ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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【年間ベストソング2020】ちゃんさき的トップ20曲で、ストーリーを描く!(うち10曲、恋愛ver.)

さまざまな曲がリリースされた、2020年。

いろいろあった1年もそろそろ終わりに近づいているが、毎年多くの媒体やジャーナリスト、ライターからブロガーまで、音楽を愛する人たちが最後に力を振り絞る季節がやってきた。

年間ベストを発表する時期の到来である。

 

ブログを始めて早2年が経とうとしている、ちゃんさき氏。これまで、人の年間ベストを眺めてばかりいたが、実は密かに“マイベスト”を作ることに憧れを抱いていたのだ。

そこで今回、今年こそはと気合いを入れて、私も書いてみることにした。

ランキング形式は曲に優劣をつけているようで好まないため、たくさんの曲を聴く中で特に気に入った20曲をピックアップ。10曲ずつに分け、それぞれをストーリー形式で紹介する“らしさ”全開の“マイベスト”を作ってみた。

また、各楽曲のストーリーの下部には、選出理由も記載している。ストーリーだけ先に読んでから、各曲の選出理由を見ていくなど、あなたなりの読み方で愉しんでいってもらえたらうれしい。

最初に紹介するのは、恋愛をテーマに曲で紡いだストーリーだ。一風変わった、年間ベストの前半戦。それでは、行ってみよう。

 

尾を引く2人の愛

別れてしまった男女が終わってしまった恋について嘆いている、End of the Worldの「Over (feat. Gabrielle Aplin) [Shift K3Y Remix]」。

Over (feat. Gabrielle Aplin)

Over (feat. Gabrielle Aplin)

  • End of the World
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

男女がお互いに「この恋が終わってしまったなんて信じられない、立ち直れない(※注1)」と嘆いているものの、それぞれのパートで「よく本気じゃないことを言っていたけれど、今回は本気な気がする(※注2)」や「あなたは私(僕)の全てを愛していたけれど、今回は愛しているフリをしているだけだよね(※注3)」と歌っていることから、2人の間で何らかの誤解が生じて、別れてしまったことが考えられる。

男性は、どこで間違ってしまったのか、あれこれ考えるものの、これといった理由が見当たらない。一方、女性は、男性の両親の前でしなくてもいい演技をしたこと、いくつかの話を飛ばしたことなどの具体例を挙げている。

破局後も、終わってしまった恋の原因を考えている2人。しばらく尾を引きそうだ。

 

※注1:(正式な歌詞)I can't get over that it's over

※注2:(正式な歌詞)You used to say things you didn't mean But this time I felt you meant it

※注3:(正式な歌詞)You used to love all the parts of me But this time you're just pretending

選出理由:End of the World「Over (feat. Gabrielle Aplin) [Shift K3Y Remix]」

SEKAI NO OWARIのボーカル・Fukaseとシンガーソングライター・Gabrielle Aplinがタッグを組んだ同曲。違和感を全く感じさせない2人の歌声は、まるで付き合っていた男女のようだ。そこに懐かしさを感じさせる幻想的なサウンド、心臓の鼓動を彷彿とさせるビート、ダンサブルな音楽が加わることで、交際していたときのワクワクやドキドキ、楽しさが感じられるだろう。国境を越えた2人が描いた、終わってしまった恋についての嘆き。そんな2人の表現力を高く評価した。

 

やるせない想い

「くたびれない心が欲しい」というフレーズから始まる、ゲスの極み乙女。の「透明な嵐」は、やりきれない“僕”の混沌とした気持ちが描かれた1曲のように感じる。

透明な嵐

透明な嵐

  • provided courtesy of iTunes

“僕”は“あなた”の側にいたいと思っているものの、“僕”にとって“あなた”は今や高嶺の花のような存在なのだろう。というのも、“僕”は“あなた”のことを「奇跡」と呼び、「隣の芝生で青くありたい」と言っているからだ。そんな2人の心には、どこか距離が感じられる。

