ミュージック バンク

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感性に訴えてきた楽曲を、ちゃんさきセレクションでお送りする音楽ブログ。独断と偏見で綴っています。

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“ヘタクソ”のその先へ――“愛すべきラブソング”たちの想いよ、響け

歌の上手い、下手だけで曲を判断する人がいる。

“下手”だと感じれば、簡単に切り捨ててしまう人が、残念ながらいる。

誰かにとっては、“ヘタクソ”に感じるのかもしれない。それでも、他の誰かにとっては、“愛すべき歌”にだってなり得ることがある。

その“違い”は、“想い”の部分に気づくことができることか否かだと思うのだ。彼らの“想い”を感じ取ることさえできれば、例え“ヘタクソ”だとしても、その歌が美しく聴こえるものだと、そう思っている。今回は、そんな“愛すべきラブソング”について、自由に綴っていきたい。

湘南乃風純恋歌

例えば、“お前”に向けてヘタクソながらも愛を歌う、湘南乃風の「純恋歌」がある。

なかなか個性的な歌い方をするため、人によってはあまり好きではないと思う人もいるかもしれない。また、歌詞も「初めて一途になれたよ」と歌いつつも、「家庭的な女がタイプの俺 一目惚れ」と歌っているところに、やや疑問を感じる人もいるかもしれない。それでも、湘南乃風が好きな私からしてみたら、この曲は彼らの“代名詞”と言っても過言ではないくらいの名曲だ。

“お前”のことを愛するあまり、やや口下手になってしまっているところはあると思う。しかし、その想いには並々ならぬ熱量があることが、彼らの情熱的な歌い方や歌詞から伝わってくるのではないだろうか。

湘南乃風は「ヘタクソな歌で愛を」「バカな男が愛を歌おう」と歌っているが、彼らの熱い“想い”を目の当たりにしたとき、“ヘタクソ”とは言えなくなると思うのだ。そして、それを言うことができるのは、本人。それから、彼らのことを大切に思っている人たちだけだと思っている。そう思っている人たちの言葉には、どこか“愛”が感じられるからだ。

CY8ER「サマー」

CY8ER(読み:サイバー)の「サマー」には、「聴かせてほしいな、下手くそな歌」という歌詞が登場する。さらには、「世界中に響くEメジャー いつか届くよう衝動 ずっと抱いていたいよ」とも歌っている。

この曲に出現する“君”は、アーティストだ。しかし、“着てる服以外見たことない”ことから、売れていないことが分かる。歌もあまり上手くはないのだろう。それでも、「聴かせてほしいな、下手くそな歌」と言っているところからは、“君”への愛情が伝わってくる。さらには、“君”の歌が世界中に売れることを願っているのだ。

そんな愛のある“下手くそ”という言い方をしているのは、きっと、売れるための努力をしている“君”のことをよく理解しているからだろう。また、大切に思っている“君”の想いに少なからず共感できるところがあるからではないか、と思うのだ。

だからこそ、“聴かせてほしい”のだろう。例え“下手くそ”だとしても、“想い”の部分に気づいたとき、美しく聴こえるものだと、そう信じてやまない。ラブソングが美しく聴こえやすいのは、人を想う気持ちの熱量が高い曲が多いからではないだろうか。その“想い”には、いっさい混じり気がなく、どこまでも純粋だ。だからこそ、心動かされる曲が多いのだと思っている。

GReeeeN「愛唄」

純愛で言えば、GReeeeNの「愛唄」も負けていない。“大好きな君”への想いを、飾ることなく、ありのままに伝えている等身大のラブソングである。

そして、この曲にも「ヘタクソな唄」という歌詞が登場するのだ。冒頭で「愛してる」という言葉以外伝えることができない“僕”が描かれていることから、“僕”は自分の唄が“ヘタクソ”だと思ってしまっているところがあるのかもしれない。

しかし、例え“僕”がそう思っていたとしても、そんなことを微塵も感じさせないのは、やはり“僕”が“大好きな君”に対して決して背伸びせずに、ストレートに想いを伝えているところにあるのだろう。だからこそ、この曲はたくさんの人の心を震わせ、次第に名曲と呼ばれるようになり、リリースされてから数年の時を経たのち映画化もされたのだと思うのだ。

「愛してる」と言われ、最初は笑っていた“君”にも、想いがしっかりと伝わったのではないだろうか。上手い下手は関係ない。本気の想いは、人にもきちんと伝わるものだと思うのだ。少なくとも私は、そう思う。

 

