたことには、初期の頃の気持ちを今でも忘れていない、忘れないという強い想いが込められているように感じた。そんな「スターダム」は、まさに“フェーズ1”完結を意味するベストアルバム『5』のトップバッターにふさわしいだろう。“フェーズ2”への期待も込めて、2020年におけるトップ20曲のうちの1曲として取り上げたい。

 

進み続ける中みせた、精神的な成長

荒れ狂う波の中、葛藤しながら舵をとる主人公。

その先の理想の世界を目掛けて、北へと一心に進み続ける姿が描かれているのは、ネクライトーキーの「北上のススメ」だ。

北上のススメ

北上のススメ

  • ネクライトーキー
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

雨が降り始めるも、どこかに傘を置いてきてしまったことから動けない“僕”。この曲は、そんな“僕”の天然な一面が描かれているところから始まるのだが、そんな状況でも“僕”は「動けないまま 戸惑っていたい 間違えていたい」「北へ向かえば えば えばいいよ 止まんないでいて」と楽観的思考でいるようだ。

ありのままの自分でいいというポジティブ思考を身につけた今の“僕”からは、精神的に少し大人になった様子が垣間見える。恋人と別れてから自分らしさを見失うこともあったこれまでの“僕”だが、これからは“らしさ”を忘れずに持ったまま進んでいきたいのだろう。

また、期待していたバッターが見せ場で空振り三振し、肩を落としながら手のひらを反すファンの姿を眺めながら「娯楽だって裏めくりゃあ 人が生きてるんだぜ」とコメントしていること、「哀しいこともムカつくことも 捨てる手前で溜まる、黙る」と歌っていることからは、“負の感情”もたちまち前に進む原動力に変えてしまう“僕”の姿が浮かぶ。

北へ向かう中で、成長していく“僕”。その先にはどんな景色が広がっているのだろう。

選出理由:ネクライトーキー「北上のススメ」

“負の感情”のその先へと向かったネクライトーキーの同曲は、不思議とパワーがみなぎってくるようなナンバーだ。それはビブラスラップがアクセント的に用いられているなど、サウンドが楽しげだからというだけではない。この曲の最大の魅力――それは、その歌詞にあると思っている。なるべく楽観的に考えているところや、“負の感情”を捨てるのではなく、前に進む原動力へと昇華させているところが描かれたその歌には、どこか自分自身と重なるところがあった。もうすぐ3年目に突入するこのブログを始めたことには、後者と似たような想いが関係している。だからこそ、この歌を最初に耳にしたとき、どこか胸の高鳴りを感じたのだ。そのような理由から、この曲を年間ベストに選出した。

 

男性が恋に落ちたのは、“ナマイキ”な女性

これまで男性側の気持ちを見てきたが、ここで女性側の気持ちを覗いてみよう。

のんの「ナマイキにスカート」は、独特の表現方法をキラリと光らせながら、複雑な女心を描いたような楽曲だ。

ナマイキにスカート

ナマイキにスカート

  • のん
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

裏地のほうがステキなスカートを“見せたいけど見せない”ものだと説明しながら、「見えていることだけがすべてじゃない」と、単純ではない女心について明かしていく“あたし”。

また「ステキでしょこのくちびる でも触れるともっとステキなの 知りたいなら近づいて」と言いながら、「答えを知ることだけがすべてじゃない」「プロセス大事 そっちが大事」と諭す姿は、どこか“ナマイキ”だ。さらには、“大事なことは言わないだけでわかっている”のだから、ズルい。

“ナマイキ”ながら、どこか憎めない可愛さを持ち合わせ、賢さも秘めた“あたし”。これは、男性が恋に落ちるのも理解できるだろう。

選出理由:のん「ナマイキにスカート」

中学生だった頃、GO!GO!7188コピーバンドをしていたというのん。そんな彼女の歌声が心地よく聴こえるのは、ただ単に歌が上手いだけでなく、曲調と歌詞もフィットしているからだろう。この曲を手掛けたのは、元GO!GO!7188のギター・ボーカルを担当していたユウと、ベース・ボーカルを担っていたノマアキコだ。「やまないガール」と「涙の味、苦い味」で初タッグを組んだことがファンからの熱い要望を受けることとなり、今回、再びタッグを組むことが実現している。そんな“憧れの存在”である2人と2度もタイアップできたのは、のんの人柄の良さが大きいと思っている。元所属事務所との騒動があったとはいえ、変わることを恐れない“やまないガール”は、本名を捨ててまで、新たな一歩を踏み出すことを決意した。彼女をサポートする周りの人たちとともに、“創作あーちすと”としての道を歩み始めたのん。才能を開花させながら、これからも“ナマイキ”に“スカート”を揺らしていてほしい。今後への期待も込めて、年間ベストに選出した。

 

“あいつ”との関係

ひたすら“北”へと向かい続けた主人公。それから時が経ち、一歩成長した主人公は、過去のことを笑って許せるようにまでなったのだろう。

キュウソネコカミの「あいつホンマ」は、相手の欠点を上げながらも、長所にも目を向け、“あいつ”の嫌いな部分、好きな部分の両面を歌った1曲だ。客観的に“あいつ”のことを話せるようになったところからは、主人公が冷静さを取り戻し、一段と成長したことが分かる。