追いかけてくれない“あなた”と、追いかけたい“僕”。2人の関係に悩む“僕”だが、「透明な嵐 気だるい背中を いつのまにか押してくれ あぁ」と他力本願だ。どうやらこの“僕”、あれこれと考えるあまり、前に進めない状況に陥っているようだ。

いろいろと考える中で、“僕”は過去の記憶まで遡ることとなる。そこで“僕”はある出来事にたどり着くが、「後悔したくない」という気持ちから、それを受け止められずに立ち止まって蓋を閉める、“僕”の姿が描かれている。そのため、詳しくは書かれていないが、過去に2人は恋人関係だったことが考えられる。しかし、“僕”の“譲れないこと”が引き金となり、破局するという事態に発展してしまったのだろう。

やりきれなさを吐露する“僕”。そのやるせない想いは、とどまるところを知らない。

選出理由:ゲスの極み乙女。「透明な嵐」

メンバーが無双する、1サビ後の間奏がたまらない。川谷絵音のギター、休日課長のチョッパー、ほな・いこかのドラムに加わる、ちゃんMARIのピアノ。痺れずにはいられなかった。正直、同曲は2019年に配信シングルとしてリリースされていることもあり、【年間ベストソング2020】に入れるか迷ったのだが、2020年にリリースされたゲスの極み乙女。のアルバム『ストリーミング、CD、レコード』の中で最も尖っていたのが「透明な嵐」のように感じたため、この曲を選出した。

 

夢の中でなら、逢える

いつまでも忘れられない別れてしまった恋人について歌っている、三浦春馬の「Night Diver」。

Night Diver

Night Diver

  • provided courtesy of iTunes

「瞼閉じて映る世界 そこに君がいるならば もういっそこのままでいいや いつまでも忘れられなくて」という諦めのような想いを“僕”は口にするものの、「ずっとこのままで良いわけなんてあるはずもない」と歌っているところからは、なんとか前に進もうとも葛藤している“僕”の姿が浮かぶ。

だが、やはり“君”を想う気持ちが勝るのだろう。いつまでも忘れられない“君”のこと、破局してしまったときのこと。それらがひたすらぐるぐると廻る“僕”のやりきれなさが強烈に伝わってくる。

“僕”のくだらないプライドや嘘、言い訳などの積み重ねが大事な“君”を失うこととなってしまうが、過去にはもう戻れない。だからこそ、“僕”はそっと夢の中に飛び込むのだろう。“瞼閉じて映る世界”。そこでなら、“君”と逢えるのだ。

選出理由:三浦春馬「Night Diver」

「再生」ボタンを押した瞬間、三浦春馬の“アーティスト”としての顔を目の当たりにすることとなる。ささやくような歌声、ところどころ交じるため息――歌だけでも魅せてくる彼の姿に脱帽した。隅々まで工夫が凝らされた彼の歌い方は、まるで別れてしまった恋人を思い出しながら歌う“僕”そのものだ。俳優や役者として鍛えてきた“表現力”は、その歌声だけでも存分に発揮されているが、驚くのはまだ早かった。切れ味の良いダンスパフォーマンスでも、“表現者三浦春馬は魅せてくる。恋人を失った悲しみや苦しみ、辛さなどを表現。さらには、“負の感情”の中でもがきながらも、水しぶきとともにそれらを吹き飛ばしたいとも願う心の葛藤も見事に表現した、三浦春馬のダンスに圧倒されたのだ。多方面において高い表現力で魅せた三浦春馬の「Night Diver」。年間ベストに追加せずにはいられなかった。

 

“負のループ”との奮闘

コーヒーや紅茶などに入っているカフェインが曲名の、秋山黄色の「Caffeine」。

吐き気や不眠など、カフェイン過剰摂取による副作用が描かれていることから、カフェイン中毒になってしまった人の歌詞とも捉えられるが、恋人と別れてしまい、その苦しみを引きずっている人の歌にも聴こえる。