今週のお題「わたしのプレイリスト」

Ambivalent about VaVaの「悲しいAkon」

VaVaの「悲しいAkon」が突き抜けている。

これまで“アンビバレント”といえば、欅坂46(現、櫻坂46)のそれが浮かんだが、私の脳内ディクショナリー・“アンビバレント”ページの中に、新たな曲が刻まれた。

それが、この曲。VaVaの「悲しいAkon」である。

悲しいAkon

悲しいAkon

  • 発売日: 2021/04/28
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

今回はそんな「悲しいAkon」に感じた魅力を、独断と偏見で自由に語っていきたい。

タイトルから欅坂46(櫻坂46)も関連しているのかと期待してクリックしてしまった人がいたら、申し訳ない。好きではあるものの、残念ながらこの記事には他にどこにも登場しないので、それは謝らせてほしい。お詫びに、昨年末、個人的年間ベストソングにセレクトした「誰がその鐘を鳴らすのか?」のことも記載している記事を紹介しておきたい。気になった方は、こちらへどうぞ。

 

なんとなく最近のヒップホップが気になり、ランダムに曲を流していたところ、VaVaの「悲しいAkon」に心をくすぐられた。

恋人と別れてしまったあとに、たまたまAKONの曲をいろいろと聴いていた、というのが、この曲のざっくりとした内容である。“悲哀”がテーマでありながら、聴いていて耳が楽しいという、アンビバレントな感情を抱いたのは初めてだ。

これまで出逢ったことのある、いわゆる“失恋ソング”は、失恋した悲しさをそのまま“負の感情”のあふれ出るままに情緒たっぷりに表現したものか、“負の感情”を自分なりに断ち切ってみせ、明るくポジティブに昇華させたもののいずれかだった。

例えば、恋の百戦錬磨といっても過言ではない“ラブソングの女王”・西野カナは、その名を世に広く轟かせることとなった名曲「会いたくて 会いたくて」で、失恋した辛さを、誰もが知る“キラーフレーズ”「会いたくて 会いたくて 震える」と想いあふれるままに歌っていたり、“片想いソングの女王”・Miliyahこと加藤ミリヤは、「Love Forever」や「Aitai」で、恋の切なさや失恋の痛みを、高らかに歌い上げていることは有名だろう。

また、Taylor Swiftの「We Are Never Ever Getting Back Together」では、もう決して戻らないという力強い意志を明るく宣言、Kelly Clarksonの「Stronger (What Doesn't Kill You)」では、失恋から立ち上がった姿をパワフルに描いている。

“失恋ソング”といっても、そのアーティストの気分によって描き方も、ニュアンスも異なるが、「悲しいAkon」のように、失恋してしまって、たまたまAKONのいろんな曲を聴いていた、という“出来事”だけを粛々と描いている曲に出逢ったのは、初めてだ。

そして、ピコピコ電子音とともに流れるのは、VaVaの淡々としたラップである。「楽しい Akon」「寂しい Akon」「嬉しい Akon」「悲しい Akon」というフレーズが曲の大半を占め、“音”で視聴者を楽しませる曲として昇華させたこの曲に衝撃を受けたのだった。

「楽しい Akon」は「Play Hard」、「寂しい Akon」は「Lonely」や「Right Now (Na Na Na)」、「嬉しい Akon」は「Sexy Bitch」や「Beautiful」、「悲しい Akon」は「Locked Up」が浮かんだのだが、これも聴く人によって、思い浮かぶ曲が異なるのではないだろうか。

まるで“失恋ソング”の新境地を切り拓いたような、VaVaの「悲しいAkon」。ぜひ聴いてみてほしい。

溢れ出る“ゲーム愛”!【PLAY ALIVE 2021:Apex Legends シーズン8】公式テーマソング「Triforce」から感じた魅力

VaVa、Yo-Sea、そしてOMSBの3人が、それぞれ“内なる力”を発揮している楽曲をリリースした。その名も「Triforce」である。

Triforce (feat. Yo-Sea & OMSB) [Arcade Mix]

Triforce (feat. Yo-Sea & OMSB) [Arcade Mix]

  • VaVa
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

トライフォース”と聞いて、『ゼルダの伝説』シリーズに登場する“あの秘宝”を思い浮かべる人もいるかもしれない。力、知恵、勇気の3つのフォースをコンプリートしたものの願いを何でも叶えるという、それである。

楽曲「Triforce」は、残念ながらそんな『ゼルダの伝説』シリーズとは関連していないものの、その歌詞には、プレイヤーの力、知恵、勇気が活きるバトルロイヤルシューティングゲーム『Apex Legends』を彷彿とさせるような遊び心のある表現があちこちに散りばめられている。

また、この曲は、eスポーツ大会『PLAY ALIVE 2021 : Apex Legends Season 08 Special Program』の公式テーマソングとして採用されていることもあり、この曲を語る上では『Apex Legends』の存在は欠かせない。

今回はそんな「Triforce」について、独断と偏見で語っていきたい。

ざっくり解説! これがバトロワ系『Apex Legends』だ!