あいつホンマ

あいつホンマ

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「あいつはめちゃくちゃバカだけど 命をつなぐ心に灯す」という歌から始まる同曲。その後も「あいつはめちゃくちゃクズだけど おもしろい事たくさん知ってる」と続く。エッジの効いた言葉で“あいつ”を滅多切りにするかと思いきや、相手の持つ良さについても触れているところからは、欠点も許せるようになった2人の関係性が見えてくるだろう。

そして、“あいつ”の欠点については「バカ」と「クズ」という2点しかないのに対し、長所については他にも「心に刺さる言葉を示す」「新しいことたくさん知ってる」「今も僕らに力をくれる」「居なくなると寂しくなる」と歌っている。

そんな“僕”からは、“あいつ”に対する愛情が感じられるだろう。しかし、それはきっと、友愛としての感情だ。2人は今、友だちとして仲良くしているのだろう。

“あいつ”のことも、“僕”のことも、今ではすっかりお互いのことを許せるようになったからこそ、好き嫌い、どちらの面も見ることができるようになった“僕”。じんわりと伝わってくる“僕”のやさしさが身に染みる。

選出理由:キュウソネコカミ「あいつホンマ」

「でも(Demo)」「だって(Datte)」「どうせ(Douse)」という“人生を不幸にする3D”がある。そこに「だけど(Dakedo)」も加えて“4D”としている人もいるが、キュウソネコカミは違った。彼らはネガティブなワードを逆手に取り、ポジティブへと変えるという“人を幸せにするD”を活用しているのだ。人の悪いところばかりが目に付いてしまうという人も少なくないが、彼らが使う「だけど」のように、異なる見方で見てみたら、何か変わるのかもしれない。どこか青春を感じる、キュウソネコカミの「あいつホンマ」。“誰かにとって光(希望)になれる”1曲だろう。やさしい世界になってほしい、という願いも込めてピックアップ。

 

新たな心の灯

恋が激しく燃え上がる様子を夏に重ねたような、sumikaの「絶叫セレナーデ」。

この曲からは、主人公の新しい恋が始まった様子が伝わってくる。

絶叫セレナーデ

絶叫セレナーデ

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「ストップ 止まれって言われても 着火しちゃったら仕舞いだ 夏フレーバー ダンスフィーバー ブレイクアウト」という、いかにも心に火が灯った様子が感じられる歌詞から加速していく恋心。

そのスピードは衰えるところを知らず、主人公は“敗色濃厚でも御構い無い”ほどの感情を燃やしていく。一方、相手の女性はマイペースなところがあるのだろう。主人公は相手のスピードに対し「トロいそんなスピードじゃ 待っていらんねえ」と心の声があふれ出している。

極めつきは「待っていたくねえ」という最後のフレーズだ。もはや誰にも止められない恋心を爆発させて終わるのである。

このあと、2人の間にはどんな展開が待ち受けているのだろうか。今度こそ上手くいってほしいと願うばかりだ。

選出理由:sumika「絶叫セレナーデ」

“全力脱衣系”青春映画「ぐらんぶる」の主題歌として書き下ろされた同曲で、sumikaの“脱ぎっぷり”を目の当たりにすることとなる。アッパーなチューンに乗せて、韻を踏んだり、掛け言葉を用いたりする言葉遊び、謎に多いカタカナ、そして擬音語がたんまり詰め込まれた歌が流れてくるのだ。例えば「のうのうとのうのうとじゃ 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」といった歌詞が登場するのだが、“のうのうと”という表現はところどころ出てくる「トロいそんなスピードじゃ 待っていらんねえ」というフレーズに掛けているだけでなく、次の“嫌だ嫌だ”にも繋がるよう、“NO、NOと”という言葉の掛け言葉になっていることが分かる。言葉遊びを楽しんでいる曲は過去曲にもたくさんあるが、どの曲も粋な言葉で丁寧に説明したような歌詞が多かったように感じる。そんな中、sumikaが歌を通して、ここまで楽しそうにはっちゃけて遊ぶ姿を見ることができたのは、この曲くらいだろう。そして、それはきっと、映画「ぐらんぶる」とタイアップしたからこそだと思っている。今までにない新しさも感じることができた「絶叫セレナーデ」。そこで魅せた、sumikaの“脱ぎっぷり”を高く評価した。

 

終わりに

10曲で紡いだ、恋愛ストーリー。楽しんでもらえたらうれしい。

フィクションではあるものの、筆者も今年、失恋を経験したからこそ、書けるものがあったのだと思っている。

最後に目次を記しておくので、気になった曲はぜひ聴いてみてほしい。

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お知らせ

読者の皆さまへ

年間ベストの後半戦は、12月13日(日)よる7時に掲載予定です。

この日までにできるだけ間に合わせるつもりではいますが、多少、前後する可能性もございます。あらかじめご了承ください。

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ちゃんさき

 

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