Caffeine

Caffeine

  • 秋山黄色
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

「切ない匂い 覚え過ぎたんだ」「排水口 なだれ込んだ心の中身達」といったフレーズからは、かつての恋人の匂いや恋人との楽しかった想い出など、脳裏に焼きついた記憶を必死に忘却しようとする主人公の姿が浮かぶ。

また「‪最後のお願いを聞いておくれ 僕の事を十秒間だけでいいから教えてよ」といった心の叫びや「最期のお願いを聞いておくれ僕の事を 切り開いていいから皆同じ物を流して」といった苦悩からは、恋人を失った辛さがひしひしと伝わってくるだろう。

一度、中毒性のある恋愛をしてしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しい。好きだった人のことをぐるぐると考えるあまり、しんどくなることもあるだろう。しかし、そんな状況から這い出すことができるのは自分ただ一人なのだ。それをちゃんと分かっているからこそ、今日も苦しみや痛みと奮闘するのだろう。

選出理由:秋山黄色「Caffeine」

シンクの蛇口から水がポタポタと垂れる様子をギターで表現したようなイントロから始まり、アウトロで締めくくられる同曲。そんな音と歌詞が合わさることで生まれるハーモニーに、心を奪われるものがあった。そこに、やり場のない怒りや苦しみ、悲しみまでもがひしひしと感じられるような秋山黄色の歌声が合わさることで、より一層、鮮明になる情景描写。18歳のときに作ったものとは思えないほどの完成度の高さに衝撃を受けた。

 

引き金を引くべき時が来た

好きだった人に対する悲しみや苦しみ、怒りを吐き出したような、米津玄師の「ひまわり」。

ひまわり

ひまわり

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

地面を強く蹴飛ばす様子や、跳ね返る光に指を立てる姿など、初っ端から“僕”の想いが強烈に描かれているが、これで驚くのはまだ早い。というのも、隠し持っていた“散弾銃”を突然取り出し、発砲するという展開が待ち受けているからである。

散弾銃に手を掛ける“僕”だが、これは心が痣だらけの“僕”がむしゃくしゃした気持ちになっていたからというわけではないようだ。「消し飛べ 散弾銃を ぶち抜け 明日へ」「吐き出せ 北極星へ 舵取れ その手で」と歌っていることから、“僕”は現状を打破しようと、引き金を引いたことが考えられる。

いつだって“君”の姿を追いかけていた“僕”。忘れかけていた想いを胸に、自ら舵を取るべき時が来た。

選出理由:米津玄師「ひまわり」

元気、明るい、ポジティブ――。“ひまわり”と聞いてイメージする、そんな固定観念を覆してきた米津玄師。また、日向で育っているという、ひまわりの一般的なイメージも、「日陰に咲いたひまわり」という表現で壊しにかかっている。“あなただけを見つめる”という花言葉はそのままに、悲しみや苦しみ、怒りなどの感情をあらわにした米津玄師の「ひまわり」。大ヒットした「Lemon」以降、一気にスポットライトが当たった米津玄師は、人々から求められる要求に“迷える羊”となったのだろう。しかし、これからも彼の意思はブレることなく、“日陰”に咲いたような曲を作っていくといった意志表示をこの曲でしたように感じるのだ。だからこそ、アルバム『STRAY SHEEP』に収録された曲のように感じ、年間ベストに選出した。

 

幸せに向かって、舵をとる

夢や理想を掴むため、どんな困難が立ちふさがろうとも邁進していく姿が描かれている、Mrs. GREEN APPLEの「スターダム」。

「期待をして 傷ついて 無くなるもんとわかってるならさ 最初(はな)からいらない」というフレーズから始まるのだが、ここでの“いらない”ものが“失恋”だとしたとき、恋人と別れてから捻くれた“僕”が葛藤しながら舵をとる様子が浮かぶ。