まずは、バトロワ系『Apex Legends』についてざっくり説明していきたい。プレイしたことのない人にも理解してもらえるよう簡単に解説していくが、『Apex Legends』のファンはざっと振り返る程度に読んでみてほしい。

『Apex Legends』は、3人1組のチームとなり、それぞれのチームがチャンピオンを目指して戦うゲームとなっている。

基本的にはマップ上にランダムに落ちているアイテムや武器を拾って敵を攻撃するのだが、プレイヤーが使用するレジェンド(キャラクター)によって能力や性能が異なるといった特徴があるため、そのレジェンドの使い方もチームを勝利に導く上では大切だ。その他、移動方法や立ち回りなどの細かな動作も戦う上では重要なポイントである。

また、このゲームでは、プレイ中に味方と情報共有ができるシグナルを出すことができる。落ちているアイテムや敵の位置を知らせることができるだけでなく、自分の向かいたい場所の指示や、攻撃、防衛の意思表示も示すことが可能だ。『Apex Legends』では連携プレイが勝利に繫がるため、シグナルを出すことは欠かせない。

遊べば遊ぶほど病みつきになり、操作方法や敵の倒し方も上達する。そんな『Apex Legends』にハマる人は多く、岡崎体育関口メンディー宮脇咲良、本田翼、髙橋ひかるなど、数多くのアーティストや芸能人も魅了している。

“ゲーム愛”感じる「Triforce」

VaVa、Yo-Sea、そしてOMSBのトリオもまた、『Apex Legends』のファンである。そんな彼らの“ゲーム愛”は初っ端からあふれ出ている。

「Yo-Sea, OMSB VaVa beats」「Ever get that feeling you're not alone in a room?(これまで部屋にひとりぼっちじゃない感じがしたことある?)」といった質問から始まるのだが、ゲームで遊んでいて画面越しに人と繋がっているため、部屋にひとりきりでも寂しくないという、ゲーマーなら分かるだろう“あの感覚”について聞いているのだろう。答えはもちろん「YES」である。

そうして、その答えを待っていたかのように、VaVaらトリオは『Apex Legends』とリアルが交錯した世界へと私たちを誘っていくのである。「次元またいで 武器持つ片手 人生Auto Aimねぇから打ち負けねぇよう」「I Believe 仲間 Trio ステージじゃ銃じゃなく持つマイク俺大砲」「ひとりひとりがみんなレジェンズ」などと詞を巧みに繋いでいくのだ。

「次元またいで 武器持つ片手」とは、まさに私たちが画面越しでレジェンドを操りながら武器を手にする様子だろう。それと同時に「人生Auto Aimねぇから打ち負けねぇよう」と、攻撃があたらない人のために自動で的を定めてくれるオートエイム機能が人生には存在しないというシビアな現実も突き付ける。そんなゲームと現実が交錯した世界が見事に表現されている。

また、「I Believe 仲間 Trio」といった歌詞は、3人1組のチームとなって戦う『Apex Legends』の世界と、VaVa、Yo-Sea、OMSBの3人について信じているといった仲間の絆を掛け合わせたもの。さらに、「ひとりひとりがみんなレジェンズ」といった表現からは、『Apex Legends』のレジェンドと、偉大な人物といった意味のダブルミーニングであることが分かる。

その他、歌詞にはレジェンドのアビリティを想起させるような表現も散りばめられている。例えば、「どこまででも翔べる」といったリリックは、ゲーマーならレジェンドのひとりであるオクタンのジャンプパッドの飛距離を想像するに違いない。また、「繰り返す負け、盾を巻けばおk」といった表現は、ノックダウンされた仲間をシールドで守りながら素早く復活させることのできる、ライフラインのアビリティを連想させるような表現となっている。

コロナ禍、ダフト・パンクの解散発表……“今”に焦点を当てた「Triforce」のもうひとつの魅力

遊び心のあふれる楽曲「Triforce」だが、実はリアルな部分は“今”と密接に関連しているように感じる。

例えば「クラブにカラオケ、また遊びたいね」「人との距離が大切、ズームはしない俺」といった部分が、まさに“今”を表しているだろう。コロナ禍の今、おうちで過ごす時間が増え、クラブやカラオケなどの“密”になりやすい空間は極力避けるよう、各地でお願いされている状況だ。