スターダム

スターダム

  • provided courtesy of iTunes

恋人を失ったことによって、これまで平和だった世界がだんだん自分のもとを離れていくように感じるようになった“僕”。理想の世の中が“僕”に対して愛想を尽くしていることから、自分もそんな世界を嫌ってみようと試みるも、心が折れてしまう。

その後、心の中が無茶苦茶になってしまったり、守りに入るあまり心が壊れてしまったりする“僕”だが、何かある度に自分を奮い立たせ、荒れ狂う波の中、舵をとっていく。困難な状況の中でも戦うのは、失くしたくない“大事なもの”があるからであり、幸せを掴みたいからだ。

“僕”は元恋人に対する“恋心”をどうしても失いたくないのだろう。好きだった人との幸せを再び掴むべく、荒波に揉まれながらも舵をとる。そんな“僕”のひたむきな愛情が浮かんだ。

選出理由:Mrs. GREEN APPLE「スターダム」

Mrs. GREEN APPLEが活動を始めて、最初の頃、ライブ会場限定で発売されていたミニアルバム『Introduction』の中に収録されていたという同曲。デビュー5周年というタイミングで再録され、“フェーズ1”の締めくくりにふさわしい「Theater」らとともに初のベストアルバム『5』に収められている。心の内に秘められた青さのようなものを、やや荒削りなサウンドとともに炸裂させる様子は、青春そのもの。ライブでもほとんど披露されてこなかったこの曲を、改めて再録という形でベストアルバム『5』に入れてきたことには、初期の頃の気持ちを今でも忘れていない、忘れないという強い想いが込められているように感じた。そんな「スターダム」は、まさに“フェーズ1”完結を意味するベストアルバム『5』のトップバッターにふさわしいだろう。“フェーズ2”への期待も込めて、2020年におけるトップ20曲のうちの1曲として取り上げたい。

 

進み続ける中みせた、精神的な成長

荒れ狂う波の中、葛藤しながら舵をとる主人公。

その先の理想の世界を目掛けて、北へと一心に進み続ける姿が描かれているのは、ネクライトーキーの「北上のススメ」だ。

北上のススメ

北上のススメ

  • ネクライトーキー
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

雨が降り始めるも、どこかに傘を置いてきてしまったことから動けない“僕”。この曲は、そんな“僕”の天然な一面が描かれているところから始まるのだが、そんな状況でも“僕”は「動けないまま 戸惑っていたい 間違えていたい」「北へ向かえば えば えばいいよ 止まんないでいて」と楽観的思考でいるようだ。

ありのままの自分でいいというポジティブ思考を身につけた今の“僕”からは、精神的に少し大人になった様子が垣間見える。恋人と別れてから自分らしさを見失うこともあったこれまでの“僕”だが、これからは“らしさ”を忘れずに持ったまま進んでいきたいのだろう。

また、期待していたバッターが見せ場で空振り三振し、肩を落としながら手のひらを反すファンの姿を眺めながら「娯楽だって裏めくりゃあ 人が生きてるんだぜ」とコメントしていること、「哀しいこともムカつくことも 捨てる手前で溜まる、黙る」と歌っていることからは、“負の感情”もたちまち前に進む原動力に変えてしまう“僕”の姿が浮かぶ。

北へ向かう中で、成長していく“僕”。その先にはどんな景色が広がっているのだろう。

選出理由:ネクライトーキー「北上のススメ」

“負の感情”のその先へと向かったネクライトーキーの同曲は、不思議とパワーがみなぎってくるようなナンバーだ。それはビブラスラップがアクセント的に用いられているなど、サウンドが楽しげだからというだけではない。この曲の最大の魅力――それは、その歌詞にあると思っている。なるべく楽観的に考えているところや、“負の感情”を捨てるのではなく、前に進む原動力へと昇華させているところが描かれたその歌には、どこか自分自身と重なるところがあった。もうすぐ3年目に突入するこのブログを始めたことには、後者と似たような想いが関係している。だからこそ、この歌を最初に耳にしたとき、どこか胸の高鳴りを感じたのだ。そのような理由から、この曲を年間ベストに選出した。

 

男性が恋に落ちたのは、“ナマイキ”な女性

これまで男性側の気持ちを見てきたが、ここで女性側の気持ちを覗いてみよう。

のんの「ナマイキにスカート」は、独特の表現方法をキラリと光らせながら、複雑な女心を描いたような楽曲だ。

ナマイキにスカート

ナマイキにスカート

  • のん
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

裏地のほうがステキなスカートを“見せたいけど見せない”ものだと説明しながら、「見えていることだけがすべてじゃない」と、単純ではない女心について明かしていく“あたし”。

また「ステキでしょこのくちびる でも触れるともっとステキなの 知りたいなら近づいて」と言いながら、「答えを知ることだけがすべてじゃない」「プロセス大事 そっちが大事」と諭す姿は、どこか“ナマイキ”だ。さらには、“大事なことは言わないだけでわかっている”のだから、ズルい。

“ナマイキ”ながら、どこか憎めない可愛さを持ち合わせ、賢さも秘めた“あたし”。これは、男性が恋に落ちるのも理解できるだろう。

選出理由:のん「ナマイキにスカート」

中学生だった頃、GO!GO!7188コピーバンドをしていたというのん。そんな彼女の歌声が心地よく聴こえるのは、ただ単に歌が上手いだけでなく、曲調と歌詞もフィットしているからだろう。この曲を手掛けたのは、元GO!GO!7188のギター・ボーカルを担当していたユウと、ベース・ボーカルを担っていたノマアキコだ。「やまないガール」と「涙の味、苦い味」で初タッグを組んだことがファンからの熱い要望を受けることとなり、今回、再びタッグを組むことが実現している。そんな“憧れの存在”である2人と2度もタイアップできたのは、のんの人柄の良さが大きいと思っている。元所属事務所との騒動があったとはいえ、変わることを恐れない“やまないガール”は、本名を捨ててまで、新たな一歩を踏み出すことを決意した。彼女をサポートする周りの人たちとともに、“創作あーちすと”としての道を歩み始めたのん。才能を開花させながら、これからも“ナマイキ”に“スカート”を揺らしていてほしい。今後への期待も込めて、年間ベストに選出した。

 

“あいつ”との関係

ひたすら“北”へと向かい続けた主人公。それから時が経ち、一歩成長した主人公は、過去のことを笑って許せるようにまでなったのだろう。

キュウソネコカミの「あいつホンマ」は、相手の欠点を上げながらも、長所にも目を向け、“あいつ”の嫌いな部分、好きな部分の両面を歌った1曲だ。客観的に“あいつ”のことを話せるようになったところからは、主人公が冷静さを取り戻し、一段と成長したことが分かる。

あいつホンマ

あいつホンマ

  • provided courtesy of iTunes

「あいつはめちゃくちゃバカだけど 命をつなぐ心に灯す」という歌から始まる同曲。その後も「あいつはめちゃくちゃクズだけど おもしろい事たくさん知ってる」と続く。エッジの効いた言葉で“あいつ”を滅多切りにするかと思いきや、相手の持つ良さについても触れているところからは、欠点も許せるようになった2人の関係性が見えてくるだろう。

そして、“あいつ”の欠点については「バカ」と「クズ」という2点しかないのに対し、長所については他にも「心に刺さる言葉を示す」「新しいことたくさん知ってる」「今も僕らに力をくれる」「居なくなると寂しくなる」と歌っている。

そんな“僕”からは、“あいつ”に対する愛情が感じられるだろう。しかし、それはきっと、友愛としての感情だ。2人は今、友だちとして仲良くしているのだろう。

“あいつ”のことも、“僕”のことも、今ではすっかりお互いのことを許せるようになったからこそ、好き嫌い、どちらの面も見ることができるようになった“僕”。じんわりと伝わってくる“僕”のやさしさが身に染みる。