さらに、“今”この瞬間にスポットを当てているように感じたのは、それだけでない。曲中にダフト・パンクの「Harder Better Faster Stronger」のフレーズ、「Work it, make it, do it, makes us」「Harder, better, faster, stronger」がそのまんま入っているのである。

Harder Better Faster Stronger

Harder Better Faster Stronger

  • provided courtesy of iTunes

ダフト・パンクが解散を発表したのは、2月22日。ちょうどその頃にレコーディングをしていたことも十分、考えられるのである。きっとVaVaらはダフト・パンクに敬意を表すために、敢えてこのフレーズを入れたのだろう。

このように、さまざまな魅力がふんだんに詰め込まれた「Triforce」。ぜひ一度、聴いてみてほしい。

Triforce feat. Yo-Sea, OMSB -Arcade Mix-

Triforce feat. Yo-Sea, OMSB -Arcade Mix-

  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

【Devil ANTHEM.「SS」】MVから見た、デビアンが“攻めの姿勢”を崩さない理由

3月3日にミニアルバム『SS』をリリースした、Devil ANTHEM.(通称:デビアン)。

その1曲目に収録されている表題曲「SS」では、どこか哀愁や切なさを漂わせるサウンドを挟みながら、疾走感のあるダンスミュージックに仕立てられた、抑揚のある楽曲となっている。

また、この曲で魅せるメンバーのダンスは、これまでさまざまな楽曲で魅せてきたパフォーマンスよりも速く、複雑なムーブが増えており、難易度の高さが感じられるだろう。音を乗りこなし、華麗なダンスで魅せるメンバーに圧倒された人も少なくないのではないだろうか。

そして、今回の歌詞から伝わってきたのも、止まらない姿勢だった。思えば、楽曲「VS」で戦いの姿勢を前面に押し出してからというもの、デビアンはずっと攻め続けている。彼女たちはファンと“また笑い合える瞬間”を信じて、戦っているように思うのだ。

そんなメンバーの想いは、「SS」のMVでも再現されているように感じた。

マスクを付けたメンバーが映し出されたり、“特効薬”が登場したりと、まるでコロナ禍の今を表現したようなシーンが描かれている同MV。

“特効薬”が登場するシーンでは「Deliver the potion to them.(彼らに特効薬を届けろ)」というミッションがメンバーに課される。そして、この指令をきっかけに、くるみちゃんが画面越しにいるファンに向かって、“特効薬”を投げつけるのである。

それは、コロナ禍で逢えなくなってしまったファンと、現場で“また笑い合える瞬間”を願っての咄嗟の行動とも捉えることができるだろう。または、MVを観ている人たち一人ひとりに彼女たちの“音楽”を届けることで、少しでも世の中に幸せを取り戻していきたいと願っての行動なのかもしれない。あるいは、その両方とも捉えることもできる。

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そして、この“特効薬”をよく見てみると「Never take it more than 3 times a day.(1日3回以上の服用は絶対におやめください)」などといった注意事項の他、「Take care of yourself.(ご自愛ください)」といったファンへのメッセージとも受け取れる言葉も記載されており、かなり凝っていることが分かる。

また、MVを観ている中で、気になったところがある。「AVATAR SELECT」の画面が表示されるシーンだ。

それぞれのメンバーの「STATUS」部分を見てみると、「UP」「SS」「VS」という、ミニアルバム『SS』に収録された“英語2文字シリーズ”の楽曲の他、「MP」というステータスも加わっていることが分かる。

そして、「UP」「SS」「VS」の各ステータスがMAXレベルにまで到達しているメンバーはいるものの、「MP」だけは誰もたどり着いていない。

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「MP」が満タンになっていない理由――。それはきっと、ファンからの“マジックパワー”が足りていないからではないだろうか。

コロナ禍で疎遠になってしまったファンからの“パワー”、コロナ禍で規制されている、まだいっぱいにはならないフロアからの“パワー”、デビアンの音楽を受け取ってくれる人たちからの“パワー”……。そうした“パワー”がまだまだ不十分に感じているのだと思う。

だからこそ、デビアンは止まらないのだろう。憂いを漂わせ、まだ望んでる夜明けは見えない世界から星空を見るため。雲の色はピンクな、虹色のフィルターかけたストーリーズを現実にするため。日々、最高を更新し続けることを目標にしている彼女たちは、諦め悪く、何度もコンティニューするのだと思った。