選出理由:キュウソネコカミ「あいつホンマ」

「でも(Demo)」「だって(Datte)」「どうせ(Douse)」という“人生を不幸にする3D”がある。そこに「だけど(Dakedo)」も加えて“4D”としている人もいるが、キュウソネコカミは違った。彼らはネガティブなワードを逆手に取り、ポジティブへと変えるという“人を幸せにするD”を活用しているのだ。人の悪いところばかりが目に付いてしまうという人も少なくないが、彼らが使う「だけど」のように、異なる見方で見てみたら、何か変わるのかもしれない。どこか青春を感じる、キュウソネコカミの「あいつホンマ」。“誰かにとって光(希望)になれる”1曲だろう。やさしい世界になってほしい、という願いも込めてピックアップ。

 

新たな心の灯

恋が激しく燃え上がる様子を夏に重ねたような、sumikaの「絶叫セレナーデ」。

この曲からは、主人公の新しい恋が始まった様子が伝わってくる。

絶叫セレナーデ

絶叫セレナーデ

  • provided courtesy of iTunes

「ストップ 止まれって言われても 着火しちゃったら仕舞いだ 夏フレーバー ダンスフィーバー ブレイクアウト」という、いかにも心に火が灯った様子が感じられる歌詞から加速していく恋心。

そのスピードは衰えるところを知らず、主人公は“敗色濃厚でも御構い無い”ほどの感情を燃やしていく。一方、相手の女性はマイペースなところがあるのだろう。主人公は相手のスピードに対し「トロいそんなスピードじゃ 待っていらんねえ」と心の声があふれ出している。

極めつきは「待っていたくねえ」という最後のフレーズだ。もはや誰にも止められない恋心を爆発させて終わるのである。

このあと、2人の間にはどんな展開が待ち受けているのだろうか。今度こそ上手くいってほしいと願うばかりだ。

選出理由:sumika「絶叫セレナーデ」

“全力脱衣系”青春映画「ぐらんぶる」の主題歌として書き下ろされた同曲で、sumikaの“脱ぎっぷり”を目の当たりにすることとなる。アッパーなチューンに乗せて、韻を踏んだり、掛け言葉を用いたりする言葉遊び、謎に多いカタカナ、そして擬音語がたんまり詰め込まれた歌が流れてくるのだ。例えば「のうのうとのうのうとじゃ 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」といった歌詞が登場するのだが、“のうのうと”という表現はところどころ出てくる「トロいそんなスピードじゃ 待っていらんねえ」というフレーズに掛けているだけでなく、次の“嫌だ嫌だ”にも繋がるよう、“NO、NOと”という言葉の掛け言葉になっていることが分かる。言葉遊びを楽しんでいる曲は過去曲にもたくさんあるが、どの曲も粋な言葉で丁寧に説明したような歌詞が多かったように感じる。そんな中、sumikaが歌を通して、ここまで楽しそうにはっちゃけて遊ぶ姿を見ることができたのは、この曲くらいだろう。そして、それはきっと、映画「ぐらんぶる」とタイアップしたからこそだと思っている。今までにない新しさも感じることができた「絶叫セレナーデ」。そこで魅せた、sumikaの“脱ぎっぷり”を高く評価した。

 

終わりに

10曲で紡いだ、恋愛ストーリー。楽しんでもらえたらうれしい。

フィクションではあるものの、筆者も今年、失恋を経験したからこそ、書けるものがあったのだと思っている。

最後に目次を記しておくので、気になった曲はぜひ聴いてみてほしい。

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お知らせ

読者の皆さまへ

年間ベストの後半戦は、12月13日(日)よる7時に掲載予定です。

この日までにできるだけ間に合わせるつもりではいますが、多少、前後する可能性もございます。あらかじめご了承ください。

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ちゃんさき

 

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