SS

SS

  • 発売日: 2021/03/03
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

【関連記事】

・ミニアルバム『SS』収録曲2曲目:「UP」

musicbank.hatenablog.com

・ミニアルバム『SS』収録曲5曲目:「VS」

musicbank.hatenablog.com

【DISH//「ルーザー」】“夢”とともに咲き誇れ、“華”の四重奏

2月24日にリリースされたばかりの、DISH//のニューアルバム『X』(読み:クロス)。このアルバムのスタートを切るのは、リード曲の「ルーザー」だ。

この曲は、さまざまな“試練(クロス)”を“渡って(クロス)”きたからこそ、生まれたような1曲となっている。そこには、一見、“不可能(X)”なことを“可能(○)”にするような、力強い意志すら感じられた。

今回は、そんな「ルーザー」について、独断と偏見で語っていきたい。

負け犬の遠吠えなんかじゃあない

“ルーザー”と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。

多くの人は、きっと“負け犬”をイメージするだろう。そして、“負け犬”は弱いだとか、可哀想だとか、やたらネガティブに捉えられがちだ。

しかし、DISH//が描いた“負け犬”は強かった。

どういうことか。詳しくは歌詞を見ていこう。

負けても折れない心

大敗ばかりも悪くない

されど宣戦布告はやめれない

手と手合わせて幸せだけ

願いたけりゃ

目瞑りな

最初に負けの描写が描かれているのは、この箇所である。夢や目標などの、“僕”が“信じるもの”を実現させるために、“爆弾発言”を掲げるも、負けてしまうのが1番だ。

「幸せだけ 願いたけりゃ 目瞑りな」といった歌詞は、“傷つく覚悟はあるのか? それくらい本気なのか?”とでも言っているようだ。まだ夢や目標が叶えられなくとも、諦めたくない、諦めないといった“僕”の真摯な想いがひしひしと伝わってくる。

信じるというチカラ

惨敗続きも悪くない

されど宣戦布告はやめれない

挑む我々の尊さよ

鳴り響けよ

歌になれ

続く2番では、“甘い言葉”や“甘い誘惑”に騙されてしまい、またしても負けてしまう“僕”の姿が描写されている。しかし、そんな中でも負けじと挑み続けるのである。

「挑む我々の尊さよ」といった歌詞は、自分たちを鼓舞しながら、これからも“宣戦布告”を続けていくといったチャレンジ精神にあふれているように感じられた。

凛としたその姿には、どこか惹かれるものがある

大敗ばかりも悪くない

それと惨敗続きも悪くない

されど散々情けをかけられる

違うな

欲しいのはそれじゃない

 

宣戦布告を致します。

僕と戦う人居ますか?

それじゃ、正しさを糺しに行こう

何度倒れようとも

最後は、このように描かれている。

負けても悪くないのは、“本気”だからこそだろう。

“負け”は決して悪いことなんかじゃあない。逃げずに立ち向かった勇気は格好いい。それに、人が何かに本気になっている姿は美しいとも思う。さらには、自分の全力を出し尽くしたことは素晴らしいことだとも思っている。

しかし、世間的に負けることは、“可哀想なこと”として捉えられがちだ。「ルーザー」では、そんな世の中を見返したい、とでも言っているように聞こえる。

だからこそ、彼らは“勝つ”まで諦めないのだろう。

X (通常盤) (特典なし)

X (通常盤) (特典なし)

  • アーティスト:DISH//
  • 発売日: 2021/02/24
  • メディア: CD
 

感想

そしてそれは、アルバム『X』からも感じることができる。

負けん気が強い「ルーザー」から始まり、続く「QQ」や「ニューノーマル」で葛藤する心を描いたかと思いきや、「Seagull」「rock'n'roller」「NOT FLUNKY」などのナンバーと「君の家しか知らない街で」「未完成なドラマ」などの曲との温度差で山あり谷ありの人生を描き、最後の「バースデー」では夢に向かって再び前進していくような姿が描かれているのだ。

そんな中でも「ルーザー」に心を動かされたのは、DISH//にもいろいろあったからだと思っている。DISH//については、詳しくない。それでも、ボーカル・北村匠海が歌う言葉一つひとつに、重みや説得力が感じられたのだ。筆者もなかなか波乱万丈な人生を歩んでいるからこそ、そこには分かち合えるものがあった。

夢は、叶えられるものだと思っている。そこに強い意志がある限り、その夢は決して“うたかたの夢”で終わらない。“勇気を出して踏み出した小さな一歩が 大いなる旅立ちの始まり”なのだ。実際、私も叶えられた夢がある。

そこには、多くの壁が立ち塞がることもある。それでも、DISH//はたくさん乗り越えてきたのだろう。

今いる場所から夢までの距離は、あとどれくらいあるのだろうか。

もしかしたらそれは、想像しているものよりも意外と、近いのかもしれない。